少額随意契約とは、一定の基準額以下であれば入札を行わずに契約できる制度です。2024年の制度改正により、基準額が大幅に引き上げられ、従来は一般競争入札だった案件も随意契約の対象となりました。
本記事では、少額随意契約の概要や改正ポイント、受注拡大につなげるポイントを解説します。自治体との取引機会を広げたい担当者様は、ぜひ参考にしてください。
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少額随意契約とは
少額随意契約とは、自治体などの公的機関が、あらかじめ定められた基準額以下の契約について、競争入札を経ずに随意契約方式で契約できる仕組みです。通常は、複数業者から見積もりを徴収したうえで契約先を決定します。そのため、特定の1社に直接発注する制度よりも、手続きを簡略化した契約方式と考えるのが適切です。
ここでは、少額随意契約について下記の観点で詳しく解説します。
- 少額随意契約の定義
- 通常の随意契約との違い
- 少額随意契約が使える契約種別
少額随意契約の定義
少額随意契約は、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号にもとづき、「予定価格が自治体規則で定める額を超えない契約」について、競争入札を経ずに契約できる仕組みです。 なお、少額随意契約は法令上の正式名称ではなく、実務上の呼称です。
この制度は、事務負担を軽減しつつ迅速に調達を行うことを目的としており、具体的には次のような場面で活用されます。
- 少額の備品や物品の購入
- 緊急対応が必要な軽微な修繕
- 短期的な事務委託
ただし、基準額は自治体ごとに異なり、数十万円〜数百万円まで幅があります。さらに令和7年(2025年)4月の施行令改正により、国の基準額が引き上げられたため、各自治体で上限額の見直しが進められているのが現状です。
実務では、必ず最新の契約規則を確認することが求められます。
通常の随意契約との違い
随意契約は「第1号(少額随意契約)」と「第2号〜第9号(通常の随意契約)」に大きく分けられます。第1号は、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号にもとづき、予定価格が自治体規則で定める基準額以下であれば利用可能です。一方で第2号以降は金額に関係なく、競争入札に適さない特別な理由がある場合に適用されます。
代表的な適用例は、下表のとおりです。
| 区分 | 根拠条文 | 主な例 |
| 少額随意契約 | 第1号 | 庁舎内の備品購入や軽微な修繕(基準額以内) |
| 通常の随意契約 | 第2号 | 特定の事業者しか対応できない基幹システム改修 |
| 第5号 | 災害復旧 (例:台風被害の応急工事、水道管破裂の緊急修繕など) |
このように、少額随意契約は金額基準、通常の随意契約は案件の性質基準という違いがあります。ただし、基準額は契約種別や自治体によって異なるため、30万円だから必ず第1号とは限りません。
また、随意契約は透明性の低下や業者癒着のリスクも指摘されています。そのため、見積合わせの実施や契約記録の保存、監査対応を欠かさず行うことが求められます。
実務上は、まず競争入札が困難な特別理由があるかを確認し、該当しなければ金額基準で判断するという流れが基本です。
少額随意契約が使える契約種別
少額随意契約は、工事・物品購入・業務委託など幅広い契約種別で利用できます。ただし、国際調達や特別な規制案件など例外もあるため、すべての契約に適用できるわけではありません。
契約の種類ごとに基準額が異なり、さらに都道府県・指定都市・市町村といった自治体区分によっても差があります。令和7年(2025年)4月の政令改正により全国的に基準額は引き上げられましたが、実際の金額は各自治体の規則で定められるため、必ず最新情報を確認しましょう。
また、入札リサーチセンターの「入札マーケット動向マンスリーレポート(2025年5月度)」によると、物品契約における見積合わせやオープンカウンター方式が全体の54.8%を占めています。これは、契約方式の中でもっとも多い割合です。
