入札談合とは、国や地方公共団体などが行う入札において、入札に参加する企業同士が事前に相談し、落札価格や受注業者を決める行為のことです。
公正な競争の妨げになり、税金の無駄遣いにもつながるため、刑法や独占禁止法で厳しく規制されています。
本記事では、入札談合の禁止理由やカルテルとの違いをわかりやすく解説します。さらに、後半では適正に入札を進めたい方に向けて、無料で相談できる窓口もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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入札談合は違法行為にあたる
入札談合とは、特定の事業者が有利になるよう事前に取り決めを行い、公正な競争を妨げる悪質な違法行為のことです。
公共工事や業務委託の入札では、複数の企業が競争することで、品質とコストのバランスが取れた適正な契約が成立するのが本来の形です。
しかし、談合が行われると企業間の競争は表面的なものとなり、事前に決められた企業が高額な契約を結ぶことにつながります。
その影響として、発注機関である国や地方公共団体は、競争原理によるコスト削減の恩恵を受けられず、通常よりも高い金額で契約せざるを得ません。
本来であれば、適正な入札を通じて同じ品質の工事やサービスを低価格で発注できた可能性があります。そのため、談合は法律によって厳しく禁止されているのです。
また、公共工事や業務委託の費用は、税金で賄われています。談合による価格のつり上げは、直接的に国民の負担に直結します。ほかの公共サービスへ充てられるはずの税金が、無駄に消費されることになるため、国や自治体の財政にも悪影響を及ぼすでしょう。
参考:公正取引委員会|独占禁止法が規制する行為 不当な取引制限(入札談合)
入札談合は刑法・独占禁止法で規制されている
入札談合は、単なるルール違反ではなく、刑法および独占禁止法で明確に禁止されている行為です。
独占禁止法第2条第6項では、不当な取引制限に該当すると規定されています。また、刑法では「談合罪」として罰則が設けられています。
法律で規制されている背景には、競争を阻害し、税金を不当に浪費させる重大な問題があるためです。違反した場合は、企業や個人に厳しい処罰が下されます。
参考:e-Gov 法令検索|刑法公正取引委員会事務総局「入札談合の防止にむけて」令和4年10月版(13p)
官製談合とは
官製談合とは、公務員が関与して行われる談合のことを指します。具体的には、発注機関である国や地方公共団体の職員が、特定の企業に有利になる情報を提供し、入札の公平性を損なう行為のことです。
たとえば、発注機関の職員が予定価格や他社の入札額を事前に特定の企業に漏らし、落札しやすい状況を作るケースが挙げられます。公務員という立場を悪用した不正行為であり、通常の談合よりも社会的な影響が大きいため、より厳しい罰則が科されます。
公正な競争を維持するには、官製談合の防止と厳格な監視体制の強化が求められるでしょう。2003年から「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律(官製談合防止法)」が施行され、発注機関の関与を防ぐための制度が整えられました。
入札妨害・カルテル(企業連合)との違い
入札談合と似た概念として、入札妨害やカルテル(企業連合)がありますが、それぞれ異なる性質を持つ違法行為です。
入札妨害とは、競争相手の事業者が入札に参加できないように妨げる行為を指します。談合は、企業同士の合意によって競争を制限するのに対し、入札妨害は「競争相手を排除する」ことを目的としている点が特徴です。
具体的には、競争相手に対し、入札を辞退するように脅迫や圧力をかけたり、嫌がらせ行為を行ったりするケースが挙げられます。
一方、カルテルは、同業者同士が価格や生産量などの取引条件を協議し、競争を制限する行為のことです。入札談合は特定の入札案件に関して行われるのに対し、カルテルは市場全体に影響を及ぼす点に違いがあります。
たとえば、業界内で価格を統一することで競争を排除し、市場を独占的に支配しようとするケースが該当します。
上記の行為は、いずれも公正な競争を妨げる行為です。しかし、それぞれの違反行為には、影響範囲や目的に違いがあります。企業は適正な環境を維持し、法令を遵守する意識を持つことが大切です。
入札談合によって科される罰則
入札談合に関与すると、刑法や独占禁止法にもとづき、個人・企業ともに厳しい罰則が科されます。単なる社内ルール違反ではなく、刑事罰や経済制裁が伴うため、非常に重い責任を負うことになるのです。
- 刑法
- 独占禁止法
- 公務員が談合した際の罰則
以下では、具体的な罰則内容について詳しく説明します。
刑法
入札談合は「談合罪」に該当し、3年以下の懲役または250万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。有罪となれば、刑事罰とは別に行政処分として指名停止措置も下されることが一般的です。
