公共調達の入口として注目されているのが、オープンカウンター方式です。少額の案件を効率的に処理するために導入されており、中小企業や新規参入企業にとっても挑戦しやすい仕組みです。
ただし、公告から締切までの期間が短いケースが多く、準備不足のままでは参加自体が難しくなることもあります。
本記事では、オープンカウンターの概要やメリット・デメリット、参加する流れを解説します。これから官公庁取引に挑戦したい方は、参考にしてください。
入札アカデミー(運営:株式会社うるる)では、入札案件への参加数を増やしていきたい企業様向けの無料相談を承っております。
のべ3,000社以上のお客様に相談いただき、好評をいただいております。入札情報サービスNJSSを16年以上運営してきた経験から、入札案件への参加にあたってのアドバイスが可能です。
ご相談は無料となりますので、ぜひお問い合わせください。
オープンカウンターとは|少額契約を簡易に公募する制度
オープンカウンター方式とは、国や自治体が少額の物品購入や、軽微な役務を調達する際に活用する公募型の見積合わせ制度です。法律上は随意契約に分類されますが、従来のように特定の業者を指名するのではなく、公告によって幅広い事業者から見積もりを募る点が大きな特徴です。
この方式は、会計法第29条の3第5項に定められた少額随意契約の枠組みを根拠として運用されています。国土交通省の実施要領では、オープンカウンターについて「契約担当官が見積依頼の相手方を選ばず、参加を希望する事業者から提出された見積書により見積合わせを行い、契約相手を決定する方式」と定義しています。つまり、随意契約の一種でありながら、公募によって透明性と公平性を高めた仕組みです。
対象となる予定価格は、下記のように自治体ごとに異なります。
- 愛媛県:物品購入が10万円超〜300万円以下
- 浜松市:30万円超〜300万円以下(印刷物は400万円以下)の物品
参考:
愛媛県|オープンカウンター(公開見積合わせ)の実施について(出納局会計課執行分)
浜松市|オープンカウンター(物品)情報
また、多くの自治体では「入札参加資格名簿への登録」や「市内・県内に本社や営業所を有すること」といった地域要件が設けられる場合があります。新規参入の機会となる一方、条件を満たさなければ参加できない点には注意が必要です。
また、オープンカウンター制度の導入目的は、従来の随意契約に比べて公平性・透明性・競争性を確保し、発注先の偏りを防ぐことにあります。背景として、下記2点が挙げられます。
| 観点 | 内容 |
| 法的根拠 | 国の会計法や地方自治法施行令で定められた「少額随意契約」の枠組みにもとづき、入札を省略して迅速な調達を可能にする |
| 制度の狙い | 発注の偏りを防ぎつつ、公平性・透明性・経済性(より安価な調達)を確保する |
効率性と公平性を両立させる工夫こそが、オープンカウンター制度の本質といえるでしょう。
オープンカウンターと他の契約方式との違い
ここでは、オープンカウンターが少額随意契約と一般競争入札とどのように異なるのかを具体的に解説します。この違いを正確に理解することが、自社がどの案件を狙うべきか判断する第一歩となります。
少額随意契約との違い
オープンカウンターは少額随意契約の一種ですが、従来型の少額随意契約と比べると大きな違いがあります。とくに見積依頼の範囲がポイントです。従来型は数社を指名するのみでしたが、オープンカウンターは公募によって誰でも参加できる仕組みとなっています。
両者の違いを、下表にまとめました。
| 項目 | 従来型の少額随意契約 | オープンカウンター |
| 競争性 | 担当者が選んだ限られた数社のみで競争 | 公告を通じ、参加資格を満たす事業者なら広く応募できる |
| 透明性 | 選定過程が非公開のため、不透明になりやすい | 募集要項を公開するため、誰が応募したかが明確で透明性が高い |
| 参加対象 | 過去の取引実績がある業者に限定されやすい | 実績がなくても条件を満たせば参加できる |
| 参加条件 | 実績や担当者との関係性が重視されやすい | 条件は公告で明示され、コネや関係性に左右されない |
| 公告の有無 | 公告は不要で、依頼先は内部で決定 | 自治体のWebサイトなどで公告を行い、広く公募 |
参考
財務省|少額随意契約の基準額の見直しについて
国土交通省|オープンカウンター方式について
従来型の随意契約にありがちな不透明さや閉鎖性を改善し、開かれた制度としたのがオープンカウンターです。
以下の記事では、少額随契の基準額引き上げについて詳しく解説していますので、理解を深めたい方はあわせてご参考ください。
