連携協定とは、地方自治体や企業が協力し、特定の課題解決や地域活性化を目的として結ぶ協定です。地域の課題は、地方自治体だけでは解決が難しいケースも多いのが現状になります。
しかし、民間企業や大学と連携をとることで、効果的な施策の展開が可能です。なお、連携協定には、さまざまな種類があり、それぞれ異なる目的や特徴があります。
本記事では、連携協定の特徴や、地方自治体と企業が協定を結ぶメリット・デメリットを解説します。記事後半では、連携協定と入札の関係性についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
入札アカデミー(運営:株式会社うるる)では、入札案件への参加数を増やしていきたい企業様向けの無料相談を承っております。
のべ3,000社以上のお客様に相談いただき、好評をいただいております。入札情報サービスNJSSを16年以上運営してきた経験から、入札案件への参加にあたってのアドバイスが可能です。
ご相談は無料となりますので、ぜひお問い合わせください。
連携協定とは?
連携協定とは、地方自治体や企業、団体などが特定の目的のもとで協力し、相互に支援や情報共有を行うために結ぶ協定のことです。おもに、下記の3種類に分けられます。
- 個別連携協定・事業連携協定
- 包括連携協定
- 災害等対応連携協定
それぞれ詳しく解説します。
個別連携協定・事業連携協定
個別連携協定とは、特定の課題に対し、地方自治体と企業・団体が連携する協定です。対象となるケースは、下記のとおりです。
- 災害時の支援
- 高齢者や子どもの見守り
- 食品ロス削減
一部の地方自治体では「事業連携協定」とも呼ばれています。特定の事業に関して民間企業と協力し、地域住民の利益につながる活動を推進するものです。
個別連携協定は、課題ごとに必要な民間のノウハウを取り入れられるのがメリットです。地方自治体のリソースが限られる中、企業と連携することで迅速かつ効果的な取り組みが可能になります。
参考:
羽村市|民間企業等との個別連携協定
青森県|包括連携協定・個別協定
岸和田市|企業等との包括連携協定、事業連携協定
包括連携協定
包括連携協定(ほうかつれんけいきょうてい)とは、地方自治体と民間企業・大学などが、特定の分野に限定せず、広範囲にわたる協力関係を築くための協定です。
事業者がそれぞれもつノウハウを生かし、地域が抱える課題を解決するのが目的としています。
単発の取り組みではなく、長期的な視点で地域課題の解決に向けて協力するのが特徴です。この協定では、下記の分野において、包括的な支援が行われます。
- 地域医療
- 防災対策
- 観光振興
- 子育て支援
- 環境保全
包括連携協定は、10年以上前から全国の地方自治体で導入が進んでおり、地域の持続可能な発展を支える重要な手段のひとつです。
地方自治体と企業が継続的に協力しながら、地域のニーズに応じた施策を柔軟に展開できるメリットがあります。
参考:
岸和田市|企業等との包括連携協定、事業連携協定
船橋市|包括連携協定
以下の記事では、自治体DXの基礎について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:知っておきたい『自治体DXの基礎』〜第2回:国も自治体もなぜ今自治体DXなのか?(前編)〜
災害等対応連携協定
災害等対応連携協定とは、地震や台風などの大規模災害が発生した際に、地方自治体と民間企業・団体が迅速に支援を行えるように結ぶ協定です。
被災地の負担を軽減し、必要な物資や支援を迅速に提供することを目的としています。
地方自治体が、単独で災害対応を行うには限界があります。そのため、ほかの地方自治体や企業との協力体制を整えることが大切です。
具体的なケースは、下記のとおりです。
- 食料や水・医療品の提供
- 避難所の管理支援
- 復旧作業の人員派遣
事前に民間企業やほかの自治体と協定を結んでおくことで、災害発生時に即座に支援が行えます。
災害等対応連携協定の大きな特徴は、緊急時の迅速な対応が可能になる点です。対象の市町村内で災害が発生した場合、被災市町村のみでは十分な応急措置が難しい場合があります。