2025年4月の政令改正による基準額引き上げを受け、従来は一般競争入札で行われていた案件が、簡便な契約方式へ移行している実態が示されています。
【令和7年度改正】少額随意契約の基準額・背景
2025年4月1日から、少額随意契約に関する基準額の改正が施行されます。ここでは、下記のポイントをわかりやすく整理します。
- 基準額改定の背景と目的
- 改正前後の基準額の比較
- 引き上げを発表している自治体の具体例
それぞれ見ていきましょう。
基準額改定の背景と目的
2025年4月に施行された少額随意契約の基準額改定は、物価上昇や人手不足に対応し、調達現場の負担を軽減するために実施されました。およそ50年ぶりの引き上げによって、自治体の調達が柔軟かつ迅速に行える体制が整いつつあります。
基準額改定の背景となった課題、改定の目的を以下の表にまとめました。
| 背景となった課題 | 改定の目的 |
| ・約50年間、基準額が据え置かれていた ・物価上昇により基準額が追いつかず、少額案件でも競争入札が必要になっていた ・調達の複雑化や人手不足で負担が拡大していた |
・実態に即した柔軟な契約運用を可能にする ・入札手続きの時間・労力を削減し業務効率の改善を図る ・調達を円滑にし、公共サービスを迅速化する |
「入札マーケット動向マンスリーレポート(2025年5月度)」によると、2025年5月時点で物品契約における見積合わせ・オープンカウンター方式の割合は大幅に増加している一方で、一般競争入札の割合は3月から5月にかけて大きく低下しました。
基準額引き上げをきっかけに、従来は一般競争入札で行われていた案件が、簡便な契約方式へ移行している実態が示されています。
改正前後の基準額を比較
令和7年4月1日の制度改正により、多くの契約種類で少額随意契約の基準額が引き上げられました。従来の「5・8・13(ゴーハチサン)」と呼ばれる、「その他(50万円)」「財産の買入れ(80万円)」「工事(130万円)」とする全国一律の上限額は廃止され、発注者の区分(国・都道府県・市町村など)に応じた上限を設ける仕組みに移行しています。
この見直しは、全国同一基準では地域の実情に即した調達が難しいという課題を踏まえたものです。少額随意契約の基準額は、下記のとおり改定されています。
| 契約の種類 | 国・都道府県・政令市 【現行】 |
国・都道府県・政令市 【改定後】 |
政令市を除く市区町村 【現行】 |
政令市を除く市区町村 【改定後】 |
| 工事・製造 | 250万円 | 400万円 | 130万円 | 200万円 |
| 財産の買い入れ | 160万円 | 300万円 | 80万円 | 150万円 |
| 物件の借り入れ | 80万円 | 150万円 | 40万円 | 80万円 |
| 財産の売り払い | 50万円 | 100万円 | 30万円 | 50万円 |
| 物件の貸し付け | 30万円 | 50万円 | 30万円 | 30万円 |
| その他 | 100万円 | 200万円 | 50万円 | 100万円 |
このように、多くの契約で基準額は約1.5〜2倍に引き上げられました。一方で、政令市を除く市区町村における「物件の貸し付け」は、据え置きとされています。
制度改正に伴い、自治体は契約規則や事務マニュアルの見直しが必要です。事業者もまた、変更後の金額帯に合わせて見積対応体制を整えることが求められます。
実際に引き上げを発表している自治体の具体例
2024年の制度改正を受けて、多くの自治体が少額随意契約の基準額を引き上げる動きを見せています。2025年4月1日の施行に向け、すでに改定を発表した自治体も複数あり、各地で契約規則や財務規則の見直しが進行中です。
具体例は、下表のとおりです。
| 自治体 | 改定内容 | 特徴 |
| 福井県 | ・工事請負:250万→400万 ・工事関連委託:100万→200万 |
・国の基準を超える独自改定 ・物価高騰や事務効率化を目的とした対応 |
| 軽井沢町・東海市 | ・工事・製造請負:130万→200万 ・財産の買い入れ:80万→150万 ・業務委託:50万→100万 |
・国基準に準拠した改定 ・スムーズな制度移行を実施 |
参考
福井県|随意契約ができる限度額を引き上げます
