入札手続きにおいて「公告」と「公示」という言葉をよく目にします。どちらも似たような意味に感じられますが、目的や使い分けが異なります。
公告は、国や地方自治体に限らず民間企業も含め、情報を広く知らせる手段です。一方、公示は国や自治体などの公的機関が、入札の情報を知らせる際に用います。
とくに、公共工事や政府調達案件では、これらの用語を正しく理解することが大切です。
本記事では、公示と公告の違いをわかりやすく解説します。また、入札公告・入札公示を見つける方法も紹介していますので、入札の手続きを予定しているご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
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入札公告・入札公示の違いについて解説
入札公告と入札公示は、いずれも入札に関わる情報を広く知らせるためのものです。しかし、発信する主体や使用される場面に違いがあります。
項目 | 入札公告 | 入札公示 |
意味 | 広く世間に告げ知らせること | 一般に周知させるため知らせること |
主体 | 公共機関・民間企業など | 国・地方自治体・公共性のある民間機関 |
用いられる場面 | 一般競争入札時など | 公募型指名競争入札やプロポーザル型入札時 |
公告も公示も「情報を一般に知らせる」目的は同じであり、意味合いが似ているため混同されやすいです。以下で、それぞれの違いを詳しく解説します。
入札の基本情報や流れについて、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてご参考ください。
関連記事:入札とは?入札の基本情報・入札参加の流れをわかりやすく解説
入札公告
広く世の中に告げ知らせることを「公告」と指します。
公共機関だけでなく、民間企業も主体となり得ます。
入札公告は、公共工事や物品購入などに関して、発注機関が契約相手を募るために入札情報を公開する行為のことです。地方自治法施行令では、一般競争入札を行う場合は公告することが義務付けられています。
公告には、以下のように、入札に参加するために必要な情報が記載されています。
- 参加資格
- 説明会の日程
- 入札期日
見落としがあると入札に参加できなくなるため、内容の確認を徹底しましょう。
なお、一般的に知られる「広告」と「公告」は異なります。広告は、公の機関ではない企業や個人が、自社の製品やサービスを宣伝するものです。一方、公告は入札情報など、契約に関する公的な情報を広く告知するために行われます。
入札における「公告」について、以下の記事でも詳しく解説しているため、ご参考ください。
入札の公告期間
入札公告には、公告から入札期日までの期間(公告期間)が設けられています。
予算決算及び会計令では、「入札期日の前日から起算して少なくとも10日前に公告する」と定められています。
公告期間を確認せずにいると、必要な書類準備が間に合わず、入札に参加できなくなる恐れがありますので注意しましょう。
公告期間は、長ければ長いほど参加希望の事業者が増えることにつながります。これによって、参加者が存在せずに開札されないこと(入札不調)を避けられます。
期間は原則10日以上とされていますが、緊急を要する場合は5日程度まで短縮できるため、入札に参加予定なら期間は必ず確認しましょう。
参考:e-Gov 法令検索 |予算決算及び会計令(昭和二十二年勅令第百六十五号)
入札公示
公示とは、ある事柄を周知させるために広く一般に知らせることを意味します。国や地方自治体をはじめ、交通機関・インフラ設備などの公的性質をもつ民間機関も主体となります。そのため、幅広く使われているのが特徴です。
入札公示は、公募型指名競争入札や公募型競争入札(プロポーザル方式)を行う際に、多く使われる傾向があります。なお、指名競争入札や随意契約は、原則として公告する規定がありません。
法律にもとづく一般競争入札の告知をあらわす記述である、公告との違いをわかりやすくするために、あえて「公示」と表現されます。
「入札告示」は公示するための公文書形式のひとつ
入札手続きでは「告示」という言葉も使われます。告示とは、公示を行う際に発行される正式な公文書のひとつです。
国家行政組織法第14条第1項には「行政機関の長が、その機関の所掌事務について公示を必要とする場合においては、告示を発することができる」と記載されています。
法律にもとづく公告とは異なり、国や地方自治体などの行政機関が、決定事項を広く一般に知らせるものを告示と指します。
参考:e-Gov 法令検索 |国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)
入札公告・入札公示を見つける方法
入札に参加するためには、公告や公示によって公開される情報をいち早く把握し、必要な準備を整える必要があります。
