地方自治体という名称はよく耳にしますが、具体的にどのような組織のことを指すのか把握しきれていない方も多いのではないでしょうか。業務で自治体と関わる機会がある方は、制度や役割を正しく把握することで、スムーズな対応が可能になります。
本記事では、地方自治体の定義や種類、役割などをわかりやすく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
地方自治体とは?
地方自治体・自治体とは、都道府県や市区町村などの地域を単位として設置された公的な団体です。それぞれが独立した行政の主体となり、住民の意思にもとづいて地域を運営しています。
下記のように、日常生活に直結するさまざまな公共サービスを実施しています。
- 道路の整備
- 教育・福祉サービスの提供
- 防災対応
主な目的は、地域住民の生活の質を高めることです。
地方公共団体との違いや、制度について詳しく見ていきましょう。
地方自治体と地方公共団体の違い
地方自治体と地方公共団体は、呼び方が異なるのみで同じもののことを指します。
- 地方公共団体(地公体):法律や憲法上の正式な呼称
- 地方自治体(自治体):一般的な通称
地方自治体という呼び名が生まれた背景には、地方自治法の影響もあります。法律上は、地方自治体とは呼ばないため、正式な場面では地方公共団体を使うとよいでしょう。
制度の歴史と成り立ち
日本の地方自治制度は、明治維新を契機に制度整備が進められました。初期の基礎は、慶応4年(1868年)に明治政府が発表した統治基本方針「政体書」に示されています。政体書では、中央政府の構造とともに、地方行政のあり方にも一定の方向性が示されました。
その後、1888年に公布された「市制」「町村制」により、現在の市町村制度の原型となる近代的な地方制度が確立され、1889年から本格的に施行されました。さらに1890年には「府県制」や「郡制」も導入され、二層構造の地方自治体が形成されていきます。
現在の地方自治制度は、第二次世界大戦後の昭和22年(1947年)に制定された地方自治法と、日本国憲法第8章の規定にあります。これにより、住民の意思を反映した自治の仕組みが明確に制度化され、住民自治・団体自治の原則に基づく地方行政がはじまりました。
憲法・地方自治法における法的位置づけ
地方自治体は、憲法第8章において「地方自治の本旨」にもとづく運営が保障されています。この理念は、下記2つの原則に整理されているのが特徴です。
- 住民自治:地域の政治を住民の意思で決定(例:首長や議員の直接選挙)
- 団体自治:国から独立し、自らの判断で行政を実施(例:条例の制定)
また、憲法第92条では、地方自治制度の基本原則に沿った法律の制定が求められており、それにもとづいて地方自治法が存在します。
一方で、現在の自治体運営には、国からの交付金や制度支援と引き換えに、国の方針に沿った施策を求められる「誘導された自治」の傾向も見られる状況です。これにより、地方の独自性が制約される懸念もあります。
地方自治体は、自主性と創意工夫をもって地域課題に対応しながら、国と適切に連携し、住民福祉の向上を最優先に据えた運営が求められます。
参考
e-Gov 法令検索|地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)
地方自治体の種類・構造
ここでは、地方自治体の種類・構造を解説します。
- 日本の地方自治は都道府県と市町村の2層構造
- 普通地方公共団体
- 特別地方公共団体
自治体制度の全体像を理解する手がかりとして、参考にしてください。
日本の地方自治は都道府県と市町村の2層構造
日本の地方自治制度は、都道府県と市町村の2つの層で構成されています。この仕組みは「二層構造」と呼ばれ、それぞれが独立した行政主体として、地域住民に公共サービスを提供しています。
自治体区分 | 主な役割 |
都道府県 | 広域的な行政を担当 |
市町村 | 住民の日常生活に密着した行政を提供 |
これらの自治体は、憲法および地方自治法にもとづき、条例の制定権や予算の編成・執行権限を有しています。
また、住民による直接選挙で選ばれた首長と議会が組織を担い、民主的な仕組みのもとで運営されている点も特徴です。
普通地方公共団体
普通地方公共団体とは、一般的な自治体のことです。日本国内に設置されている、半数以上の自治体がこちらに分類されます。
普通地方公共団体の中から、さらに市町村の3つに分かれるのが特徴です。市町村は人口規模を基準としており、その地域に住む人の数によって区別されています。
区分 | 条件 |
市 | 人口5万人以上の都市 |
中核市 | 人口20万人以上 市の申し出により政令指定される都市 |