関連記事
少額随意契約の基準額引き上げ徹底解説|営業担当者が知るべき影響と対策
一般競争入札との違い
一般競争入札は、高額案件を中心に厳格なルールで運用されます。一方、オープンカウンターは少額案件を効率的に処理するため、手続きが大幅に簡略化されています。
両者の違いを整理すると、下表のとおりです。
| 項目 | 一般競争入札 | オープンカウンター |
| 競争性 | 条件を満たせば誰でも参加可能 | 公告を通じて参加資格を満たす事業者を募集(主に少額案件) |
| 透明性 | 公告による情報公開で透明性が高い | 公告で広く募集するため透明性が高い |
| 参加対象 | 入札資格を有する全企業が対象 | 実績がなくても条件を満たせば参加できる |
| 参加条件 | 公平な評価基準にもとづく参加資格審査 | 提出書類は見積書が中心で、条件も比較的簡易 |
| 公告の有無 | 原則、公告によって広く募集される | 自治体サイト等で公告されるが、期間は数日程度が多い |
参考
e-Gov 法令検索|予算決算及び会計令
国土交通省|オープンカウンター方式について
このように、オープンカウンターは一般競争入札の簡易版と位置づけられており、スピード感と参入のしやすさが特徴です。
自治体によっては、80万円以下はオープンカウンター、超えると簡易一般競争入札といったように、金額で使い分けるケースもあります。はじめて官公庁取引に挑戦する企業は、まずオープンカウンターで経験を積むのが現実的です。
自治体入札の流れを詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事
【初心者向け】自治体入札の流れや種類を解説!入札のメリットとは?
オープンカウンターの4つの特徴
オープンカウンター制度には、下記4つの特徴があります。
- 予定価格が低い
- 見積提出の期限が短い
- 対象業務が限定されている
- 地域要件により地元企業が参加しやすい場合がある
これらを理解しておくことで、自社が参加しやすい案件を見極め、効率よく戦略を立てられます。
予定価格が低い
オープンカウンターで公募される案件は、数十万円から数百万円程度の少額案件が中心です。大規模な入札に比べてリスクが小さく、中小企業でも挑戦しやすい点が魅力です。この仕組みは少額随意契約の枠組みで運用されており、発注機関ごとに上限額が定められています。
市区町村では、さらに低額に設定されるケースもありますので、まさに中小企業の規模にフィットするのが特徴です。大きな投資をせずに公共事業の実績を積み上げられるため、成長への足がかりとして活用する価値が高い制度といえます。
見積提出の期限が短い
オープンカウンターは、公告から締切までの期間が短いのも特徴です。多くの場合、数日から1週間程度で見積書を提出しなければなりません。迅速な調達を目的としているため、わずかな遅れでも無効とされることがあります。
短い期限は準備不足の企業には不利ですが、意思決定の早い中小企業にとっては有利に働く場合もあります。このスピード勝負で勝ち抜くには、日々の案件チェックと迅速な見積書作成フローを標準化しておくことが不可欠です。
対象業務が限定されている
オープンカウンターで扱われるのは、特殊な技術や資格を必要としない標準的な物品購入や軽微なサービスが中心です。多くの事業者が対応できる案件が選ばれやすく、まず自社の業務が対象に含まれるかを確認することが参入の第一歩となります。
典型的な対象業務は、下記のとおりです。
- 物品購入:事務用品・PCや周辺機器・什器・防災備品など
- 印刷:チラシ・報告書・パンフレットの印刷や製本
- 役務:小規模な清掃・簡易な保守点検・イベント備品レンタルなど
自治体によっては、印刷や保守は対象外と明記している場合もあります。必ず対象範囲を確認し、自社の強みを活かせる領域かどうかを見極めましょう。
地域要件により地元企業が参加しやすい場合がある
多くの自治体では、「市内や県内に本社や営業所があること」といった地域要件を設けています。これは税金を地元で循環させ、地域経済を活性化するためであり、中小企業にとって大きな追い風となるでしょう。
これらの要件は、全国展開する大手企業には参入障壁となり、地元企業を守る仕組みとして機能します。自治体ビジネスに挑戦する際は、まず自社の所在地にもとづいた市区町村や都道府県の案件から狙うのが堅実な戦略です。
オープンカウンターに参加する流れ
オープンカウンターで安定して案件を獲得するには、案件発見から提出、結果確認までの流れを仕組み化することが重要です。短納期が多い制度だからこそ、場当たり的に動くとすぐに機会を逃してしまいます。