軽井沢町|地方自治法施行令の一部改正に伴う随意契約の基準額の引き上げについて
東海市|地方自治法施行令に定める少額随意契約の基準額の引き上げについて
このように、制度改正は単なる数値変更ではなく、各自治体の契約制度や発注方式に直接影響しています。企業としては、営業先となる自治体の基準額や公募方式を定期的に確認し、自社の対応を見直すことが重要です。
少額随意契約のメリット
ここでは、少額随意契約のメリットを自治体側と民間事業者側の2つの視点から整理して解説します。
| 自治体側のメリット | 民間事業者側のメリット |
| ・一般競争入札に比べて手続きが簡単で、契約をスピーディに進められる ・見積書の徴取のみで発注できる場合があり、職員の事務負担を軽減できる ・災害対応や施設修繕など、緊急案件に迅速に対応できる |
・入札に必要な資格や書類の準備が簡素な場合があり、参入ハードルが低い ・自治体が地元事業者を優先的に選ぶ傾向がある ・小規模な案件から実績を積み、継続的な受注につなげやすい |
自治体側のメリット|迅速な契約・事務負担の軽減を期待できる
少額随意契約は、自治体にとって業務の迅速化と効率化を実現する手段です。とくに緊急性の高い案件では、一般競争入札よりも柔軟に対応できます。
主なメリットは、下記のとおりです。
- 一般競争入札に比べて手続きが簡単で、契約をスピーディに進められる
- 見積書の徴取のみで発注できる場合があり、職員の事務負担を軽減できる
- 災害対応や施設修繕など、緊急案件に迅速に対応できる
たとえば、台風で破損した窓ガラスの修繕は、通常の入札なら1ヶ月以上かかることもあります。しかし、少額随意契約なら数日で発注可能です。このように、市民サービスの維持や向上に直結する制度といえます。
民間事業者側のメリット|新規参入・地元優遇のチャンスがある
少額随意契約は、中小企業や創業間もない事業者にとって、公共調達に参入するための一歩となる制度です。大規模案件と比べて参加しやすい点が特徴があります。
主なメリットは、下記のとおりです。
- 入札に必要な資格や書類の準備が簡素な場合があり、参入ハードルが低い
- 自治体が地元事業者を優先的に選ぶ傾向がある
- 小規模な案件から実績を積み、継続的な受注につなげやすい
多くの自治体では、市の広報物や報告書などの印刷業務は、一定金額以下であれば少額随意契約の対象とされています。自治体の「業者登録制度」に事前登録しておくことで、受注のチャンスが広がるでしょう。
少額随意契約のデメリット
少額随意契約は便利な制度ですが、メリットの裏側には下記のようなデメリットもあります。
- 透明性・公平性の確保が難しい
- 特定業者への偏りや馴れ合いが起きるリスクがある
- 違法な分割発注と見なされるリスクがある
- 会計監査で記録整備や説明責任を問われる可能性がある
制度を適正に運用するために理解を深めていきましょう。
透明性・公平性の確保が難しい
少額随意契約の懸念点は、公告や公開入札を行わずに契約が進むことです。そのため、他の事業者や住民から「なぜこの業者が選ばれたのか」と疑問を持たれやすく、競争入札に比べて透明性や公平性の確保が難しくなります。
とくに見積依頼が特定の業者にしか届かない場合、他の事業者は案件の存在すら知らず、参入機会を失う恐れがあります。この不透明さを防ぐためには、オープンカウンター方式の導入が有効です。
具体的な取り組みは、下記のとおりです。
- 発注情報をウェブサイトで公開し、誰でも見積提出できるようにする
- 応募状況や選定理由を一定期間掲示する
- 外部チェックを定期的に行い、恣意的な選定を防ぐ
こうした取り組みにより、迅速性を維持しながら制度への信頼性を高められます。
特定業者への偏りや馴れ合いが起きるリスクがある
少額随意契約は、関係性のある業者に発注が集中しやすい仕組みです。担当者にとっては安心で効率的な選択でも、長期化すると競争原理が働かず、価格高止まりや品質低下を招く可能性があります。
事業者側でも「発注されて当然」という姿勢が生まれ、改善努力が薄れる恐れがあります。これを防ぐためには、発注先を可視化して定期的に点検することが重要です。
具体的な方法は下記のとおりです。
