道路や橋の建設、学校や公共の整備など、社会インフラを支える公共工事は、入札により施工会社が決定されます。
しかし、すべての企業が自由に入札に参加できるわけではなく、事前に定められた資格要件を満たす必要があります。では、どのような企業が入札に参加できるのでしょうか?
本記事では、公共工事における入札の基本的な仕組みや、参加するために必要な4つの資格、落札までの流れを詳しく解説します。
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公共工事における入札とは?入札の種類も解説
入札とは、国・地方公共団体などの官公庁が、物品の購入や工事を行う際に、契約する相手方となる民間事業者を選ぶための仕組みです。
入札の種類には、大きく分けて以下の3種類があります。
- 一般競争入札
- 指名競争入札
- 随意契約
それぞれの特徴について、次項で解説します。
下記の記事では、主な入札方式とそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:【官公庁入札の種類】主な入札方式と、それぞれのメリット・デメリット
一般競争入札
一般競争入札とは、条件を満たす不特定多数の企業が参加できる入札方式です。落札者決定方式は、最低価格落札方式と総合評価落札価格方式の2種類です。
最低価格落札方式は、最低制限価格と予定価格の間で、もっとも低い価格を提示した企業が落札者になります。
最低価格落札方式では、価格競争になりやすいため、低利益になりやすい可能性があります。一方で、条件を満たせばどの企業でも参加できるため、公平性の高い入札方式といえるでしょう。
総合評価落札方式は、価格に加えて技術力や実績など、複数の項目を総合的に評価して落札者を決定します。
総合的な判断であるため公平性の確保が課題となる一方で、公共工事の品質を向上させながら、コストを抑えられるという特徴があります。
なお総合評価方式については、下記記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
一般競争入札と指名競争入札の違いは、下記記事でも解説しています。
関連記事:一般競争入札と指名競争入札の違いとは?メリットやデメリットも解説
指名競争入札
参加できる企業は、実績や技術力などを基準に発注機関が選定し、指名を受けた企業のみが入札に参加できます。
特定の企業だけで競争するため、落札の可能性が高く、過度な価格競争が起こりにくいのが特徴です。そのため、安定した受注を期待できる入札方式といえるでしょう。
では、なぜ指名競争入札が一般的ではないのでしょうか。それは、発注機関が特定の企業を指名する際の明確な基準が定められていないため、企業同士の癒着や談合のリスクが懸念されるためです。
そのため、入札制度導入の目的である「公平性」が確保できないことから、指名競争入札による案件は減少傾向にあります。
なお落札者決定方式は、一般競争入札と同様に、最低価格落札方式と総合評価落札方式の2種類です。
以下の記事では、指名競争入札の流れについて解説していますので、合わせてご覧ください。
関連記事:指名競争入札の流れ
随意契約
随意契約とは、発注機関が特定の企業を指名し、入札を行わずに直接契約を結ぶ方式のことです。一般的に、競争入札と比べて手続きが簡略化され、迅速に契約を締結できるメリットがあります。
随意契約を行う際でも、透明性や公平性を確保するために、可能な限り2社以上から見積書を取得することが望ましいとされています。そのため、発注機関は事前に条件を公示し、企業から見積書の提出を求められるケースが一般的です。そして提出された見積書を精査したうえで、もっとも有利な条件を提示した企業と契約を締結します。
また、随意契約には公共工事以外の分野でも適用される方式が存在します。
その代表例として、「プロポーザル方式」や「コンペ方式」の企画競争入札が挙げられます。これらの方式では、指定されたテーマにもとづいた企画書や提案書の提出を求め、もっとも適した提案をした企業と契約を結ぶ仕組みです。
企画競争入札は、とくに技術提案が重要視される分野で活用されます。具体的には、設計業務やコンサルタント業務のほか、イベント運営、システム開発、広報戦略など、提案の質や創造性、技術力が求められる分野に適用されることが一般的です。