ここでは、参加の流れを4つのステップに分けて解説します。
- STEP1.公告情報を確認する
- STEP2.仕様書や条件をチェックする
- STEP3.見積書と必要書類を提出する
- STEP4.契約候補者の決定と結果の通知を受ける
各ステップのポイントをチェックしていきましょう。
STEP1.公告情報を確認する
オープンカウンターに参加する第一歩は、公告情報をいち早く把握することです。公告から締切までの期間は数日程度しかないケースも多く、情報収集が遅れると参入のチャンスを逃してしまいます。
具体的な方法としては、下記のような取り組みが効果的です。
- 定期巡回:重点を置く自治体や機関をリスト化し、公式サイトを毎日決まった時間に確認する
- 自動通知:GoogleアラートやRSSを活用し、新着案件を自動で検知する
- 社内共有:担当者が見つけた案件を即時共有する
- 専門サービスの活用:全国の案件を効率的に検索・把握できる
中でも、「NJSS(入札情報速報サービス)」は有力な選択肢です。全国の入札情報を一括で検索できるのが特徴で、年間180万件以上の案件情報と、累計2,500万件以上の落札データを保有しています。
自社で情報収集に多くのリソースを割かなくても、効率的に案件を見つけられる点がメリットです。また、過去の落札金額や競合の動向を把握し、次の戦略に活かすことも可能です。
スピード勝負のオープンカウンターにおいて、NJSSの活用は他社より一歩早く動ける大きな強みとなります。無料お試しも可能なため、オープンカウンターに参加する予定の方や情報収集の効率化を目指す方は、ぜひ利用してみてください。
STEP2.仕様書や条件をチェックする
案件を見つけたら、まず公告や仕様書を丁寧に読み込みましょう。とくに確認すべきは、下記の4点です。
- 参加資格:入札参加資格名簿への登録状況や、必要な資格があるか
- 地域要件:本店や事業所の所在地に制限が設けられていないか
- 仕様内容:性能や規格に問題はないか、同等品での提出が可能か
- 期限・手続き:提出期限や事前確認書の締切が設定されていないか
これらを見落とすと、せっかく作成した見積書が無効になるリスクがあります。確認作業は担当者任せにせず、誰が実施しても同じ結果になるようにチェックリストを用意し、標準化しておくと安心です。
STEP3.見積書と必要書類を提出する
公告条件を確認したら、発注者が指定する様式にしたがって見積書と必要書類を作成し、期限内に提出します。オープンカウンターでは、誤字や押印漏れ、提出の遅延など、些細なミスでも即失注につながるため注意が必要です。
提出時にとくに気をつけたいのは、下記のポイントです。
| 項目 | 注意点 |
| 見積書作成 | ・案件番号・件名・金額を正確に記入する ・税抜・税込の指定を必ず確認する |
| 添付書類 | ・同等品を提案する場合は、カタログや比較資料を必ず添付する |
| 提出方法 | ・持参・郵送・メール・電子入札など自治体ごとの方式を厳守する ・締切直前の送信は避ける |
事前に見積書や質問書などをテンプレート化しておけば、短納期の案件でも慌てず対応でき、受注の確率を高められます。
STEP4.契約候補者の決定と結果の通知を受ける
見積を提出した後は、発注機関のWebサイトに公表される入札結果を必ず確認しましょう。契約候補者は、予定価格内でもっとも低い価格を提示した企業です。同額の場合は、抽選(くじ引き)で決定されます。
結果は、受注できた場合はもちろん、失注した場合も今後の戦略を考えるための重要な情報です。入札結果を確認・活用する際のポイントは、下記のとおりです。
| ポイント | 詳細 |
| 結果を確認する | 公表予定日を事前に把握し、確実にチェックする |
| 契約手続きを進める | 候補者に選ばれた場合は、契約書や請書など必要な書類を速やかに提出する |
| データを分析する | 落札価格との差・応募社数・常連競合の有無を整理する |
| 次回に活かす | 収集した情報をもとに、次の価格設定や戦略を練る |
このように、結果を単なる合否ではなく、市場データとして蓄積・分析しましょう。組織全体の応札力を高め、長期的に勝ち続ける体制を作れます。
【行政側】オープンカウンターのメリット・デメリット
ここでは、発注者である行政の立場から見たオープンカウンターのメリットとデメリットを整理します。行政の背景を理解することで、事業者は「どう動けば評価されるか」を意識しやすくなります。