- 発注履歴や見積提出履歴を記録したローテーション表を作成
- 発注回数の偏りを定期的に確認
- 市場調査や価格比較を実施し、新規業者を発掘
こうした仕組みにより、癒着の温床となる偏りを防ぎ、公平な調達につなげられます。
違法な分割発注と見なされるリスクがある
少額随意契約でとくに注意すべきなのが「分割発注」と見なされる行為です。本来は一体として競争入札すべき案件を、小分けにして随意契約の範囲に収めると、監査で不正と判断される可能性があります。
善意であっても、結果として入札回避になっていると見なされれば、厳しい指摘を受けるでしょう。分割発注と疑われないための対応例は、下記のとおりです。
- 事業全体の目的・工期・予算を文書で残す
- 場所・時期・用途の違いなど、一体性がない理由を記録する
- 発注を分ける場合は、その判断基準を第三者にわかる形で整理する
予算執行の段階で曖昧な判断を避けることが、適正な制度運用につながります。
会計監査で記録整備や説明責任を問われる可能性がある
少額随意契約は手続きが簡単な分、記録が不十分だと会計監査で説明責任を問われるリスクがあります。とくに「なぜこの業者を選んだのか」「この価格が妥当か」といった根拠が残っていないと、不公平な契約と判断される恐れがあります。
担当者が異動・退職した後に理由がわからなくなることも多いため、文書での整理が欠かせません。対策として有効なのが、監査対応ファイルの標準化です。保存すべき主な書類は、下記のとおりです。
- 随意契約理由書
- 見積比較表(最低価格以外を選んだ場合は理由を明記)
- 業者選定の経緯メモ
これらを一式として保存する運用ルールを設ければ、誰が見ても契約経緯を正しく説明できる体制が整います。
少額随意契約とオープンカウンター方式の違いと選び方
少額随意契約は迅速に契約できる一方で、透明性に課題があると指摘されています。その解決策として注目されているのがオープンカウンター方式で、不特定多数の事業者から見積を募る仕組みです。
ここでは、下記の内容について詳しく解説します。
- オープンカウンター方式とは不特定多数に見積もりを募る方式
- 少額随契との違い
- 両者の併用は可能?
オープンカウンター方式とは不特定多数に見積もりを募る方式
オープンカウンター方式は、案件情報を庁内サイトなどで公開し、不特定多数の有資格業者から見積を募る仕組みです。あらかじめ特定業者に声をかける「指名見積合わせ」と異なり、幅広い事業者に公平な参加機会を提供できます。
主な特徴は、下記のとおりです。
- 案件情報をインターネットで広く公開
- 自治体が定める資格をもつ業者なら誰でも参加可能
- 提出された複数の見積を比較して契約先を決定
少額案件でも競争性と透明性を確保しやすく、事業者との癒着・不公平感を避けられます。
少額随契との違い
少額随意契約とオープンカウンター方式は混同されやすいですが、制度上の位置づけは異なります。少額随意契約は法令で定められた契約方法であり、オープンカウンター方式はその実施手段のひとつです。
両者の主な違いは、下表のとおりです。
| 項目 | 従来型の少額随意契約 | オープンカウンター |
| 競争性 | 担当者が選んだ限られた数社のみで競争 | 公告を通じ、参加資格を満たす事業者なら広く応募できる |
| 透明性 | 選定過程が非公開のため、不透明になりやすい | 募集要項を公開するため、誰が応募したかが明確で透明性が高い |
| 参加対象 | 過去の取引実績がある業者に限定されやすい | 実績がなくても条件を満たせば参加できる |
| 参加条件 | 実績や担当者との関係性が重視されやすい | 条件は公告で明示され、コネや関係性に左右されない |
| 公告の有無 | 公告は不要で、依頼先は内部で決定 | 自治体のWebサイトなどで公告を行い、広く公募 |
参考
財務省|少額随意契約の基準額の見直しについて
国土交通省|オープンカウンター方式について
さらに「入札マーケット動向マンスリーレポート(2025年5月度)」によると、物品契約のうち54.8%がオープンカウンター方式で実施されています。この方式は、自治体調達のスタンダードになりつつあります。
両者の併用は可能?