このように随意契約は単なる直接契約にとどまらず、発注内容や目的に応じた柔軟な契約方式として活用されています。適切な手続きを踏むことで、公平性と透明性を保ちつつ、効率的な契約の締結が可能となります。
公共工事の入札に参加するための資格
入札に参加するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 建設業許可を取得していること
- 経営事項審査を行っていること
- 欠格要件に当てはまっていないこと
- 各種税金に滞納・未納がない
いずれかの条件を満たしていない場合、入札参加資格を取得できません。そのため、各要件を詳細に確認し、ひとつずつ満たしていきましょう。
①建設業許可を取得していること
建設業者は、500万円以上の建設工事を行う場合、工事内容に適した建設業許可が必須です。たとえば舗装工事をする場合、舗装工事業の許可が必要になります。
参考:
e-Gov法定検索「建設業法第三条第1項」
e-Gov法定検索「建設業法施行令第一条の二」
500万円未満の工事は、建設業許可の有無は問われません。
ただし公共工事は、金額にかかわらず建設業許可がなければ入札できない決まりです。主に500万円未満の工事を手掛けてきた企業が入札に参加する場合、まずは建設業許可の取得からはじめましょう。
②経営事項審査を行っていること
2つ目は「経営事項審査」を受審することです。
経営事項審査とは、決算内容や工事実績をもとに、建設業に点数をつけるための審査であり、「経審」とも呼ばれます。
入札参加希望者は、決算終了後に毎年受審しなければならず、点数に応じて入札できる価格帯が決まります。
なお、経審の申請を行う流れは以下のとおりです。
- 決算書をもとに、決算変更届を行政庁に提出
- 財務諸表を経営状況分析機関に送り、財務状況を点数化してもらう
- 経営状況分析結果通知書と経営規模等評価申請書を提出
提出書類は専門知識を要するものが多数あるため、行政書士に委託するのがおすすめです。
③欠格要件に当てはまっていないこと
欠格要件とは、適正を欠くと認められる事項を定めたものです。
主には、以下の要件が該当します。
- 許可申請書もしくは添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、または重要な事実の記載が欠けているとき
- 法人にあってはその法人の役員、個人にあってはその本人、その他建設業法施行令第3条に規定する使用人(支店長・営業所長等)が、一定の要件に該当しているとき
欠格要件は法を守らず適正な業務の遂行を行っていない企業を排除するための規定であるため、いずれかに該当すると入札参加資格を取得できません。
なお、すでに資格を取得している場合でも、欠格要件に該当する虚偽の申請とみなされ取消になるため注意しましょう。
④各種税金に滞納・未納がない
入札に参加するには、支払うべき税金を納めることが最低限のルールです。
入札参加資格申請の際に、国税や各地方自治体の納税証明書の提出を求められ、納付漏れや滞納を確認されます。
提出する証明書には、以下の種類があります。
税の種類 | 証明書の種類 | 発行先 |
国税 | ・納税証明書その3の3 「法人税・申告所得税・消費税および地方消費税の未納がないことの証明書」 |
・税務署 |
地方税 | ・県税(都道府県税)「法人住民税・法人事業税の納税証明書」 ・市税(市町村税)「法人住民税・固定資産税・都市計画税の未納がないことの証明書」 |
・県税事務所 ・市区町村役場 |
なお、適切に納税されていない場合、多くの発注機関で入札参加は認められません。
入札を検討する際は、事前に税金の支払い状況を確認し、支払い漏れがないことを確認しておきましょう。
公共工事における入札参加の流れ
公共工事の入札に参加するには、一定の要件を満たす必要があります。すべての事前準備が整ったら、実際に入札参加の流れを確認しましょう。
入札に参加するには、次の5つのステップを踏みます。
- 入札参加資格の審査申請
- 案件を探す
- 公示や仕様書を確認する
- 入札書や必要書類の準備と入札
- 落札したら発注機関と契約
次項で詳しくみていきましょう。
入札の流れについては、以下の記事でも解説しています。
関連記事:入札とは?入札の基本情報・入札参加の流れをわかりやすく解説
①入札参加資格の審査申請
はじめに、入札参加資格の申請を行います。入札参加資格とは、公共工事の質を確保する目的で、一定の参加要件や条件を定めている資格です。