施行時特例市 | 過去に指定された特例市 ※2015年4月1日に特例市制度は廃止されたが、現在も23市が指定されている |
政令指定都市 | 人口50万人以上 市の申し出により政令指定される都市 |
このように、自治体の規模や役割に応じて権限や行政機能に違いがあります。
特別地方公共団体
特別地方公共団体とは、一部の地域のみに設置された特定の目的をもつ自治体のことです。特別地方公共団体のもつ目的は、主に下記3つのいずれかになります。
- 特別区
- 財産区
- 地方開発事業団
それぞれの特徴を順番に解説していくので、ぜひご確認ください。
特別区|東京都23区
特別区とは、東京都23区のことを指します。一般的な地方自治体とほとんど体制は変わりませんが、大都市の統一性を保つという意味で導入されているのが特徴です。
一般的な普通地方公共団体と同じく、区議会・区長・助役・収入役などがあります。
財産区|財産を管理する地域
財産区とは、その地域特有の財産や公共施設などがある場合、その場所を管理するために設置される特別地方公共団体のことを指します。
地域の財産の具体例は、下記のとおりです。
- 山や森
- 土地
- 温泉
- 墓地
財産区は日本国内におよそ4,000地域ほどが存在しており、大阪府や兵庫県に多い傾向があります。
地方開発事業団|地域の発展に貢献
地方開発事業団は、地域の発展を目的とし、地域全体の開発計画にもとづいて公共事業を実施するために設置されるものです。
とくに設備が整えられていない地域では、町全体をあげて大規模な工事を実施する必要があります。具体的には、水道事業やごみ処理事業などです。
しかし地方開発事業団は、長い間設立の事例がありません。以前は、いくつかの普通地方公共団体が協力しながら設置されていました。しかし、2022年(令和4年)3月31日に、最後のひとつであった青森県新産業都市建設事業団が解散したため、現在では完全に廃止されています。
地方自治体の役割と主な業務
地方自治体は各地域に設置されていますが、一体どのような役割があるのか、イメージしにくい方も多いでしょう。
ここでは、地方自治体の役割について下記の5つを詳しく紹介します。
- 住民の生活をサポートする
- 地域の経済状況を把握する
- 地域資源を再評価する
- 自治体によっては観光業を実施する
- 住民からの多様な意見を反映する
地方自治体の担う業務はどの範囲までなのか、しっかり把握できると安心です。
住民の生活をサポートする
地方自治体の基本的な役割は、住民の生活をサポートすることです。
たとえば、以下のような業務を担っています。
- 対象地域でそのままにされている空き家を活用する
- 近隣の小中学校、高校の統廃合を見直す
- 保育所や医療機関の設置・運営
- 小中学校の統廃合の見直し
- 介護職員の労働環境改善や人材確保
- 事業者の報酬の見直し
地域住民が少しでも暮らしやすく、働きやすくなるようにサポートするのが、地方自治体の役割です。
地域の経済状況を把握する
地方自治体には、地域住民の経済状況がどのようになっているか、生活に困っていないかなどを把握する役割があります。
具体的な取り組みは、下記のとおりです。
- 若年層の都市部流出を防ぐための雇用創出
- 地元企業への支援制度や助成金の整備
- 起業支援・地域産業の育成
雇用が増加すれば、地域の人口減少を予防することにもつながるため、結果として税収が増加する場合もあるでしょう。多くの資金を集めて、地域住民の暮らしに還元できるようにするのが、地方自治体の役目です。
地域資源を再評価する
それぞれの地域がもつ資源を再評価し、どのように価値を高めていくのかを考えるのも、地方自治体の役割になります。
具体的な取り組みは、下記のとおりです。
- 歴史的建造物の保存と観光資源化
- 里山や温泉などの自然資源の保全と活用
- 地域ブランドの創出や特産品の振興
地域の魅力を再発見し、まちづくりや観光政策へとつなげていきます。
自治体によっては観光業を実施する
地域によっては、観光産業や文化イベントの企画・運営も地方自治体の重要な役割です。
主な取り組みは、下記のとおりです。
- 観光資源を活かした集客施策
- 伝統文化の継承とプロモーション
- スポーツ・芸術イベントの開催支援
観光によって他の地域からの集客ができれば、地域の活性化にもつながるでしょう。
住民からの多様な意見を反映する
住民からの声を聞き逃さずに、きちんと事業に反映させていくのは、地域を発展させるうえで大切なポイントになります。
とくに社会的に弱い立場にいる人たちや、少数派の意見をもつ人たちにも配慮し、なるべく多くの意見が実現化されるような仕組みづくりが必要になるでしょう。小さな声を拾えるような体制を整えるのが、地方自治体の重要な課題です。
