2025年3月、令和7年度の国家予算が成立しました。
当初予算の総額は115兆円超と、前年(令和6年度)を上回る規模となり、3年連続で110兆円台を突破しています。一方で、財源の約4分の1を依然として国債に頼る構造は続いており、財政健全化への道のりは引き続き大きな課題となっています。
令和7年度の予算は、令和6年度の経済対策・補正予算と一体となり、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を本格的に推進するものです。
骨太の方針2024等で示された「歳出の目安」に基づき、経済や物価の動向に十分配慮しながら、これまでの歳出改革の取り組みを継続。そのうえで、防災・地方創生・子育て支援・GX・科学技術・防衛といった重要政策分野に予算を重点的に配分し、経済成長と財政健全化の両立を図る構成となっています。
「令和7年度予算のポイント(財務省)」の歳出分野で、政府が特に特徴として挙げている項目のうち、入札案件に関連しそうな分野をピックアップしました。
入札リサーチセンターが特に注目した分野は、以下の4つです。
① 防災・公共事業
② 地方創生
③ GX・半導体
④ 教育・子育て
これらの分野に関連するキーワードに基づいて公示されている入札案件を、入札情報速報サービス「NJSS」に登録されている案件情報から抽出し、入札リサーチセンターが調査・分析しました。
本レポートでは、その結果を報告するとともに、今年度の各カテゴリの入札動向を解説いたします。
注目分野の入札傾向
調査概要 【対象機関】 【集計期間】 【調査内容】 |
① 防災・公共事業
<予算の概要と入札傾向>
令和7年度は、能登半島地震を教訓に、災害に強い国づくりを目指した防災・減災投資が加速。公共事業との連動によって、インフラ整備や防災設備導入に関する入札案件が増加することが見込まれます。
✅ 公共事業関係費は6兆858億円(R6当初比+30億円)
ハード整備のみならず、災害リスクエリアにおける規制・誘導手法の活用などソフト対策との一体的取組で国土強靱化を推進。 国土強靱化基本計画に基づき、盛土区間の崩落防止(のり面対策)や上下水道の急所施設耐震化などを個別補助化し、重点的に支援。
✅ 防災体制の抜本的強化
内閣府防災担当の予算は前年度から倍増し、73億円→146億円、定員は110人→220人に。災害時に活用可能なキッチンカー・トレーラーハウス等の登録制度の創設など、災害対応力の強化、事前防災の徹底強化。
✅ 気象研究所の予算も倍増
将来的なダムの事前放流量の増量にもつながるよう、線状降水帯・台風等の予測精度向上に資する研究予算の倍増(R6比+8億円)など、気象庁の機能強化を推進。
【 防災・公共事業 】カテゴリ別 公示案件数
防災・公共事業分野では、「設計・測量」に関連する案件が最も多く、地質調査や災害リスク評価など、事前準備への注力がうかがえます。「インフラ整備」も多く、上下水道や橋梁の整備が進められています。また、防災設備や監視体制の構築も進行しており、災害対応の高度化や老朽化対策が引き続き重要視されています。
【 防災・公共事業 】カテゴリ別 入札形式割合
防災・公共事業分野における入札形式の傾向を見ると、「設計・測量」では指名競争入札が57.7%と最も多く、発注者が信頼できる実績や技術力を持つ事業者を選びやすい形式が採用されています。業務内容が比較的定型化されており、評価基準も明確である点がその背景にあると考えられます。
一方、「インフラ整備」では一般競争入札が45.6%と最多で、広く事業者を募り価格競争を促す傾向が見られます。対象案件が多岐にわたり、一定の標準化が進んでいることから、公開性と競争性を重視した調達が行われているといえます。
さらに、「防災設備」や「DX・監視体制」でも一般競争入札がそれぞれ40.6%、44.6%を占めており、これらの分野でも広く事業者を募集しつつ、技術提案や柔軟な対応力を評価する調達が重視されている傾向があります。
【 防災・公共事業 】入札案件の具体例
案件名 | 発注機関 |
高浜橋耐震補強及び補修工事 | 大阪府 / 吹田市役所 |
稲永スポーツセンター非常用発電機取替工事 | 愛知県 / 名古屋市役所 |
東金アリーナ防災システム改修工事 | 千葉県 / 東金市役所 |
高田海岸地質調査業務委託 | 福岡県 / 福岡県庁 |
② 地方創生
<予算の概要と入札傾向>
地域独自の取り組みを後押しするため、自由度の高い新交付金が創設され、地方自治体による新たな事業創出が加速。幅広い分野で民間企業が参加可能な入札案件が想定されます。