国土交通省、経済産業省、厚生労働省、各都道府県、各市町村など、公共工事を発注する行政のうち、入札に参加したい発注機関に提出します。
提出先の発注機関により、申請機関や様式、提出書類は異なるため、各HPで確認して漏れのないように申請の準備を進めましょう。
公共工事の入札ランクは経審で決まる
入札参加資格申請では、経審を受けた結果通知書である「総合評定値通知書」を添付して申請します。
総合評定値通知書は、以下の項目について客観的に数値化した点数が記載されている書面です。
- 経営規模
- 技術力
- 社会性
- 経営状況
発注機関は総合評定値通知書の結果をもとに、公共工事の規模に応じた適切な建設業者を選定し、各社に入札ランクを付与します。
そして建設業者は自社の入札ランクにより、入札参加できる案件の規模が決定するのです。つまり経審の結果により、入札できる案件の規模が決まるといっても過言ではありません。
入札ランクをあげたい建設業者は、その年に入札ランクを踏まえて、次年度以降、経審の点数アップを目指し、施策を講じていきましょう。
②入札案件を探す
入札参加の資格を得ると、次は発注機関のHPや入札情報サービスサイトに掲載されている案件の中から、入札する案件を探します。
ただし、各発注機関のHPや情報サイトに掲載されている案件をすべて確認するには、膨大な時間と労力が必要であり、容易ではありません。
そのため、入札情報速報サービスNJSSのような入札情報サイトを活用すると、効率的に案件を検索できるでしょう。
③公示や仕様書を確認する
入札できそうな案件をピックアップしたら、公示書や入札説明書、仕様書から案件の詳細を確認します。
各書類に記載されている詳細は、以下のとおりです。
公示書 | 案件名、発注機関名、入札資格、入札日 |
入札説明書 | 業務・物品の概要、入札書類の提出方法、提出期限など |
仕様書 | 案件の背景や目的、工事概要や工期、納期など |
各書類には、準備をするうえで重要な情報が記載されていますので、確実に内容を確認しましょう。
なお公告については、以下の記事もご参照ください。
④入札書や必要書類の準備と入札
公共工事の入札では、一般的に以下の4種類の書類が必要です。
- 入札書
- 内訳書
- 委任状
- 封筒(電子入札以外)
入札書の様式は、あらかじめ所定の様式が定められているため、入札を検討する際は、案件情報を十分に確認することが欠かせません。
原則として、入札は会社の代表者が行いますが、委任状を提出することで、代表者以外の従業員も入札に参加可能になります。代理人が入札に参加する場合、入札書に代理人の氏名を記載することを忘れないようにしましょう。
入札方法は、「持参・電子・郵送」の3種類です。
持参する場合は、定められた会場で指定された時間に直接投函して入札します。
電子入札は、パソコンから入札できますが、事前登録や専用の機器が必要です。また入札当日にエラーが生じることも踏まえて、余裕をもった準備と入札を行いましょう。
郵送する場合は、追跡ができる一般書留または簡易書留にて郵送します。発注機関によっては、一般書留、簡易書留以外の郵送方法で郵送した場合、無効となる場合があるためご注意ください。
なお、入札書は封筒に入れて提出するのが一般的です。以下の記事では、入札書の封筒の記載方法について解説しています。
関連記事:【官公庁入札】正しい入札書の封筒の書き方
⑤落札したら発注機関と契約
開札が行われたあと、落札者は発注機関との契約手続きを行います。契約は落札から1週間以内など、期日が定められているため、早急な準備と手続きが必要です。
なお落札者や落札金額は、発注機関などのHPで公表されます。そのため、定期的に落札者情報を確認し、情報を蓄積しておくことで、今後の入札の参考になるでしょう。
公共工事の入札の流れについては、下記記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:公共工事の入札の流れ│中小企業が落札するためのコツを解説
【初心者向け】公共工事の入札で用いる用語集
公共工事の入札に関して、専門用語が多く複雑だと感じることはないでしょうか。
本章では、頻出する主要な用語を厳選し、それぞれの意味を分かりやすく解説します。
- 最低制限価格
- 保証金
- 談合
- 積算
公示や入札条件に記載されている専門用語を理解して、入札の準備に備えましょう。
公共工事入札における「最低制限価格」とは?