地方自治体の仕事は、住民と手を取り合いながら地域の発展を目指すことが最大の任務といえます。
地方自治体の制度と仕組み
地方自治体は、住民にもっとも身近な行政機関として、地域の課題解決やサービス提供を担っています。ここでは、地方自治体の運営に関わる基本的な制度や仕組みについて、解説します。
- 首長と議会による二元代表制
- 条例制定から予算執行までの行政手続き
- 監査委員・選管など独立機関の役割
- 公務員と自治体職員の役割・業務
詳しく見ていきましょう。
首長と議会による二元代表制
地方自治体では、住民が首長と議会をそれぞれ直接選挙で選ぶ「二元代表制」が採用されています。この制度では、首長が予算案や条例案の提出・執行を担い、議会はそれらを審議・議決し、行政を監視する役割を担います。
本来は、執行機関と議決機関が互いに抑制と均衡を図ることで、健全な自治体運営を目指す仕組みです。しかし実際の運用においては、下記のような課題が指摘されています。
現象の名称 | 特徴・問題点 |
なれあい議会 | 首長の提案をほぼ無批判・形式的に可決し、議会としての審議機能が形骸化する |
反対議会 | 改革的な提案に対して、議会の多数派が一律に反対し、議論が深まらない |
庄屋型議員 | 地域要望や陳情への対応を優先しすぎて、広い視点での政策立案に積極的でない姿勢が目立つ |
こうした状況が続くと、議会が本来果たすべき役割を十分に果たせなくなり、「形だけの存在」になってしまうおそれがあります。これを防ぐためには、議会を支える事務局の体制を強化し、議員自身がしっかりと政策を考える力を身につけることが大切です。
あわせて、市民が傍聴や意見提出を通じて議会に関わりやすくなる仕組みを整えることで、より健全な自治体運営につながります。
条例制定から予算執行までの行政手続き
地方自治体の政策は、条例の制定と予算の編成という手続きを通じて実現されます。どちらも首長の提案と議会の議決を経て成立します。主な流れは下記のとおりです。
手続き | 流れ |
予算編成 | 1.部局要求 2.財政課査定 3.首長決定 4.議会審議(5月〜翌年3月) |
条例制定 | 首長の提案、または住民の直接請求(有権者の50分の1以上の署名が必要) |
これらを理解することで、自治体職員は円滑な政策立案が可能です。市民や事業者も、適切な時期に意見表明や提案を行いやすくなります。
監査委員・選管など独立機関の役割
地方自治体には、政治的中立性や専門性が求められる分野において、首長の指揮監督から独立した機関が設置されています。主な独立機関は、下記のとおりです。
- 教育委員会:学校教育・社会教育を所管
- 選挙管理委員会:選挙事務の管理
- 公安委員会(都道府県):警察業務の管理
- 監査委員:財務・業務の監査、結果の公表
これらの機関により、行政の公正性・透明性が確保されます。職員はそれぞれの機能を理解し、市民に対しても信頼性の高いサービス提供に努める必要があります。
公務員と自治体職員の役割・業務
地方自治体で働く職員は、住民の暮らしに密接に関わるサービスの提供を担う公務員です。行政の最前線で多様な業務を遂行する一方で、現代社会の変化に伴い、さまざまな課題にも直面しています。
現在、自治体現場では、下記のような変化が進んでいます。
- 民間委託や非正規職員の増加
- 若手職員の育成が困難に
- 業務のデジタル化と専門化の進行
これらの状況に対応するには、職員一人ひとりの継続的な学びと、自治体全体での人材確保・働きやすい職場づくりが求められるでしょう。
地方自治体の機関と組織
地方自治体には「議決機関」と「執行機関」の主要な機関に加え、専門分野を扱う独立機関があります。議決機関は議会、執行機関は首長を指します。首長は、都道府県知事や市区町村長のことです。
ここでは、地方自治体の組織構造について詳しく解説します。
- 議決機関|都道府県議会・市区町村議会
- 執行機関|都道府県知事・市区町村長
- その他の独立機関
ぜひ知識として身につけておくとよいでしょう。
1.議決機関|都道府県議会・市区町村議会
議決機関とは、条例の制定や予算の承認などを行う機関で、各自治体において「議会」がこれに該当します。
議会は住民の代表である議員によって構成され、地域の課題や政策について話し合い、意思決定を行います。議会は「二元代表制」にもとづき、住民による直接選挙で選ばれた議員が参加するのが特徴です。
2.執行機関|都道府県知事・市区町村長
地方自治体の機関の2つ目は、執行機関の首長です。首長とは、都道府県知事や市区町村長のことで、執行機関として重要な決定に携わります。
