地方自治体や省庁の入札案件で「公募型プロポーザル方式」という言葉を目にすることがあるかもしれません。これは、価格の安さだけで競争するのではなく、企画提案の内容を総合的に評価して発注先を決める入札方式です。
では、具体的にどのような仕組みで、どのような案件に用いられているのでしょうか。本記事では、多岐にわたる分野で活用されている「公募型プロポーザル方式」のシステムをわかりやすく解説します。
今後、公募型プロポーザルへの挑戦を考えている方にとって必見の内容なので、ぜひ参考にしてください。
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公募型プロポーザル方式とは企画競争入札の種類のひとつ
「公募型プロポーザル方式」とは、国や地方自治体などが業務を発注する際に行う、企画競争入札の一種です。
入札で最も一般的な「一般競争入札」では、入札価格によって落札者が決まります。一方、公募型プロポーザル方式では、価格だけでなく事業者の提案内容や実績などを総合的に評価したうえで選定を行います。
ここで、上記を含む代表的な入札方法についておさらいしましょう。
名称 | 概要 |
一般競争入札 | ・広く公募する方法(参加資格を満たせば誰でも参加可能)
・原則、最低価格で落札される ・競争性が高く、透明性も確保される |
企画競争入札 | ・広く公募するのは一般競争入札と同様だが、評価基準が異なる
・価格以外に、技術や提案内容などを総合的に評価するのが特徴 ・設計やコンサル業務などの技術提案が重要な分野で採用されることが多い ・入札参加資格を保有していなくても参加条件を満たしていれば参加できる案件もある |
指名競争入札 | ・発注者が実績などをもとに信頼できる事業者を指名する方法
・指名することで、一定の質が担保されやすい ・一般競争入札に比べて手続きが簡素化されるため、迅速に契約を締結できる |
発注側は、事業の内容やプロジェクトに適した入札方法を選定する必要があり、受注する企業側もそれぞれの特徴を理解することが肝心です。
なお、入札とプロポーザルの違いについては、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
関連記事:プロポーザルと一般競争入札の違いをわかりやすく解説!落札のためのポイントもご紹介
企画競争入札の種類
入札の方法のうち「企画競争入札」には、以下3つの種類があります。
①公募型プロポーザル方式
②指名型プロポーザル方式
③環境配慮型プロポーザル方式
それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。
①公募型プロポーザル方式
公募型プロポーザル方式とは、広く参加者を募り、提案内容や企業の実績などを総合的に評価して、最適な提案者を選定する入札方式です。
公募型プロポーザル方式のメリット・デメリットは、それぞれ以下のとおりです。
公募型プロポーザルのメリット
- 参加条件を満たしていれば参加できる
- 公平性が高い
- 価格競争に巻き込まれにくい
公募型プロポーザルのデメリット
- 実績や経験が少ないと選ばれにくい
- 提案書の作成やプレゼンテーションの準備が必要
公募型プロポーザルは新規参入のチャンスがあるため、これまで入札にチャレンジしたことのない企業も取り組みやすいでしょう。
②指名型プロポーザル方式
指名型プロポーザル方式とは、発注者である地方自治体や省庁が、特定の企業を指名して入札への参加を要請する入札方式です。
指名型プロポーザル方式は、専門性が高く高度な技術やノウハウが求められる案件で用いられる傾向にあります。
指名型プロポーザルのメリット
- 参加企業が限定されるため競争率が低い
- 指名案件は、発注者の求める条件に適合していると判断された企業が選定されるため、受注につながる可能性が高い
指名型プロポーザルのデメリット
- 指名されないと参加すらできない
- 指名されるための戦略が必要
指名型プロポーザルは、発注者との関係構築や自社の認知度向上などの施策が不可欠です。これらはすぐに構築できるものではないため、中長期的な取り組みが必要になるでしょう。
③環境配慮型プロポーザル方式
環境配慮型プロポーザル方式とは、国や独立行政法人が大規模な建築物の建設や改修などを行う際に、環境への負荷低減を考慮して事業者を選定する入札方式です。
環境配慮型プロポーザル方式のメリット