| メリット | デメリット |
| ・公平性・透明性を確保しやすい ・見積依頼・業者選定の手間を削減できる ・地元中小企業の支援・育成につながる |
・調達不調のリスクがある ・案件周知のための広報手続きが必要になる ・新規業者の履行能力・信頼性が不明瞭 |
メリット
行政目線でのオープンカウンターのメリットは、下記3つです。
- 公平性・透明性を確保しやすい
- 見積依頼・業者選定の手間を削減できる
- 地元中小企業の支援・育成につながる
詳しく解説します。
公平性・透明性を確保しやすい
オープンカウンターは公募制であり、原則として最低価格を提示した事業者が選ばれる仕組みです。行政にとっては「公開された競争の結果であり、もっとも経済合理性のある提案だった」と説明でき、議会や住民から問われても説明責任を果たしやすくなります。
従来の随意契約では、同一業者への発注が続けば、癒着や不正を疑われるリスクがありました。しかし、オープンカウンターは、透明性を担保できる有効な手段です。
見積依頼・業者選定の手間を削減できる
従来の随意契約では、担当者が候補業者を探して仕様を伝え、見積を依頼・催促するといった、多くの業務負担がありました。しかし、オープンカウンターでは、公告を出すだけで事業者が自発的に見積書を提出するため、行政は公告作成と結果確認に集中できます。
業務の効率化が進めば、本来のコア業務にリソースを振り分けられるようになります。事業者側は、正確で簡潔な書類提出を徹底することで、行政からの信頼を得やすくなるでしょう。
地元中小企業の支援・育成につながる
募集要件に地域条件を設けることで、これまで官公庁と接点のなかった地元企業にも受注のチャンスが生まれます。小規模な案件でも受注実績を積み重ねることで企業の信用度が高まり、次の案件につながる可能性があります。
行政にとっては地域経済の活性化につながり、事業者にとっては成長の足がかりとなる、双方にメリットのある仕組みといえるでしょう。
デメリット
オープンカウンターは公平性や透明性の確保に優れる一方で、行政側にとってはいくつかの課題も抱えています。具体的なデメリットは、下記のとおりです。
- 調達不調のリスクがある
- 案件周知のための広報手続きが必要になる
- 新規業者の履行能力・信頼性が不明瞭
詳しく見ていきましょう。
調達不調のリスクがある
オープンカウンターでは、公告を行っても応募が集まらず、調達が成立しない「不調」に終わるケースがあります。
原因として挙げられるのは、下記のとおりです。
- 仕様が特殊すぎる
- 予定価格が市場価格より低すぎる
- 公告自体が十分に周知されていない
この場合、行政は再度指名見積などで調達をやりなおす必要があり、余分な時間や手間が発生します。
案件周知のための広報手続きが必要になる
オープンカウンターは公募制である以上、特定の事業者しか知らない状態は認められません。そのため行政には、公告を適切に周知する義務があります。
具体的には、仕様書を電子化してウェブシステムに登録したり、公開期間を管理したりといった事務作業が欠かせません。従来の随意契約では電話やメールで依頼できた案件も、オープンカウンターでは公告準備に追加の業務負担が発生します。
案件数が増えるほど、担当者の業務量は膨らみます。しかし、事業者側が定期的にサイトをチェックして自ら情報を取りに行く姿勢を持てば、行政の周知コストは軽減されるでしょう。結果として双方にとって効率的な関係を築けます。
新規業者の履行能力・信頼性が不明瞭
オープンカウンターは、原則として最低価格で業者を決定するため、新規参入企業の履行能力や信頼性が不透明になるリスクがあります。財務状況や過去の実績を詳しく審査する仕組みがありませんので、価格だけで選んだ結果「安かろう悪かろう」に陥ることも少なくありません。
このような懸念があるからこそ、事業者は初回取引において納期厳守や仕様通りの品質確保など、当たり前の対応を徹底することが信頼を得る最短ルートとなります。
【民間企業側】オープンカウンターのメリット・デメリット
オープンカウンターは、行政側の効率化や公平性だけでなく、民間企業にとっても新たな販路拡大や取引機会の獲得につながる制度です。中小企業や新規参入を目指す企業にとっては、従来の入札制度にはなかったチャンスが広がっています。
ここでは、民間企業側のメリットとデメリットを整理して解説します。
| メリット | デメリット |
| ・市場の透明化により販路拡大が可能になる ・指名不要で新規参入しやすい ・地域密着企業にとってチャンスが広がる |