最低制限価格とは、落札できる最低価格のことです。
発注者が必要な経費などを考慮して決定しているため、品質低下や労働条件の悪化などのリスクを防ぐ目的で、最低制限価格を下回る入札は失格としています。
最終的に、残った企業の中でもっとも低い価格を提示した企業が落札者となります。
最低制限価格を設定することで、不当な低価格での落札を防ぎ、適正な品質が確保されるでしょう。
公共工事の入札における「入札保証金」とは?
入札保証金とは、契約締結を担保するために、見積金額の5%以上を発注機関に納める保証金です。
発注機関は案件を公示するまでに、調査や準備に経費や時間を費やしているため、契約不履行になると、損失が生じます。
そのため発注機関は、落札後の契約未締結を防ぐ目的で、一定の保証金を求めているのです。入札保証金を納められない場合は、辞退もしくはペナルティにつながるリスクがあるため、事前に予算の確保が欠かせません。
なお、入札に参加する企業は全社納めるのが原則ですが、一定の条件を満たすと免除されるケースがあります。
また、落札した事業者が契約を辞退した場合、入札保証金は没収されます。一方入札辞退や落札できなかった場合、保証金は返還されます。
入札保証金については、下記記事でも解説していますので、ご参照ください。
関連記事:入札保証金と契約保証金とは
公共工事の入札における「談合」とは?
談合とは、入札する企業同士の話し合いにより、価格や受注する企業を決めてしまう行為です。
談合は公正取引委員会の独占禁止法や刑法により禁止されており、違反した場合は3年以下の懲役、もしくは250万円以下の罰金、またはその両方が課せられます。
談合が発生する理由は、指名競争入札で入札業者が公開されることで、談合しやすい環境が生まれてしまうことが挙げられるでしょう。
参考:
公正取引委員会「独占禁止法の概要」
e-Gov法令検索「刑法」
公共工事の入札における「積算」とは?
公共工事における積算とは、工事にかかる費用を算出する行為であり、積算は発注機関と入札者の双方が行います。
工事の予定価格や入札価格は、積算により算出された金額が根拠となり導き出されます。
積算作業の一般的な流れは、以下のとおりです。
- 設計図や仕様書などの書類を読み解く
- 工事に必要な材料や作業、人材などを拾い出す
- 各費用を積み上げて、工事にかかる総費用を計算する
積算作業は手作業、もしくは積算ソフトを利用するケースが一般的です。ただし工事金額が大きくなると、手作業だけでは困難になるため、現在では積算ソフトを使う企業が多いでしょう。
公共工事では落札者なしの「入札不調」が起こる
公共工事では、落札者が決まらない状態を入札不調と呼びます。
落札者が決定しない理由は、以下の要因が考えられます。
- 一般競争入札にどの企業も参加していない
- 指名競争入札で全社が辞退した
- 予定価格を下回る入札額を提示した企業がいない
たとえば外郭団体など認知度が低い発注機関の案件であれば、情報がキャッチできず機会を逃してしまうことが考えられるでしょう。
また、発注機関が十分な利益を見込めない場合や工期の厳しさも、応札者がいない要因になります。
これらが原因で入札不調となった案件は、再度公示されたり、例外的に随意契約となったりする場合があり、対応は発注機関により異なります。
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公共工事への入札に初めて挑戦する企業にとって、そのプロセスは複雑で困難に感じることもあるでしょう。
- 自社に適した案件を見つけるのが難しい
- 案件探しにかかる時間と労力のコストを削減したい
- 一度に情報をまとめて閲覧できるサイトを知りたい
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積極的に公共工事の入札に参加して、受注案件を増やそう
公共工事の入札に参加するためには、まず資格要件を満たすための事前準備が欠かせません。しかし、一度入札の流れを理解すれば、基本的な手順はどの案件にも共通しており、スムーズに対応できるようになるでしょう。
とはいえ、入札案件は数多く、いずれも異なる要件を持つため、自社に適した案件を見つけるのは簡単ではありません。
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ぜひ積極的に入札に参加し、受注案件を増やしていきましょう。
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