- 大規模なプロジェクトが中心となるため、受注できれば大きな利益を得られる可能性が高い
環境配慮型プロポーザル方式のデメリット
- 温室効果ガスの排出削減をはじめとする、高度な環境技術や専門知識が求められる
- 研究開発や専門人材の確保など、相応の投資と準備が必要
環境配慮型プロポーザル方式は、2007年11月に施行された環境配慮契約法にもとづき導入されたもので、環境に配慮した契約を推進することを目的としています。
公募型プロポーザル方式の主な案件
公募型プロポーザル方式は、価格競争ではなく提案内容やこれまでの実績が重視されます。そのため、専門性の高いスキルや技術を持つ企業にとっては、有利な選考方法といえるでしょう。
以下は、公募型プロポーザルが用いられることが多い分野です。
分野 | 概要 |
建設コンサルタント業務 | 橋梁やトンネルなどの公共インフラ整備、学校や庁舎などの建築物設計、地質調査など |
システムに係るコンサルティング業務 | 企業の基幹システムの導入や、情報セキュリティ対策など、専門的なITコンサルティングなど |
語学研修業務 | 企業のグローバル人材育成を目的とした、語学研修プログラムの企画・運営など |
PFI事業に関するアドバイザリー業務 | 公共サービスの提供に民間資金を活用するPFI事業において、事業計画の策定やリスク分析など |
上記以外にも、広告やキャンペーン事業や地域活性化事業など、さまざまな分野で公募型プロポーザル方式が活用されています。
なお、公募型プロポーザルの具体的な案件を知りたい方は、入札情報速報サービスNJSSから検索することも可能なので、ぜひ試してみてください。
プロポーザル方式とコンペ方式の違い
企画競争入札における落札者の選定方法は、プロポーザル方式とコンペ方式の2種類です。
それぞれの違いは以下のとおりです。
プロポーザル方式 | コンペ方式 | |
発注者側の目的 | 最適な業務遂行パートナーの選定(取引先企業を選ぶ) | 最も優れたデザインやアイデアの選定(成果物そのものを選ぶ) |
選定基準 | 提案内容に加え、過去の実績や価格、実施体制なども総合的に評価 | 主に提出された提案内容のみで評価 |
重視される点 | 発注者ニーズへの理解、具体性、業務遂行能力など | オリジナリティ、創造性、コンセプトの魅力など |
入札に成功したい企業担当者は、発注者側の意図を汲み取った提案をすることが重要です。
公募型プロポーザル方式の入札から審査までの流れ【7ステップ】
ここでは、公募型プロポーザル方式における入札への参加から審査結果の通知までの流れを、以下7つのステップに分けて解説します。
- STEP1.案件を探す
- STEP2.説明会に参加する
- STEP3.参加申請をする
- STEP4.不明点があれば質問する
- STEP5.提案書を提出する
- STEP6.プレゼンテーションを行う
- STEP7.審査結果を確認する
全体の流れを把握することで、スムーズな入札参加と、より良い結果につなげられる可能性が高まるでしょう。
STEP1.公告を確認する
公募型プロポーザル方式で入札案件を探すには、まず各省庁や地方自治体のホームページを確認します。ホームページ上で公開されている「公告」には、案件名・業務内容・参加資格・提出書類・スケジュールなどが記載されています。
数多くある地方自治体のホームページを1件ずつ確認するのは時間と手間がかかるため、効率的に情報収集したい方は、入札情報を集約した民間サイトを利用するのがおすすめです。
いずれの方法で探す場合も、公告の情報は細部までしっかりとチェックしましょう。とくに参加資格については、自社が要件を満たしているか確認しなければなりません。
とくに、公告には発注者が求める業務範囲や提案に盛り込むべき内容など、提案書作成の指針となる情報も含まれています。公告の内容を正確に把握することが、適切な提案を行うための第一歩です。
なお、入札情報速報サービスNJSSでは、年間180万件以上の入札案件が検索できるので、ぜひチェックしてみてください。
STEP2.説明会に参加する
多くの公募型プロポーザル方式では、発注者による説明会が開催されます。説明会は公告情報だけでは得られない、発注者の真のニーズや意図を理解できる貴重な機会なので、可能な限り参加しましょう。
説明会では案件の説明のほかに、質疑応答の時間も設けられるのが一般的です。質疑応答を活用して、公告や仕様書で不明瞭だった点を解消しておくとよいでしょう。