たとえば、政策の実行や予算の執行を担当するのが、この首長です。議会と同じく「二元代表制」にもとづき、住民によって直接選挙で選ばれます。
一般的な国会のシステムは、住民の選挙で選ばれた議員の中から、国会が内閣総理大臣を指名する「議院内閣制」を取っています。これに対し、地方自治体では首長と議会議員を住民の投票で直接決める二元代表制が基本です。
3.その他の独立機関
地方自治体には、議会や首長のほかにも特定の分野を専門的に扱う独立機関が存在します。代表的なものとして、下記のような機関があります。
- 教育委員会
- 選挙管理委員会
- 人事委員会
- 監査委員
- 公平委員会
独立機関の分野は教育や警察、消防、福祉など多岐にわたるでしょう。専門家たちが集まり、地方自治体をサポートすることで、住民の満足度を高める役割を担っています。
国と地方自治体の関係
国と地方自治体は、それぞれの役割をもちながら、連携・補完関係のもとで公共サービスの提供を担っています。主な関係要素は、下記のとおりです。
- 国と地方の役割分担と連携体制
- 法律と条例の違い・適用範囲
- 国税・地方税・交付税制度の仕組み
それぞれ詳しく見ていきましょう。
国と地方自治体の役割分担と連携体制
国と地方自治体の役割は、補完性の原則(地方自治法第1条の2)にもとづいて整理されています。基本的には、日常的な行政は市町村、広域的な業務は都道府県、国家的な事務は国が担当します。それぞれの主な役割は、下記のとおりです。
- 市町村:住民登録、ごみ処理、小中学校の運営など
- 都道府県:道路・河川管理、高等学校の運営、産業振興など
- 国:外交・防衛、全国一律の制度設計など
一方で、近年は「デジタル田園都市国家構想」のように、国の方針を地方に浸透させる誘導された自治も進んでいます。2024年の地方自治法改正では、国による指示権も拡大され、災害や非常時における連携体制の強化が求められています。
法律と条例の違い・適用範囲
法律は国会が制定し、全国に適用されるルールです。一方、条例は自治体が地域の実情に応じて制定するローカルルールであり、法律の範囲内で定めることが原則です(地方自治法第14条)。代表的な法律と条例の例は下記のとおりです。
- 法律の例:地方自治法・教育基本法・地方公務員法
- 条例の例:景観条例・環境保護条例・子育て支援条例
また、条例は自治体の首長だけでなく、有権者の50分の1以上の署名を集めれば、住民が直接議会に制定・改廃を請求できます(地方自治法第74条)。地域の特性に応じた制度づくりには、条例の活用が不可欠です。
参考:e-Gov 法令検索|地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)
国税・地方税・交付税制度の仕組み
日本の税制は、課税主体に応じて国税と地方税に分かれています。また、地方の財政格差を調整するために、地方交付税制度が設けられています。代表的な税の区分は、下記のとおりです。
- 国税:所得税・法人税・消費税
- 地方税:住民税・固定資産税・地方消費税
地方交付税は、税収の少ない自治体にも一定の財源を保障する仕組みです。東京都と23区の間では、都区財政調整制度も運用されています。
さらに、政策目的に応じた交付金制度もあり、地方自治体は国の交付基準を踏まえて、計画的な財政運営を行うことが重要です。
地方自治体への入札・事業提案の進め方
地方自治体と取引を行うには、入札制度の理解と的確な情報収集、丁寧な準備が欠かせません。ここでは、入札・事業提案に必要な基本知識と手順を解説します。
- 自治体入札の主な種類
- 自治体に提案できる事業
- 自治体入札情報の調べ方
- 入札の基本的な流れ
- PPP・PFIなど官民連携の活用
それぞれチェックしていきましょう。
自治体入札の主な種類
地方自治体が民間事業者と契約を締結する際は、地方自治法や地方財政法にもとづいて、公正な競争を確保する制度が採用されています。代表的な方式は、下記のとおりです。
入札方式 | 特徴 |
一般競争入札 | ・参加制限なし ・価格重視で最安値が基本的に落札 |
指名競争入札 | ・自治体が選定した業者のみ参加可能 ・価格競争+一定の信頼関係あり |
随意契約 | ・特定の理由で1社と契約 (例:災害対応、技術的独占) |
プロポーザル方式(公募型企画提案) | ・提案の質や実現性を評価 ・技術力・実績・創意工夫が評価対象 |
各方式には向き不向きがあり、案件の性質によって求められるスキルや体制も異なります。参加を検討する際は、公告や要項、仕様書をよく読み込み、自社の強みが発揮できる形式かどうかを見極めることが重要です。
以下の記事では入札の基本情報をわかりやすく解説しています。理解を深めたい方は、あわせてご参考ください。