談合罪で有罪となった場合は、刑罰とは別に行政処分(指名停止)も下されることが一般的です。指名停止になると、一定期間公共工事の入札に参加できなくなるため、経営上大きなダメージとなるでしょう。
また、相手を脅迫して談合を強要した場合は「公契約関係競売等妨害罪」が成立し、談合罪と同様に以下の罰則が科されます。
- 3年以下の懲役
- 250万円以下の罰金
- または、その両方
強引に談合へ引き込もうとしたり、他社に入札参加を断念させたりする行為は、より悪質と判断される傾向があります。
独占禁止法
独占禁止法第3条では、事業者が価格や取引条件を話し合い、競争を制限する行為(不当な取引制限)を禁止しています。不当な取引制限と判断される要件は、下記の通りです。
- 共同して事業活動を拘束する行為であること
- 公共の利益に反すること
- 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること
参考:公正取引委員会|私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)
これら3つに該当すれば、談合は違法と判断され、以下の刑罰が科される可能性があります。
- 5年以下の懲役または500万円以下の罰金
- 法人に対して、5億円以下の罰金
参考:公正取引委員会|私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(第89条・第95条)
法人に対する罰金は非常に重く、事業活動に大きな支障を与えるでしょう。事業者は談合のリスクを十分に理解し、法令を遵守する必要があります。
公務員が談合した際の罰則
公務員が入札談合に関与すると、官製談合として、さらに重い罰則が科される可能性が高いです。官製談合は、公務員が職務上の立場を利用し、特定の事業者に便宜を図る行為であり、公正な入札制度を根本から揺るがす重大な違法行為です。
違法行為に該当する公務員に対しては、以下の刑罰が定められています。
- 5年以下の懲役
- 250万円以下の罰金
参考:入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(平成十四年法律第百一号)
たとえば、自治体の職員が特定業者に「この金額で入札すれば落札できる」といった情報を漏らし、その業者が実際に落札するケースが挙げられます。
また、公正取引委員会は、官製談合があった際に、発注機関に対し改善措置を求めることが可能です。このような事態が発覚すれば、当該自治体は社会的な信用を失い、厳しい批判を受けることになるでしょう。
入札談合によって科される措置
入札談合が発覚すると、刑事罰や罰金だけでなく、行政処分や経済的制裁といった「措置」も科されます。これらは、違反企業に対して不正行為を正し、再発防止を促すために行われるものです。
- 排除措置命令
- 課徴金納付命令
- 損害賠償請求
ここでは、それぞれの措置内容について詳しく解説します。
排除措置命令
排除措置命令とは、公正取引委員会が「独占禁止法第7条第1項」にもとづいて行う行政処分です。
談合が認定されると、違反企業に対して不正行為を速やかに止めるように命令が出されます。
この措置は、談合を止める指示にとどまらず、再発防止に向けた具体的な改善策を講じることも求められます。具体的には、社内の入札手続きの見直しや、再発防止に向けたコンプライアンス体制の強化などです。
命令に従わない場合は、さらなる行政指導や罰則が科されることもあります。企業は社会的信用を回復するためにも、命令にもとづいた適切な対応が欠かせません。
参考:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)
課徴金納付命令
課徴金納付命令は、独占禁止法第7条の2にもとづき、不当な取引制限を行った企業に対して経済的制裁を課す制度です。
課徴金は、違法行為によって得た利益を取り戻し、不正を抑止することを目的としています。
独占禁止法に定められた、一定の算式にしたがって計算された金額を課徴金として、国庫に納める必要があります。課徴金の支払いは、企業の経営に大きな打撃を与えるでしょう。
また、課徴金納付命令が公表されると、社会的信用の失墜や取引先からの契約解除など、経済面以外でも深刻な影響を受けます。
参考:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)
損害賠償請求
談合で被害にあった発注機関や競争事業者は、「独占禁止法第25条」にもとづき、違反企業に対して損害賠償請求ができます。
たとえば、談合によって相場より高い金額で契約を結ばされ、本来なら安く済んだはずの税金が無駄に使われた場合は、その差額分を請求可能です。
賠償請求では、違反企業に過失があったかは問われず、談合が事実であれば損害額に応じた賠償責任が発生します。
裁判となれば、多額の賠償金を支払う可能性があります。さらに、報道などで違反企業として世間に知られてしまうでしょう。
参考:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)
入札談合を防止するためには?