✅ 地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)を2,000億円で創設
前年から倍増された本交付金は、ソフト事業・拠点整備事業・インフラ整備事業の3本柱で支援を展開。
【ソフト事業の取組例】
・スポーツを活用した地域活性化
・ドローンを活用した配送モデル構築
【拠点整備事業の取組例】
・最先端技術教育の拠点整備
・道の駅に隣接した観光拠点整備
【インフラ整備事業の取組例】
・まちなかの賑わい空間の整備
・工場周辺のアクセス道路整備
✅ ソフト・ハード両面の取り組みを後押し
ブロックチェーンや生成AIの導入、観光施設・地域産業拠点の整備、工場周辺道路やドローン配送モデル構築など、先端技術と地域課題の解決を組み合わせた取り組みが対象に。
【 地域創生 】カテゴリ別 公示案件数
地方創生分野では、「地域インフラ整備」が最多で、道路や上下水道など生活基盤の整備が重点化されています。「教育・人材拠点」も多く、職業訓練やリスキリングによる人材育成が進行中です。観光施設の整備や地域DXの導入も進められ、地域の魅力向上と持続可能なまちづくりが図られています。
【 地域創生 】カテゴリ別 入札形式割合
地方創生分野における入札形式の傾向を見ると、「地域インフラ整備」では一般競争入札(47.1%)と指名競争入札(42.1%)が大半を占めており、標準化された業務を対象に公開性と実績重視のバランスを取った調達が行われています。「教育・人材拠点」では一般競争入札(32.0%)に加え、見積(28.8%)や企画競争(18.5%)の割合も高く、委託型業務や人材支援といった柔軟な対応が求められる案件で多様な手法が用いられています。「観光資源整備」では入札形式が分散し、地域事情や施設特性に応じて柔軟に方式が選ばれています。「技術導入・DX」では企画競争(26.0%)と一般競争入札(31.6%)が中心で、新技術や地域DX推進において提案内容を重視する姿勢がうかがえます。
【 地域創生 】入札案件の具体例
案件名 | 発注機関 |
一般国道168号 小平尾バイパス道路改良工事 | 奈良県 / 奈良県庁 |
道の駅うずしおデジタルサイネージ設置及びコンテンツ構築業務 | 兵庫県 / 南あわじ市役所 |
令和6年度スマートシティの国内外発信業務委託 | 東京都 / 東京都庁 |
DX人材育成研修業務委託 | 山形県 / 山形市役所 |
③ GX・半導体
<予算の概要と入札傾向>
日本の成長産業に位置づけられるGX(グリーントランスフォーメーション)および半導体産業の強化に向けた予算が拡充され、設備調達・施設整備・研究支援などの案件が見込まれます。
✅ GX経済移行債を活用し、GX投資を官民連携で推進
エネルギー転換や再エネ、省エネ分野への投資が加速。
✅ AI・半導体産業基盤の強化へ1.9兆円規模の支援
経済対策で決定した「AI・半導体産業基盤強化フレーム」に基づき、次世代半導体量産化支援(1,000億円)や先端半導体設計拠点整備(318億円)などを展開。。R6補正等と合わせると1.9兆円規模の支援を実施。
【 GX・半導体 】カテゴリ別 公示案件数
GX・半導体分野では、「保守・運用支援」が多く、クラウドやシステム監視などの技術基盤の維持に注力されています。次いで「ICT基盤整備」も多く、通信環境やデータセンターの整備が進行中です。再エネやEV対応などGX関連設備、半導体・AIチップの製造拠点整備も進められており、インフラと先端技術の両面で強化が図られています。
【 GX・半導体 】カテゴリ別 入札形式割合
GX・半導体分野では、一般競争入札の比率が高いのが特徴です。「エネルギー設備」では58.0%、「ICT基盤整備」では51.9%が一般競争入札となっており、標準化された設備案件において広く事業者を募る傾向が見られます。「保守・運用支援」では一般競争入札46.9%に加え、随意契約(26.6%)の活用も目立ち、スピード感や柔軟性を重視した調達が行われています。「研究・製造拠点」では一般競争入札41.8%に加え、企画競争(16.3%)や随意契約(20.9%)の割合も高く、技術評価や提案力が重視される傾向です。
全体として、基盤設備には公開性の高い方式、先端技術領域には柔軟な調達手法が使い分けられていることがうかがえます。
【 GX・半導体 】入札案件の具体例
案件名 | 発注機関 |
北海道におけるまちづくりGX検討業務 | 北海道 / 国土交通省(MLIT) 北海道開発局 |