また、説明会に参加すると、競合他社の情報をチェックできる可能性があります。どのようなライバルがいるか知ることで、それに対応する戦略が立てやすくなります。
STEP3.参加申請をする
公募型プロポーザル方式に参加する意思が固まったら、指定された期日までに参加申請を行います。通常は 「参加申請書」のほか、企業の概要や実績などの必要書類をそろえて提出します。
参加申請書の様式や必要な添付書類は、発注機関のホームページからダウンロードできる場合が多いので、早めに確認しておきましょう。
申請書類に不備があると、参加資格を得られないおそれがあるため、提出前に記入漏れや添付書類の不足がないか十分に確認することが肝心です。
審査の結果、参加資格を有すると認められた企業には「参加資格確認通知書」が送付されます。
STEP4.不明点があれば質問する
公告内容や説明会、提供された仕様書などを確認するなかで不明な点が生じた場合は、発注者に質問しましょう。質問は、案件への理解を深め、より適切な提案を行うために欠かせないプロセスです。
多くの場合、質問とそれに対する回答は他の参加企業にも開示されます。そのため、質問内容を精査し、自社の提案に役立つ情報を引き出す工夫が必要です。
疑問点を放置したまま提案書を作成すると、的外れな提案になってしまうリスクがあります。適切な質問を通じて発注者のニーズを正確に把握し、提案の精度を高めましょう。
STEP5.提案書を作成し提出する
ここまでのステップで得られた情報をもとに、提案書を作成します。提案書は、発注者の課題を解決するための具体的な提案を記載する、最も重要な書類です。
提案書を作成する際は、以下4つのポイントを押さえておきましょう。
- 業務実施方針をしっかり書く
- 大見出し・小見出しの文言は地方自治体が提示した文書の文言をそのまま使って書く
- 図などのグラフィックには必ず説明文を書く
- 会社概要・経営者紹介・自社PRを企画提案書の最初に書かない
課題の具体的な解決方法を提示し、期待できる効果をわかりやすく伝えられるかどうかが、成否を分けます。
提案書の書き方について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。
プロポーザル成功の秘訣10選〈第4回〉民間ビジネスの企画提案書との違いを押さえる
STEP6.プレゼンテーションを行う
公募型プロポーザル方式では、書類審査を通過した企業に対して、プレゼンテーションの機会が与えられる場合があります。
限られた時間内で、自社の強みや提案の優位性を効果的に伝えるためには入念な準備が不可欠です。
プレゼンテーション用の資料は、視覚的にわかりやすく、かつ提案の要点が伝わるように構成しましょう。たとえば、重要なポイントを箇条書きにしたり、図表やグラフを活用したりするのも有効です。
リハーサルを繰り返し行い、時間配分や説明の順序、話す内容をブラッシュアップしておきましょう。発表者の熱意や誠実な態度は、発注者に好印象を与える要素となるため、担当者の選定も重要です。
STEP7.審査結果を確認する
すべての審査が終了した後、発注者から審査結果が通知されます。提案が採用された場合は、契約締結に向けて、発注者と具体的な協議を進めます。
結果通知書には、審査結果(採択または不採択)と、選定された企業の名称などが記載されていることが一般的です。残念ながら不採択となった場合でも、その結果を真摯に受け止め、次回の提案に活かせるようにしましょう。
公募型プロポーザルの参加申請前にガイドラインもチェック
公募型プロポーザルへの参加を検討する際は、公告だけでなく、各発注機関が定めるガイドラインの確認も欠かせません。
プロポーザルのガイドラインは、省庁や地方自治体のホームページで公開されていることが多く、参加を検討中の企業にとって有用な情報源となります。
ガイドラインの内容は機関によって異なりますが、一般的には対象となる業務の詳細や参加資格に関する規定、プロポーザル方式の実施手順などが記載されています。公告から審査結果の通知までのスケジュールも開示されているため、準備にかかる時間を逆算して着手するとよいでしょう。
公募型プロポーザルに関するよくある質問
最後に、公募型プロポーザルに関するよくある質問とその回答を紹介します。
- 公募型プロポーザルと随意契約との違いは?
