好評をいただいております自治体ビジネスのプロが教えるシリーズ、
今回は「自治体ビジネスを勝ち抜く!競争力向上の秘策とは?」をテーマに全4回に分けて解説します。
本記事を参考にして、自治体ビジネスの競争力を身につけ、ビジネスチャンスを掴みましょう。
自治体ビジネスを勝ち抜く!競争力向上の秘策とは?
第3回:国と自治体が力を入れる中小企業・小規模事業者の受注支援【本記事】 |
- 中小企業・小規模事業者は支援されている
- 中小事業者の受注機会を増やす10項目
- ① 中小企業・小規模事業者向け契約目標の見直し
- ② 新型コロナウイルス感染症関連の影響を受けている中小企業・小規模事業者に対する配慮に関する事項
- ③ 災害の被災地域等の中小企業・小規模事業者に対する配慮に関する事項
- ④ 事業継続力が認められる中小企業・小規模事業者に対する配慮に関する事項
- ⑤ 中小企業・小規模事業者が受注しやすい発注とする工夫に関する事項
- ⑥ ダンピング防止対策、適切な予定価格の作成等に関する事項
- ⑦ 中小企業・小規模事業者の特性を踏まえた配慮に関する事項
- ⑧ 新規中小企業者への配慮に関する事項
- ⑨ 地方公共団体と連携した働き方改革に対応する取り組み等に関する基本事項
- ⑩ 地方公共団体への協力依頼に関する事項
- これからの入札ルールの変化に注目しよう
中小企業・小規模事業者は支援されている
地方自治体の入札やプロポーザル。
「毎年多くの案件が発注されているけれど、ウチみたいな中小企業が落札できるものなのだろうか。」地方自治体の入札経験がない、あるいは経験が浅い会社にとって一番気になるところですね。
公共入札というと国か自治体かを問わず大手企業の独壇場で、小さい企業が参入するのは難しいのでは?こんな印象を持たれている中小企業経営者の方も多いのではないでしょうか。
実は、官公庁は多くの民間企業、とりわけ中小企業・零細企業に公共調達の分野に挑戦しやすくなるよう様々な取り組みをおこなっています。
中小事業者の受注機会を増やす10項目
「官公需についての中小事業者の受注の確保に関する法律」をご存知でしょうか。
2022年8月26日に、この法に基づく取り組み方針「令和4年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」が閣議決定されました。
この決定に基づき、特に地方自治体が留意すべき事項として10の項目が示されました。
中小企業・小規模事業者の受注機会を増やすことを目的としたこの項目、全てが地方自治体に対して求められている配慮事項です。
ここで概要をざっくりご案内します。
① 中小企業・小規模事業者向け契約目標の見直し
新規で官公庁と契約する中小企業の契約比率を国全体として3%以上を目指すことが示されています。
新規に参入したい中小企業にとっては嬉しい方向性ですね。
② 新型コロナウイルス感染症関連の影響を受けている中小企業・小規模事業者に対する配慮に関する事項
新型コロナ感染拡大で打撃を受けた中小企業・小規模事業者のために、仕事の納期や後期の柔軟な対応や代金の迅速な支払い、最近の実勢価格を踏まえた発注金額の決定や契約金額の変更、入札機会の確保を図ることとされています。
③ 災害の被災地域等の中小企業・小規模事業者に対する配慮に関する事項
災害被災地の中小企業への相談対応や納期・工期の配慮、迅速な支払いなど、予期せぬ事態に見舞われた場合への配慮をするよう求められています。
④ 事業継続力が認められる中小企業・小規模事業者に対する配慮に関する事項
事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業・小規模事業者は、今後の事業拡大が見込まれる優良企業。こうした事業者を積極的に後押しすることとされています。
⑤ 中小企業・小規模事業者が受注しやすい発注とする工夫に関する事項
予算規模の大きい仕事を一塊で発注すると、組織運営基盤が整った大手企業しか受注できない自体が生じます。こうした大きな仕事を分離・分割発注していくことで、中小企業・小規模事業者が受注し易くなります。
そのほか同一資格等級区分内の者による競争の確保など、発注の様々な工夫が求められています。
⑥ ダンピング防止対策、適切な予定価格の作成等に関する事項
契約の一部に過度な低価格競争が生じていることが問題になっています。
赤字分を別の事業で補填できる大企業は別として、価格競争は中小企業にとっては死活問題。
こうしたことを防止するために適切な予定価格の作成や低入札価格調査制度、最低制限価格制度の適切な運用などが求められています。
⑦ 中小企業・小規模事業者の特性を踏まえた配慮に関する事項
中小企業・小規模事業者は地域経済や雇用の重要な担い手。
入札における適切な地域要件の設定や総合評価落札方式における地域精通度などの適切な評価を組み入れて落札し易くすることとされています。
⑧ 新規中小企業者への配慮に関する事項
新規参入する中小企業者にとって高いハードルとなるのが業務実績。
この項目では、新規参入中小企業には過去の業務実績を過度に求めないことなどが示されています。
⑨ 地方公共団体と連携した働き方改革に対応する取り組み等に関する基本事項
発注時期が集中すると、人的リソースの少ない中小企業者にとっては残業が続き業務が適切に回せなくなってしまいます。
そこで発注時期の平準化などを含めて働き方改革に結びつくような発注に努めるべく、国と地方自治体とが連携することが求められています。
⑩ 地方公共団体への協力依頼に関する事項
国は上記の項目を地方自治体に要請し、協力依頼をかけていくことが盛り込まれています。
特筆すべきは上記項目の⑦の具体的な対応のひとつ、
「技術力のある中小企業・小規模事業者に対する受注の機会の増大」。
技術力のある中小企業・小規模事業者に対しては、技術力の正当な評価を踏まえ、入札参加資格の弾力化を一層進めるとされています。
規模の小さな企業は、技術力があったとしても入札参加資格を満たすことができず入札に参加できないことがよく起こります。
地方自治体がこうした点に配慮して入札参加資格や評価項目の対応に自由度を持たせてくれれば、地域企業がビジネスを伸ばせるだけではなく地元に高い技術を実装することに貢献でき、強い地域を官民一体となって作り上げる契機となるでしょう。
これからの入札ルールの変化に注目しよう
なお、総務省は、各都道府県の契約担当課・市町村課に対して都道府県内の市区町村に対しても周知するよう依頼を出しています。
今後、全国のすべての自治体がこの閣議決定に沿って対応を進めていくことになるでしょう。
民間ビジネスと比べて参入の手続きが面倒な印象がある自治体ビジネスですが、年々参入のハードルが低くなっています。
これを追い風と捉えて取り組んでみる価値は十分あると考えられます。
こうした国からの依頼は各自治体の入札・プロポーザルの予算執行や手順、入札ルールに反映されてくると考えられますので、あらためて日頃からお目当ての自治体の入札情報をまめにチェックするようにしておきましょう。
自治体ビジネスを勝ち抜く!競争力向上の秘策とは?
第3回:国と自治体が力を入れる中小企業・小規模事業者の受注支援【本記事】 |
この記事の執筆者
株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子 氏 慶應義塾大学文学部卒業後、総合コンサルティング会社入社。中央省庁、地方自治体の幅広い領域の官公庁業務の営業活動から受注後のプロジェクトマネジメントに携わる。 2013年2月、 (株)LGブレイクスルー創業。人脈や力学に頼らず、国や自治体からの案件の受注率を高める我が国唯一のメソッドを持ち、民間企業へのコンサルティング・研修事業を展開。著書に『地方自治体に営業に行こう!!』『民間企業が自治体から仕事を受注する方法』がある。 |