少額随意契約とオープンカウンター方式は制度上は別の概念ですが、実務では両者を組み合わせて運用する自治体も見られます。自治体が少額随意契約を行う際に、透明性と公平性を確保する手段として、オープンカウンター方式を選択するケースがあります。
実際の流れは下記のとおりです。
- 自治体のホームページ等に案件情報を公開
- 参加を希望する事業者が仕様書を確認し、見積書を提出
- もっとも条件のよい業者を契約相手に決定
- 契約は「少額随意契約」として締結される
この仕組みにより、簡便な手続きでありながらも、公正性を第三者に説明できる体制が整います。
少額随意契約を進める手順
少額随意契約は、基準額以下であれば入札を行わずに発注先を選べる制度です。ただし近年は、透明性を確保するためにオープンカウンター方式を組み合わせるケースが増えています。
事業者が実際に対応する流れを、下表にまとめました。
| 工程 | 内容 |
| 案件の確認 | ・自治体サイトや調達ポータルで公告を確認 ・参加資格を満たす案件を確認し、対応可否を判断 |
| 見積書の作成・提出 | 仕様書をもとに見積書を作成し、期限までに提出 |
| 契約締結・履行開始 | ・契約書または請書を取り交わして正式契約 ・契約後に納品・検収・支払いへと進行 |
このように手順を踏むことで、少額随意契約の柔軟性を活かしながら、公平性と透明性を確保した契約運用が実現できます。
少額随意契約で受注チャンスを広げるポイント
令和7年度の制度改正により、少額随意契約の対象案件が大幅に広がりました。これまで競争入札だった案件が、簡易な手続きで発注されるケースも増えており、中小企業や地域事業者にとっては大きなビジネスチャンスとなっています。
ここでは、そのチャンスを掴むために押さえておきたいポイントを解説します。
- 少額随契対象の拡大に備えて案件を継続的に探す
- NJSSや自治体サイトを活用して最新情報を収集する
- 価格・仕様・納期を明確に伝えて見積書を作成する
- 登録制度・地元優遇制度を把握して戦略的に申請する
- 信頼構築と丁寧な対応を心がけて選ばれる企業になる
- 一般競争入札案件の減少傾向にも注視しておく
それぞれ見ていきましょう。
少額随契対象の拡大に備えて案件を継続的に探す
制度改正によって、従来は競争入札だった中規模の工事や物品購入も、見積合わせで発注されるようになりました。見積書1枚で参加できる案件が増えるため、この機会を積極的に掴む姿勢が重要です。
たとえば、小規模な建設業者が手続きの負担を理由に入札を敬遠していたとしても、改正後は修繕工事や設備更新などに応募しやすくなります。
新しい市場に対応するためには、自社の得意分野における新基準額を確認し、その金額帯の案件を重点的にチェックすることが欠かせません。待ちの姿勢ではチャンスを逃し、他社に先を越されてしまいます。
入札情報サービスNJSSや自治体サイトを活用して最新情報を収集する
少額随意契約、とくにオープンカウンター方式は、公告から締切までの期間が短いのが特徴です。タイミングを逃さないためには、日常業務の中に情報収集を組み込むことが欠かせません。
活用すべき主な情報源は、下記のとおりです。
- 自治体の公式サイト(入札・契約情報ページ)
- 自社の拠点がある地域の案件情報(定期的に確認)
これらを営業活動の一部として、定期的なチェック体制を整えることで、受注機会の取りこぼしを防げます。「誰が・いつ・どこを見るのか」を社内で明確にしておきましょう。
中でも「NJSS(入札情報速報サービス)」の活用は、情報収集の効率を高められるメリットがあります。全国8,900以上の発注機関から年間約180万件の案件を収集しており、キーワード・地域などで絞り込んだ検索や、AIによる案件レコメンドも可能です。
さらに、過去の落札情報も閲覧できるため、競合の動向を把握しながら戦略的に見積を作れます。自治体サイトを一つひとつ巡回する必要がなく、重要案件を漏らさずキャッチできる点は、営業効率の改善に直結します。
無料でお試し利用できるため、まずは実際に使ってみて、自社に合うかどうかを確認してみるとよいでしょう。
価格・仕様・納期を明確に伝えて見積書を作成する
自治体向けの見積書で重視されるのは、安さよりも正確さとわかりやすさです。仕様書の条件をすべて満たし、価格の内訳や納期、諸条件を誰が見ても理解できるように整理することが信頼につながります。
自治体は税金を使って契約を行うため、記載漏れや曖昧な表現がある見積書は避けられやすい傾向があります。重要なのは「仕様どおりに、納期内に、追加費用なく確実に納品できる」という安心感を示すことです。