しかし、入札情報はさまざまな場所で発信されており、「どこを見ればよいのかわからない」と感じる方も多いでしょう。
ここでは、入札公告・入札公示を見つける方法を、以下の流れで解説します。
- 発注者の予算案・予算情報を確認する
- 発注見通しを確認する
- 発注機関のホームページをこまめにチェックする
- 入札情報サービスを活用する
入札に参加するまでの準備をスムーズに行いたい方は、参考にしてください。
発注者の予算案・予算情報を確認する
入札案件は、国や地方自治体など各発注機関が編成する予算にもとづいて実施されます。そのため、1~2月頃に公開される予算案を確認すれば、翌年度の入札案件を予測できます。
各省庁や地方自治体の公式サイトで予算案を確認しておけば、翌年度に予定される公共工事や物品調達案件の大まかな内容も把握できるでしょう。ただし、予算案は膨大な数になるため、すべて確認するのは手間がかかります。
新聞社や調査会社が提供している資料を確認すれば、効率よく情報収集が可能です。また、官公庁の予算情報を集約して提供している、民間サービスの活用もおすすめです。
たとえば「GoSTEP」では、業界最大級の約60万件の行政事業(予算)情報を保持し、新規情報を随時追加しています。よって、入札案件につながる予算情報ををスムーズに探せるようになります。
効率よく情報収集を行いたい方は、「GoSTEP」を検討しましょう。
発注見通しを確認する
国・省庁や地方自治体では、毎年4月頃になると、発注見通しが各機関のWebサイトに掲載されます。発注見通しの例は、下記のとおりです。
【横浜市役所】
【農林水産省】
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」により、各官公庁はその年の公共工事について、事前に公表する義務があります。
上記の見通しを確認すれば、「いつ頃、どのような案件が公示されそうか」を事前に把握できるため、準備がしやすくなります。
発注見通しに掲載される内容の例は、下記のとおりです。
- 入札の概要
- 公共工事の場所・期間
- 入札予定時期
ただし、掲載された案件が必ず発注されるとは限りません。予算の変更や情勢によって見送りになるケースもあるため、あくまでも予定として参考にする意識で確認しましょう。
参考:e-Gov 法令検索|公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年法律第百二十七号)
発注機関のホームページをこまめにチェックする
入札公告や入札公示の情報は、各発注機関のホームページや専用サイトで随時公開されます。そのため、自社が参加したい発注機関のWebサイトを定期的に確認し、最新の情報を見逃さないことが大切です。
省庁が行う一般競争入札の公告は、官報に掲載されています。ほかにも、調達ポータルや入札情報サービス(統合PPI)など、発注機関ごとのサイトでも公告が公表されます。
国・省庁や地方自治体では、毎月10〜20万件程度もの案件が公示・公告されており、すべてをくまなく確認するのは現実的ではありません。
過去の落札情報をもとに、自社が対応できそうな案件を見極めるのがおすすめです。
落札できる可能性がある案件を見つけたら、入札案件が公示されるまで待ちましょう。
入札案件の発注機関・分野
事前に、発注機関と分野を理解しておくと、入札案件を探しやすくなります。下記に、発注機関の種類と具体例をまとめましたので、ご参考ください。
種類 | 具体例 |
国の機関(主に省庁) | 内閣府・防衛省・法務省・文部科学省・農林水産省・総務省・国土交通省・厚生労働省など |
地方公共団体(自治体) | 都道府県庁・市区町村役所 |
外郭団体 | 独立行政法人・地方独立行政法人・特殊法人・特別民間法人など |
その他 | 医療・福祉、教育、研究所、博物館・美術館など |
これらの分類を頭に入れておくと、自社に合う案件を探しやすくなるでしょう。また、入札参加できる分野は、下記のとおりです。
- 物品
- 役務(業務委託)
- 建築工事
- 建設コンサルタント
分野によって、必要な入札参加資格や求められる実績が異なるため、事前に確認しましょう。
入札情報サービスを活用する
入札案件は、発注機関・分野も豊富なため、自社に適している案件を自力で探すのは簡単ではありません。公告・公示情報を効率よく収集したいなら、入札情報サービスを活用しましょう。
「入札情報速報サービスNJSS」は、全国の官公庁が発信する入札情報を一括検索できるサービスです。地域や発注機関など、条件を細かく設定して情報を絞り込めるため、自社に合う案件だけをスムーズに探せます。
さらに、過去の落札データを分析することで、競合企業の動向を把握できる点も大きな利点です。今後の入札計画を立てる際に、貴重な参考材料となるでしょう。
案件収集にかかる人件費を抑え、業務の効率化を目指す企業は、「入札情報速報サービスNJSS」をお試しください。