・短納期対応が求められ、見逃しやすい ・強い価格競争にさらされやすい ・地域制限や登録要件で参加しにくい場合がある |
メリット
民間企業側のメリットは、下記のとおりです。
- 市場の透明化により販路拡大が可能になる
- 指名不要で新規参入しやすい
- 地域密着企業にとってチャンスが広がる
詳しく解説します。
市場の透明化により販路拡大が可能になる
オープンカウンターでは、案件情報が自治体や官公庁のWebサイトで公開されます。そのため、「誰が・何を・いつまでに必要としているか」を明確に把握できるのがメリットです。
従来のように担当者とのコネがなければ情報を得られない状況とは異なり、誰でも案件を確認し、自社の製品やサービスを提案できるのが特徴です。実際に公開される案件には、下記のようなものがあります。
- パソコンや周辺機器
- デスクや椅子などの什器
- チラシやパンフレットなどの印刷物
このように、中小企業でも扱いやすい案件が数多く公開されています。官公庁や自治体は景気に左右されにくい安定需要が見込めるため、新たな販路として事業の柱になり得るでしょう。
指名不要で新規参入しやすい
官公庁との取引実績や担当者との関係がなくても、公平な条件で競争に参加できるのが大きな魅力です。選定基準は、価格や提案内容といった客観的な条件であり、実力で勝負できる市場といえます。
オープンカウンターは新規参入企業が最初の実績を作り、信頼を積み重ねていく際にぜひ活用したい制度です。
地域密着企業にとってチャンスが広がる
地域要件そのものは制度の特徴として説明されていますが、事業者にとって重要なのは、それをどう活かすかという点です。
自社が拠点を構える自治体での案件は、ホームグラウンドともいえる市場です。慣れ親しんだ地域で案件を獲得すれば、スムーズに実績を積み上げられ、次の応募時に信頼の裏付けとして働きます。さらに、行政担当者との関係性も築きやすく、継続的な取引につながる可能性が高まります。
まずは地元案件で成果を確実に出し、その経験をもとに他地域や規模の大きな案件に挑戦していきましょう。地域密着企業にとって、現実的かつ効果的なステップアップ戦略です。
デメリット
オープンカウンターは透明性や参入機会の拡大といった利点がある一方で、参加する企業にとっては注意すべき課題も存在します。代表的なデメリットは、下記のとおりです。
- 短納期対応が求められ、見逃しやすい
- 強い価格競争にさらされやすい
- 地域制限や登録要件で参加しにくい場合がある
それぞれ見ていきましょう。
短納期対応が求められ、見逃しやすい
オープンカウンターは、公告から締切までの期間が数日と短いため、体制が整っていなければ参加自体が難しくなります。担当者が他業務を兼任していると案件を見逃し、気づいたときには間に合わないことも少なくありません。
たとえば、火曜に公告された案件に水曜夕方に気づいても、仕様確認・上司の承認に時間を取られ、木曜正午の締切に間に合わないといったケースです。こうした失敗を防ぐには、案件チェックや見積作成のフローを標準化し、テンプレートを事前に整備しておくことが重要です。
準備ができていれば、短納期が競合を減らす有利な条件になることもあるでしょう。
強い価格競争にさらされやすい
オープンカウンターは誰でも参加できる仕組みのため、価格競争が激しくなりやすく、利益率が圧迫されるのも大きな課題です。予定価格の範囲内で最低価格を提示した企業が選ばれるため、とくに物品販売では1円単位の競り合いになることもあります。
安易な低価格は利益を失うだけでなく、品質低下による信頼喪失にもつながりかねません。正確な原価計算で最低利益ラインを設定することや、最低制限価格が設けられている案件を選ぶことが有効な対策です。
地域制限や登録要件で参加しにくい場合がある
自治体によっては、地域要件や入札参加資格者名簿登録などの条件が設けられています。これを満たさなければ参加できないため、注意が必要です。
たとえば東京本社の企業が神奈川県の案件を見つけても、本店が県内にない場合は参加資格を得られません。また、名簿登録は申請から完了まで数週間〜数ヶ月かかることがあり、案件を見つけてから慌てても間に合わないのが実情です。
行政側が信頼性や地域貢献を重視しているからこそ、設けられている条件です。企業は狙う自治体を明確に定め、計画的に資格取得や登録を進めておく必要があります。
オープンカウンターで失注しないためのポイント
オープンカウンターは、価格や製品の優劣だけでなく、わずかな手続きミスでも失注につながる厳しい制度です。競争力があっても基本ルールを守れなければ、結果は無効となります。ここでは、注意すべき4つのポイントを紹介します。