関連記事:入札とは?入札の基本情報・入札参加の流れをわかりやすく解説
自治体に提案できる事業
地方自治体への事業提案は、公共施設の整備・運営にとどまらず、地域課題の解決や住民サービスの向上を目的とした幅広い内容が対象となります。近年では、制度的にも民間からの柔軟な提案を受け入れる枠組みが整備されつつあります。
提案可能な主な事業は、下記のとおりです。
- 公共施設の管理・運営(指定管理者制度、コンセッション方式など)
- 地域活性化・観光振興・子育て支援・高齢者支援などの社会事業
- 空き家対策・再生可能エネルギー導入・地域のデジタル化支援
また、自治体によっては、提案型公共サービス制度や地域提案制度などの名称で、随時民間事業者からの提案を受け付ける制度を設けています。地域ニーズと行政課題の両面を把握し、具体性・実現性のある提案を行うことが、採択率を高めるコツです。
自治体入札情報の調べ方
自治体との取引を検討するうえで、入札情報の収集は重要です。地方自治体は情報公開が義務付けられており、公告・仕様書・落札結果などを公式サイトなどで公表しています。こうした情報の把握は、ビジネスチャンスの発見や競合分析にもつながります。
主な情報収集手段は、下記のとおりです。
種類 | 特徴 |
自治体の「入札・契約情報」ページ | 各自治体が公表する入札公告・仕様書・落札結果などを確認可能 |
業界団体や商工会議所のメルマガ・配信サービス | 特定業種・地域に特化した入札情報を定期的に配信 |
NJSS(入札情報速報サービス) | 全国の自治体・官公庁の入札案件を一括で検索できる便利なサービス |
「NJSS(入札情報速報サービス)」は、キーワードや地域、業種ごとに絞り込んで案件を効率的に探せるだけでなく、過去の落札実績をもとに競合他社の動向分析にも活用できます。自社に合う入札案件をスムーズに探したい方は、「NJSS」の無料検索機能をぜひお試しください。
入札の基本的な流れ
自治体との入札契約は、公告から契約締結までの明確な手順にしたがって進行します。各段階での対応ミスや期限超過は失格につながるため、事前の準備が重要です。
とくにプロポーザル方式では、提案の論理性や実現可能性が評価のカギとなるため、丁寧な計画と設計が求められます。
一般競争入札における基本的な流れは、下記のとおりです。
ステップ | 内容 |
1.入札参加資格を取得 | 事前に自治体へ資格申請し、審査を受ける |
2.入札情報をチェック | 案件を探し、公告を確認する |
3.仕様書を確認・説明会に参加 | 業務内容を理解し、準備する |
4.入札を行う | 電子・会場・郵送で入札を提出 |
5.契約を締結 | 落札後、契約書を作成し締結する |
とくに仕様書の読み取りは重要です。自治体の課題や方針が反映されているため、読み違えると的外れな提案になるおそれがあります。
提出前には、類似案件の実績や担当チームの構成を整理し、誤りのない提案書を仕上げることが成功への第一歩です。
以下の記事では、自治体入札の流れについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:【初心者向け】自治体入札の流れや種類を解説!入札のメリットとは?
PPP・PFIなど官民連携の活用
PPP・PFIは、民間の資金やノウハウを活用して公共サービスを提供する官民連携の代表的な手法です。財政負担の軽減やサービスの質向上、地域経済の活性化を図る仕組みとして活用が進んでいます。
近年では、施設整備にとどまらず、地域密着型の提案や、課題解決型の継続的な運営事業も重視される傾向にあります。主なスキームの種類は、下記のとおりです。
種類 | 特徴 |
BTO方式 | 民間が施設を建設後に公共側へ所有権を移転し、その後も民間が運営を継続 |
BOT方式 | 民間が建設・運営を行い、一定期間後に公共側へ所有権を移転 |
コンセッション方式 | 施設の所有は公共側に残し、運営権のみを民間に付与 |
参入には、自治体主催のセミナー参加や、地域企業・専門事業者とのコンソーシアム形成が効果的です。公共ニーズと民間提案をつなぐ工夫が成果の決め手となります。
まとめ:地方自治体の制度を正しく理解し、入札に活かそう
地方自治体とは、都道府県や市町村といった地域の行政を担う公共団体のことです。病院や介護施設、学校の適切な設置など、担当する仕事はさまざまです。
こうした制度や行政の動きを正しく把握することで、民間事業者にとっても新たなビジネス機会が見えてきます。自治体の課題に寄り添った提案ができれば、入札参加のチャンスを広げることにもつながるでしょう。
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