ICT支援等に関する業務委託 | 愛知県 / 名古屋市役所 |
再生エネルギー事業に関する事務及び調査業務 | 群馬県 / 群馬大学 |
貯留施設監視システム監視局設置工事 | 埼玉県 / さいたま市役所 |
④ 教育・子育て
<予算の概要と入札傾向>
教育と子育てをめぐる制度改革が令和7年度から本格的に実施され、関連施設の改修や新たな支援制度運用に関する入札案件の発生が見込まれます。とくに「こども未来戦略」に基づく子育て支援加速化プラン(3.6兆円規模)が本格始動し、R7予算で8割超の執行が見込まれている点が注目されます。
✅ 保育・育児支援策が本格実施へ
以下の制度改革が順次開始され、制度運用や施設・設備整備の入札が想定されます。
- 「こども誰でも通園制度」の制度化
- 1歳児保育士配置の改善(10.7%水準の加算措置)
- 育休給付の手取り10割化(現行8割→10割へ)
- 時短勤務時の新給付制度の創設
- 妊婦向け支援給付(5万円給付)
- 高等教育の負担軽減の抜本強化(多子世帯の学生の授業料等を無償化)
✅ 教職調整額の段階的引き上げ(4%→10%)と業務改革の推進
令和7年度は5%へ引上げ予定。小学校の教科担任制の拡大や、外部人材(ICT支援員・補助教員など)の導入、校務DXの推進が進展。これにより、ICT環境整備や施設改修、外部委託業務などの需要が高まる見込みです。
【 教育・子育て 】カテゴリ別 公示案件数
教育・子育て分野では、「学校施設整備」が多くの案件が出ており、空調や教室の改修、ICT化など学習環境の改善が進められています。また、放課後支援やICT支援員などの「外部人材支援」も多く、教育現場を支える体制が強化されています。子どもと家庭への支援も含め、幅広い施策が展開されています。全体として、教育環境のハード・ソフト両面での整備と、家庭や地域に寄り添う支援がバランスよく進められていることが分かります。
【 教育・子育て 】カテゴリ別 入札形式割合
教育・子育て分野では、カテゴリごとに入札形式の傾向が異なります。
「学校施設整備」では、一般競争入札が45.9%と最も多く、次いで指名競争入札が29.5%を占めています。空調や照明、体育館などの改修といった標準的な工事では、価格競争と実績を重視した調達が行われていることが分かります。一方、「外部人材支援」では企画競争入札が33.5%、随意契約が27.6%と高く、人材派遣や業務委託など、柔軟性が求められる案件では迅速で多様な選定手法が採用されています。
また、「児童福祉・支援制度」や「保育・育児」においても、随意契約の割合がそれぞれ30.9%、31.5%と高く、個別性の高い支援業務に適した柔軟な契約形態が活用されています。「保育・育児」では一般競争入札も34.7%と高く、一定の公開性と競争性も確保されています。
これらの傾向から、施設整備では透明性を重視した形式、人材・福祉系業務では柔軟な調達手法が分野特性に応じて使い分けられていることが分かります。
【 教育・子育て 】入札案件の具体例
案件名 | 発注機関 |
市立中央林間小学校教室改修工事 | 神奈川県 / 大和市役所 |
こども誰でも通園制度総合支援システム機能改修に係る調達支援等業務一式 | 東京都 / 内閣府(CAO) こども家庭庁 |
ヤングケアラー支援関係機関における家庭への支援等に関する調査等業務委託 | 東京都 / 東京都庁 |
小中高生放課後支援活動業務委託 | 島根県 / 益田市役所 |
まとめ
令和7年度の国家予算では、防災・公共事業、地方創生、GX・半導体、教育・子育てといった分野に予算配分がされており、入札案件の増加が見込まれます。
防災・公共事業ではインフラ整備や設計・測量が中心となり、地方創生では地域インフラ、人材、観光、DXといった幅広いテーマが含まれています。GX・半導体分野では、再エネやICT、製造拠点への投資が加速しており、教育・子育てでは学校施設や保育支援などが注目されています。
国や自治体の予算内容からどのような入札案件が出てくるかを先回りして把握することは、非常に有効なアプローチです。政策の重点や予算の使途を読み解くことで、どの分野でどのような案件が、いつごろ発注されるかを予測しやすくなります。発注機関の予算書や事業計画、公募情報を日頃からチェックし、スケジュール感を持って準備を進めることで、提案の精度やスピードに差がつき、入札での競争力を高めることにつながります。
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