見積書に含めるべき要素の例は、下記のとおりです。
- 商品の詳細:メーカー名・型番・仕様など
- 税抜価格・消費税・税込価格などの明示
- 諸費用(送料・設置費など)の内訳
- 納期・納品条件の記載
- インボイス登録番号
自社で標準テンプレートを用意し、提出前にチェックリストで確認する仕組みをつくることで、安心して任せられる会社という評価を積み上げられます。
登録制度・地元優遇制度を把握して戦略的に申請する
少額随意契約に参加するには、まず自治体の名簿に登録することが必要です。基本となる「競争入札参加資格」に加え、一部の自治体では地元企業を優遇する制度を設けています。活用できる制度があれば、積極的に申請しましょう。
主な制度の概要は、下表のとおりです。
| 制度名 | 概要 |
| 競争入札参加資格 | ・自治体契約に参加するための基本資格 ・経営規模や納税状況、実績などの要件あり |
| 小規模契約希望者登録制度 | 小規模事業者を対象に、少額契約の発注先として優先的に選ばれる仕組み |
| 障害者優先調達推進法 | 障がい者の経済的自立を進めるため、公的機関が障がい者就労施設等から物品やサービスを優先的に調達する制度 |
参考
足立区|足立区小規模工事契約希望者登録の申請をされる方へ
厚生労働省|障害者優先調達推進法
自治体は原則として、登録業者の中から見積依頼先を選びます。登録を済ませていないと、受注のスタートラインに立つことすらできません。さらに、地元限定の見積制度を利用すれば、大手企業との競合を避けながら受注のチャンスを広げられるメリットがあります。
まずは自社の所在する自治体の公式サイトを確認しましょう。入札・契約情報や事業者向けページに必要な制度や手続きが掲載されています。
登録の手間はかかりますが、その効果は大きく、安定した受注の基盤づくりにつながります。
信頼構築と丁寧な対応を心がけて選ばれる企業になる
少額随意契約は、価格だけでなく、安心して任せられるかどうかが大きな判断基準になります。基本的な対応を確実に徹底することで、「次回もお願いしたい」と思われる企業になれるでしょう。
信頼を得るために重要なポイントは、下記のとおりです。
- 仕様どおりに納品する
- 書類を正確に整える
- 納期を必ず守る
自治体の担当者は手間のかからない会社を高く評価します。多少価格が高くても、安心して任せられると判断されれば選ばれる可能性があります。
一つひとつの契約を単発の売上ではなく、信頼を積み上げる機会と捉えることが、継続的な受注や紹介の拡大につながるポイントです。
一般競争入札案件の減少傾向にも注視しておく
基準額の引き上げにより、少額随意契約の対象が拡大する一方で、従来の一般競争入札は減少傾向にあります。基準額が上がるとその金額以下は入札義務がなくなり、見積合わせ方式へと移行するためです。
その結果、以前は入札公告で公開されていた案件が、見積案件に切り替わり、入札情報サイトに掲載されないケースも増えています。
この変化に対応するには、入札依存型の営業から、少額随意契約を前提とした取り組みにシフトする必要があります。具体的には、下記の対応が有効です。
- 少額随意契約を前提とした営業フローを整備する
- 見積作成のスピードと正確さを高める
- 契約金額帯ごとに重点領域を整理する
- 誰でも対応できるよう社内マニュアルを用意する
こうした戦略転換により、安定した案件獲得につながります。制度改正をリスクではなく新しい市場への入り口と捉え、いち早く対応することが成長のカギとなります。
まとめ:制度を理解して、案件獲得に一歩踏み出そう
少額随意契約は、基準額の引き上げで対象案件が拡大したことで、中小企業や地域事業者に大きな受注チャンスが広がっています。ただし、透明性や公平性の確保といった課題もあるため、制度の仕組みを正しく理解し、情報収集や見積対応を整えることが欠かせません。自社に合った取り組み方を整理することで、安定した案件獲得につながります。
具体的な進め方に迷う場合は、入札アカデミーの無料相談を活用するのがおすすめです。入札に関心はあるけれど何からはじめればよいかわからない方、自社が参入できる案件を知りたい方など、幅広い悩みに対応しています。
すでに、3,000社以上が相談を活用して成果を上げているのが強みです。入札を新たな販路拡大の手段として検討している方は、この機会に無料相談を利用してみてください。
入札アカデミー(運営:株式会社うるる)では、入札案件への参加数を増やしていきたい企業様向けの無料相談を承っております。
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