- 提出締切の到達確認を忘れずに行う
- 同等品を提案する場合は事前に相談する
- 最低制限価格の存在に注意する
- 見積書の記載・押印・ファイル形式を正しく整える
詳しく見ていきましょう。
提出締切の到達確認を忘れずに行う
見積書は、送信した時点ではなく、「締切時刻までに相手方に到達したか」で有効性が判断されるのが基本です。メールやFAXは受信時刻が基準となり、数秒遅れただけでも無効扱いになります。
たとえば、締切直前に送信したものの添付ファイルが重く、相手方のサーバー到着が遅れて失注となる可能性があります。これを防ぐには、社内締切を大幅に前倒し、送信後に電話で到達確認を行うなど、ルールを徹底することが重要です。
「届いたことを確認するまでが提出業務」といった意識を統一しましょう。
同等品を提案する場合は事前に相談する
仕様書で指定された品の代わりに同等品を提案する場合は、事前相談と承認が不可欠です。承認を得ずに提出した見積もりは、性能が優れていても無効となります。
自治体によっては「締切の前々日17時まで」に同等品確認票とカタログを提出し、承認済票を見積書に添付する必要があります。これを怠ると、自社が適切と判断した製品でも、仕様不適合として扱われてしまうため、注意が必要です。
同等品の活用はコスト競争力につながりますが、ルールを守らなければ逆効果です。仕様書を一字一句確認し、不明点は期限内に必ず発注者へ問い合わせましょう。
最低制限価格の存在に注意する
自治体の広報誌やパンフレットといった印刷関連業務では、最低制限価格・見積基準価格が設けられることがあります。これは、過度な安値競争による品質低下や下請けへの負担を防ぐための仕組みで、下限を下回った見積は自動的に失格となります。
この価格は、予定価格に70〜90%程度の係数を掛けて算出されるのが一般的です。競争が激しい案件では、原価ぎりぎりの価格を提示した結果、下限を割ってしまい失格になるケースもあります。
そのため、公告や仕様書に最低制限価格の記載があるかを必ず確認しましょう。適用される案件では、過去の落札結果を参考に相場を推定し、「安ければ勝てる」ではなく「安すぎない適正価格」を狙うことが、受注につながる現実的な戦略です。
以下の記事では、最低制限価格制度について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事
【脱・最低価格】入札における「最低制限価格制度」を徹底解説
見積書の記載・押印・ファイル形式を正しく整える
見積書の不備は小さな事務ミスに見えても、即失注につながる重大なエラーです。見積書は法的に有効な意思表示の書類であり、誤記や押印漏れがあるものは正式な申込として認められません。
公平性を保つため、修正は一切認められず、不備があれば一律で無効となります。とくに多いミスは、下記のとおりです。
- 案件番号や金額の記載ミス、合計と内訳の不一致
- 会社印や代表者印の押印漏れ
- PDF指定にもかかわらず、WordやExcelで提出
- 金額を訂正線と訂正印で修正したが無効とされるケース
前に第三者が確認するダブルチェックと、チェックリストにもとづく最終確認を徹底することで防げます。担当者の思い込みに頼らず、組織として確認体制を整えることが、ミスを防ぐのにもっとも確実な方法です。
まとめ:オープンカウンター制度を理解して、入札への第一歩を踏み出そう
オープンカウンターは、少額の契約を効率的かつ公平に公募する仕組みです。新規参入企業にとっては、官公庁取引の入り口となる重要な制度といえるでしょう。
短納期や価格競争といった課題はあるものの、制度の仕組みを理解し、事前に体制を整えておけば、確実にチャンスを掴めます。
とはいえ、「自社でも参加できるのか不安」「まず何からはじめるべきかわからない」と感じる方も多いでしょう。そのようなときは、「入札アカデミー(運営:株式会社うるる)」の無料相談サービスをご活用ください。入札情報サービス「NJSS」を16年以上運営してきた実績をもとに、専門家が実践的なアドバイスを行います。
安心して公共調達に挑戦できるように、一歩目をしっかりサポートしますので、利用してみてください。
入札アカデミー(運営:株式会社うるる)では、入札案件への参加数を増やしていきたい企業様向けの無料相談を承っております。 のべ3,000社以上のお客様に相談いただき、好評をいただいております。入札情報サービスNJSSを16年以上運営してきた経験から、入札案件への参加にあたってのアドバイスが可能です。 ご相談は無料となりますので、ぜひお問い合わせください。