好評をいただいております自治体ビジネスのプロが教えるシリーズ、
今回は「自治体ビジネスを勝ち抜く!競争力向上の秘策とは?」をテーマに全4回に分けて解説します。
本記事を参考にして、自治体ビジネスの競争力を身につけ、ビジネスチャンスを掴みましょう。
自治体ビジネスを勝ち抜く!競争力向上の秘策とは?
第3回:国と自治体が力を入れる中小企業・小規模事業者の受注支援 第4回:自治体ビジネス成功の鍵!組織マネジメントと営業戦略の見直し【本記事】 |
自治体ビジネスを伸ばす上での盲点
デジタル田園都市国家構想の策定などで広がる自治体ビジネス参入の機会。
より事業拡大を進めていくために明確な方針を掲げ、力を入れるもののなかなか思うように数字が伸びない。それも、自治体ビジネスの進め方をしっかり学び、人材育成や採用にも取り組み進めているにもかかわらずこんな状況に陥るケースがしばしば見られます。
営業担当者のスキルややる気の問題なのでしょうか。
もちろんそうした面も影響があるかもしれませんが、もっと根本的なところに課題が見られます。
それは、自治体ビジネスを進める上での組織体制やマネジメントに潜んでいます。
多くの会社が自治体ビジネスは民間ビジネスと同じような組織体制・マネジメント・人材育成で対応しています。ところが地方自治体は民間企業とは全く異なったメカニズムを持っている組織。
前提となる取引のタイミングや対応が民間とは違った切り口で行われるため、「理由がわからないが何かが違う」という起こる可能性があるのです。
何に課題が潜んでいるのか
では具体的にはどのあたりに課題が潜んでいる可能性があるのでしょうか。
代表的な問題点は3点あります。
問題点①: 民間営業と自治体営業の兼任・兼務
多くの会社が、自治体ビジネスを始めるにあたって潤沢な人的リソースを投下できる状況にはありません。まずスモールスタートして、うまくいったら人員増強。こんな考えの会社が大多数です。そのような状況でよくあることが民間営業担当者と自治体営業担当者の兼任兼務。ここの営業担当者が民間の顧客対応と自治体営業を同時に担当するやり方です。
このやり方をとった場合、営業担当者はすぐに数字が上がる民間顧客への対応を優先するようになってしまいます。
問題点②:営業活動の適期を無視した営業強化策
自治体営業はタイミングも重要。営業活動が刺さらない時期があります。
具体的には自治体側が予算を締め切ってしまった後の12月以降。このタイミングで訪問営業に檄を飛ばす営業マネージャーが営業担当者一同に発破をかける。それでは全く成果が上がらない負のスパイラルに陥ってしまいます。
問題点③: 短期的な数字のK P I
自治体営業部門が売上について年度何のK P Iを設定している場合もなかなかうまくいきません。
理由は、自治体の仕事を創るためには、前年度からのアプローチから始まり足掛け2年はかかるもの。
短期で数字を上げるのには元々向かない市場であるにも関わらず、「来月の注文書を取ってくるように!」といった無理な指示を出す営業部門責任者が少なからず存在します。
長期的なスケジュールで取り組むことなしには自治体ビジネスの成功は見込めません。
背景は「管理職の成功体験」
上記の課題は、営業担当者個人の力では権限もないため実現することができません。
となると、鍵を握るのが支店長や支社長、営業部門長などの管理職の方々と言えるでしょう。
特に営業職でキャリアを積んだ管理職の方々は、ご自身の民間営業での成功体験をベースとして自治体営業を推進します。
ここにある落とし穴が、営業活動の前提となる地方自治体の組織メカニズム。
民間ビジネスと営業のタイミングも職員とのコミュニケーションも予算の仕組みも、何もかもが異なる自治体営業。こうした自治体ビジネス市場で数字を上げるためには、まずは民間営業のやり方を一旦リセットして、ゼロベースで自治体営業のマネジメントを設計する必要があるのではないでしょうか。
さて、自治体営業のマネジメントで重要なのが
「アプローチの年間スケジュール」および「営業手法」の2点。
まず、自治体の営業は4月から始まる単年度の中の時期によって営業活動のアプローチ内容が全く異なります。このスケジュールに合わせて部門として組織的に情報共有を図り営業活動を展開することが重要です。
特に、本格的な受注には足掛け2年度かかることを理解し、中長期的な見通しを立てて短期の数字を追い求めないことに尽きます。
後者の営業手法については、何よりも民間営業担当者が得意な「セールス」ではなかなか数字が伸びないことを心得ましょう。
あくまでも自治体の課題やニーズを確認しながら、自社の製品やサービスが自治体の課題解決にどのように貢献し、それによって地域が、あるいは自治体組織がどのように変わるのか、ストーリーとロジックを組み立てながら案件化を進めていく手法を徹底していく必要があります。
自治体ビジネスの持続可能な推進に必要なこと
では、これらの課題を解決し組織的かつ効果的に自治体営業活動を進めるために必要なことはなんでしょうか。
① 働き方改革
営業担当者の時間は限られています。
そのような中で新たに自治体営業という仕事をオンするためには、「何をやめるか・手放すかを決める」こと。
仕事のプロセスを見直して無駄な部分を省く、デジタル技術を使って時短を図るなどの働き方改革と合わせて取り組むと自治体営業のための時間を捻出できる可能性が広がります。
② 営業戦略の抜本的な見直し
先に述べた通り、営業戦略を短期ではなく中長期的に引き直します。
年度の中のどのタイミングで何をやるべきかが決まっているのが自治体ビジネス市場。
このサイクルに沿って営業戦略を引き直すのも有効な方法です。
③ 農耕活動と狩猟活動を並行して取り組む
入札やプロポーザルの案件が公告されてから狩りに行くのは、例えるなら「狩猟活動」。ただし、そればかりに追われていると、次年度の案件化のための種まき、すなわち「農耕活動」がおざなりになります。
狩猟活動と農耕活動をパラレルで並行して行うことが持続可能に事業を伸ばしていく上で重要な取り組み方。職場の中で担当メンバー全員の時間的リソースを再設計して取り組むことをお勧めします。
自治体ビジネスを成功させるためには、自治体市場に沿った営業の仕組みのマネジメントと地方自治体への深い理解と市場に合致した戦略的なプランが不可欠です。
数字が上がらない営業担当者に原因を求め教育徹底に着手する前にやるべきことは営業活動のマネジメントの見直しです。
自治体ビジネスに合った動きを進められるように職場の仕事を整え戦略的に推進することができれば、徐々に数字という見える形で結果が現れてくることでしょう。
自治体ビジネスを勝ち抜く!競争力向上の秘策とは?
第3回:国と自治体が力を入れる中小企業・小規模事業者の受注支援 第4回:自治体ビジネス成功の鍵!組織マネジメントと営業戦略の見直し【本記事】 |
この記事の執筆者
株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子 氏 慶應義塾大学文学部卒業後、総合コンサルティング会社入社。中央省庁、地方自治体の幅広い領域の官公庁業務の営業活動から受注後のプロジェクトマネジメントに携わる。 2013年2月、 (株)LGブレイクスルー創業。人脈や力学に頼らず、国や自治体からの案件の受注率を高める我が国唯一のメソッドを持ち、民間企業へのコンサルティング・研修事業を展開。著書に『地方自治体に営業に行こう!!』『民間企業が自治体から仕事を受注する方法』がある。 |