官公庁入札の手順【5つのステップ】
官公庁入札に参加するには、いくつかの手順を踏む必要があります。基本的な流れは、下記のとおりです。
- 入札案件を見つける
- 入札参加資格を取得する
- 仕様書を入手し、必要であれば説明会に参加する
- 入札を実施する
- 契約を締結する
それぞれ詳しく解説していきます。
以下の記事では、入札参加がはじめての方向けに「官公庁入札の流れ」を解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:入札参加が初めての方向け官公庁入札の流れ5つのステップ
1.入札案件を見つける
はじめに、自社が取り組むべき入札案件を見つけましょう。
入札案件は、国・省庁や地方自治体などの発注機関が公開しています。それらの情報を正確に把握することが大切です。
まず、発注機関のWebサイトから、入札案件が掲載されているページを探します。そのうえで、自社が参加できる条件を満たしているかを確認しましょう。
案件ごとに要件が異なるため、詳細な条件を慎重にチェックします。多くの国・省庁や地方自治体では、調達情報を専用のポータルサイトや公式サイトで更新しています。
新たな案件を見逃さないためには、定期的に確認しましょう。しかし、日々の業務を行いながらすべての案件情報を収集するのは簡単ではなく、手間や時間がかかるのが実情です。
案件を探すのにかかる負担を軽減するために、「入札情報速報サービスNJSS」を活用すれば、効率よく必要な案件を見つけられます。とくに入札経験の少ない企業にとっては、手間を省きながら有益な案件を逃さない手段として有効です。
2.入札参加資格を取得する
官公庁入札に参加するには、原則として「入札参加資格」を取得しなければなりません。
発注機関や分野ごとに要件が異なり、申請窓口や申請方法もそれぞれ違う可能性があります。
また、下記の3つに当てはまる企業は、入札に参加できない可能性が高いため、注意しましょう。
- 反社会勢力
- 納税の未納・滞納
- 民事再生手続き中
また、業務の種類によっては、国家資格の取得や特定分野での実績も条件となる場合もあります。
資格申請から取得まで、通常2週間から1ヶ月程度かかるため、案件を見つけてから申請すると間に合わない可能性があります。
スムーズに入札へ参加できるよう、早めの準備を心がけましょう。
3.仕様書を入手し、必要であれば説明会に参加する
参加を検討する案件を見つけ、入札参加資格を取得したら、入札の詳細を確認して準備を進めます。
まず、発注機関から「仕様書」を入手しましょう。
仕様書には、調達する物品やサービスの仕様、納期などが明記されています。受け取り方法は発注機関によって異なるため、注意が必要です。
おもに、直接窓口で受け取る方法や、Web上でダウンロードする方法があるため、事前に確認しましょう。
また、入札案件によっては、説明会への参加が必須とされる場合があります。説明会では、仕様書の内容や入札条件について詳しい説明が行われます。
説明会後に仕様書を配布する場合もあるため、案内にしたがって手続きを進めましょう。仕様書の内容に疑問点があれば、担当窓口に質問します。
ただし、質問には期限が設けられている場合があるため、あらかじめ入札説明書を確認しておきましょう。
4.入札に参加する
仕様書をもとに見積書を作成し、入札に必要な書類を揃えます。入札方法は、以下の3種類があります。
入札方法 | 特徴 |
会場で入札 | ・発注機関の指定会場で実施される ・入札書に情報を記載し、専用の箱に入れる |
電子入札 | ・入札を行う行政機関からの通知・各種書類の提出など、インターネット経由で行う ・電子証明書(ICカード)とICカードリーダーを使って入札する |
郵便入札 | ・入札書に情報を記載し、指定の方法で郵送する ・入札書を入れる封筒の記載方法にも決まりがある場合がある |
いずれの場合も、提出期限や記載ミスには注意し、余裕をもって準備しましょう。官公庁入札において、正しい入札書の封筒の書き方については、以下で詳しく解説していますので、ご参考ください。
関連記事:【官公庁入札】正しい入札書の封筒の書き方
5.契約を締結する
入札が行われ、最低金額で応札した事業者が「落札者」として決定されると、契約手続きへと進みます。
落札結果は、入札直後に現場で発表されるほか、後日、発注機関のWebサイト上にも掲載されます。参加企業の入札金額も公開されるため、今後の入札戦略に役立てられるでしょう。
また、官公庁入札では、同様の案件が毎年のように繰り返し公示されるケースもあります。落札結果を蓄積しておけば、将来の入札で価格設定や準備をより有利に進められます。
入札アカデミー(運営:株式会社うるる)では、入札案件への参加数を増やしていきたい企業様向けの無料相談を承っております。
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