- 公募型プロポーザルと一般競争入札との違いは?
- 公募型プロポーザルと総合評価の違いは?
- 応募者が1社のみだった場合はどうなる?
不安なことや疑問点を解消してから、入札の準備に取り掛かりましょう。
Q.公募型プロポーザル方式と随意契約との違いは?
A. 公募型プロポーザル方式は落札者を選定する方法であるのに対し、随意契約は契約方法のひとつです。
随意契約とは、国や地方自治体が入札することなく契約を締結することです。発注者が法律や適応条件にもとづいて選んだ企業と交渉し、契約を結びます。
随意契約は、官公庁入札のなかでも例外的な方式です。
Q.公募型プロポーザル方式と一般競争入札との違いは?
A. 公募型プロポーザル方式は落札者を選定する方法であり、一般競争入札は入札方式のひとつです。
一般競争入札では、多くの場合、最低価格落札方式が採用されます。これは、最も低い入札価格を提示した企業が落札者となる方式です。
一方、公募型プロポーザル方式による企画競争入札では、価格だけでなく提案内容や企業の実績、スキルなどが総合的に評価されるのが特徴です。
Q.公募型プロポーザル方式と総合評価落札方式の違いは?
A. 総合評価落札方式は、一般競争入札や指名競争入札などにおいて、落札者を決定する際に用いられる選定方法の一つです。
どちらの方式も、価格だけでなく企業の実績やスキルなどが評価される点は共通しています。
しかし、総合評価落札方式は「価格」と「価格以外の要素」を総合的に評価するのに対し、公募型プロポーザル方式は、主に「提案内容」そのものが評価の中心となる点が大きな違いです。
Q.応募者が1社のみだった場合はどうなる?
A. 公募型プロポーザル方式において、応募者が1社のみだった場合の対応は、発注機関によって異なります。
例1)
“なお,応募者が1社のみであっても,プロポーザルが成立することとし,審査及び選定を行う。”
引用元:京都市/次期京都市農林行政基本方針(仮称)策定に係るアンケート調査業務に関する受託者募集要項
京都市のある案件では、応募者が1社のみで他に競争相手がいなくても、通常通り提案内容の審査が行われます。
例2)
“広く公募をしたが1社しか応募しなかった場合に、資格を満たし提案内容があらかじめ定めた一定水準以上を満たしているときは、優秀提案者となる。 “
引用元:葛飾区/行政監査報告書「プロポーザル方式による契約について」
葛飾区のある案件では、応募が1社のみであっても、参加資格や提案内容の基準を満たしていれば選定されることになります。
入札する発注機関の募集要項などに目を通し、1社のみの場合の対応について確認しておきましょう。
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ここまで、公募型プロポーザル方式の概要やメリット・デメリットなどを解説しました。
公募型プロポーザル方式は価格だけに頼らず、自社の強みを最大限に活かせる入札方式です。入念な準備と質の高い提案書作成は不可欠となるため、初めて挑戦する企業にとってはハードルが高いと感じるかもしれません。
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