入札談合を防ぐためには、企業が積極的に対策を講じ、社員全員が違法行為に関わらない意識をもつことが重要です。具体的な防止策は、下記のとおりです。
- 入札談合に加担しないようにルールを設ける
- 徹底したコンプライアンス教育を行う
- 社内の監査体制を強化する
- もし入札談合に関わってしまったら冷静に対応しよう
詳しく解説します。
入札談合に加担しないようにルールを設ける
談合を防ぐためには、企業内で明確なルールを定め、全社員がそのルールを遵守する体制作りが大切です。具体的には、下記の規定を設けることをおすすめします。
- 事前の打ち合わせや競合他社との情報共有を厳しく制限する
- すべての入札案件について、適切な経緯を文書化し、社内で共有する
- 違反した場合の社内処分を明確化する
社内ルールを整備し、経営層から現場社員まで一貫した姿勢で取り組むことが、談合防止につながります。
徹底したコンプライアンス教育を行う
談合を防止するためには、社員全員が談合のリスクを理解し、違法行為に関与しないようにする必要があります。下記のように、コンプライアンス教育を実施しましょう。
- 独占禁止法や刑法にもとづく罰則の説明
- 企業に及ぼす影響の説明
- 実際の事例を交えた研修の実施
このような教育は一度きりではなく、定期的に繰り返すことで、社員の意識定着を図れます。
社内の監査体制を強化する
談合リスクを未然に防ぐには、社内監査体制を強化する方法が効果的です。
具体的な方法は、下記のとおりです。
- 内部監査部門の設置と強化
- 匿名通報制度の導入
- 第三者監査の実施
監査体制を強化することで、企業内での不正行為を抑止し、透明性の高い経営を実現できるでしょう。
もし入札談合に関わってしまったら冷静に対応しよう
万が一、意図せず談合に関与してしまった場合は、速やかに適切な行動を取ることが重要です。
まず、会社内に設けられている内部通報窓口に報告し、事実関係を共有しましょう。
同時に、弁護士に相談して、法的アドバイスを受けるのも効果的です。談合の疑いがかかると、捜査機関による強制捜査が入る可能性があり、関係資料の押収も考えられます。
その際、証拠隠滅に手を貸してしまうと、さらに重い罪に問われかねません。最悪の場合、会社ぐるみで関与を疑われ、証拠隠滅罪や刑事訴追を受ける可能性があります。
社員から証拠隠滅を依頼されても応じずに、法令順守を徹底する姿勢を貫くことが大切です。このような事態に冷静に対応するためにも、普段からコンプライアンス教育の徹底を心がけましょう。
談合の事例紹介
実際に過去に発覚した談合事件を知ることで、談合がどのように行われ、どのような結果を招くのか理解しやすくなります。
- 五輪談合事件
- 橋梁談合事件
上記の事件について、詳しく解説します。
五輪談合事件
五輪談合事件は、記憶に新しい事例です。東京オリンピック・パラリンピックの運営業務を巡り、大手広告代理店やイベント運営会社など7社が談合を行っていたことが発覚した事件です。
2018年2月から7月にかけて、組織委員会が発注するテストイベントの業務委託契約について、受注企業を事前に決定し、競争が行われないように調整していました。
この行為は、独占禁止法に違反する「不当な取引制限」に該当します。そのため、公正取引委員会は、関係企業6社と関係者7名を検事総長に告発しました。
結果として、関与した企業には課徴金納付命令が下され、一部の企業や関係者は刑事責任を問われています。
本来、公平であるべき国際イベントの運営で不正が行われたことで、社会的な信用が大きく揺らぐ事態となった事件です。
参考:公正取引委員会
橋梁談合事件
橋梁談合事件は、日本道路公団が発注した鋼橋上部工工事の入札において、橋梁メーカーが談合を行っていた問題です。
2004年10月、公正取引委員会が立入調査を実施し、翌年6月に独占禁止法違反の疑いで刑事告発されました。
そのあとの調査で、メーカー関係者が事前に落札予定者を決定し、公団の役員が工事を分割発注する形で談合を幇助していたことが判明しています。さらに、公団の副総裁や理事らが、背任罪の容疑で逮捕・起訴される事態となりました。
これを受け、公正取引委員会は公団に対し、官製談合の排除を目的とした改善措置を求めています。本事件は、民間企業だけでなく発注機関の関与があった点で社会的影響が大きく、公正な入札制度の重要性をあらためて浮き彫りにしました。
談合のリスクを正しく理解し、公正な入札を目指そう
入札談合は、公正な競争を阻害し、税金を無駄にする重大な違法行為です。発覚すれば厳しい罰則や処分を受け、企業経営に深刻な影響を与えます。
このような入札談合による違法行為を防ぐためには、社員教育や監査体制を強化する必要があります。
入札を正しく行いたいけど、自信がない方は「入札アカデミー」に相談してみるのがおすすめです。専門家が無料でアドバイスを行っているため、適正な入札に役立つ情報を得られます。
ぜひ活用して、公正な事業活動を実現しましょう。
入札アカデミー(運営:株式会社うるる)では、入札案件への参加数を増やしていきたい企業様向けの無料相談を承っております。
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