その際に、協定に基づき迅速に対応し、被災者の安全確保や生活再建を支援します。
参考:
羽村市|民間企業等との災害等対応連携協定
富山県立山町|災害時連携協定
【種類別】連携協定の事例
連携協定は、目的や連携範囲によって、さまざまな種類に分類されます。ここでは、実際に締結された事例を紹介します。
それぞれの特徴や具体的な取り組みを詳しく解説していきますので、連携協定を活用する際の参考にしてください。
個別連携協定・事業連携協定の事例
令和5~6年に締結された代表的な事例は、下表のとおりです。
協定名 | 協定先 | 協定締結日 | 内容 |
岸和田市における食品ロス削減に向けた連携協定 | 株式会社コークッキング | 令和6年10月 | 岸和田市における食品ロスの削減および食品ロスの削減に対する市民意識の向上を図ることを目的とする |
ゼロカーボンシティの実現に関する連携協定 | 伊藤忠プランテック株式会社 | 令和6年3月 | 脱炭素に向けた取組や省エネルギーな暮らし・事業活動を進め、ゼロカーボンシティの実現に資することを目的とする |
羽村市高齢者・子どもの見守りに関する協定 | ・西武信用金庫羽村支店・小作支店 ・西多摩農業協同組合 中央労働金庫西多摩支店 ・多摩信用金庫羽村支店 ・青梅信用金庫羽村支店 ・山梨中央金庫羽村支店 |
令和5年3月 | 業務中に高齢者および子どもの異変に気が付いた場合には、業務に支障のない範囲で、市に情報提供を行う |
引用:
岸和田市|企業等との包括連携協定、事業連携協定
羽村市|民間企業等との個別連携協定
これらの事例からもわかるように、個別連携協定は地域の課題解決に向けて、具体的な取り組みを推進する重要な仕組みです。
今後も地方自治体と企業の協力を通じて、地域に貢献する実効性のある協定が広がることが期待されます。
包括連携協定の事例
包括連携協定では、以下のような事例が挙げられます。
協定名 | 協定先 | 協定締結日 | 内容 |
岸和田市と株式会社奥保険事務所との包括連携に関する協定 | 株式会社奥保険事務所 | 令和6年11月 | 互いの強みを生かし密接に連携・協力することにより、新たな需要を創造し、市民サービスの向上および市域の活性化を図ることを目的とする |
羽村市と大塚製薬株式会社との包括連携に関する協定 | 大塚製薬株式会社 | 令和5年4月 | 地域の活性化および市民サービスの向上を図ることを目的に、健康増進、食育推進、熱中症対策、災害時における被災者支援および応援協力等に関する事項について連携する |
関西大学と岸和田市との連携協力に関する協定 | 関西大学 | 令和5年2月 | 包括的な連携のもと相互に協力し、活力ある地域作りおよび大学の活性化に寄与することを目的とする |
引用:
岸和田市|企業等との包括連携協定、事業連携協定
羽村市|民間企業等との包括連携協定
包括連携協定は、地方自治体と企業・大学が互いに協力し、地域課題の解決や新たな価値の創出を目指すものです。
今後も幅広い分野での連携が進むことで、持続可能で魅力的な地域づくりが実現されていくでしょう。
災害等対応連携協定の事例
災害等対応連携協定の事例は、下表のとおりです。
協定名 | 協定先 | 協定締結日 | 内容 |
北海道胆振東部地震対応についての検証を踏まえた関係機関との連携 | 北海道・振興局・地方自治体 | 令和2年4月 | ・北海道・振興局・地方自治体との連絡体制の確立および相互連携 ・道路管理者との連絡体制の確立および相互連携 |
関西広域連合との大規模広域災害における連携・協力に関する協定 | ・西日本電信電話株式会社 ・関西電力株式会社 ・大阪ガス株式会社 |
令和2年3月 | 関西広域連合をはじめ構成団体の各府県・政令市とライフライン事業者が、平時からの情報共有と災害時の連携・協力に向けた体制を構築し、大規模広域災害におけるライフラインの早期復旧を目指す |
岐阜県との大規模災害時における相互連携に関する協定 | 中部電力株式会社 | 令和2年3月 | ・連絡体制の確立 ・県管理道路上の支障物(電力設備)除去の連携 ・電力復旧のための道路啓開の要請 ・電源車の配置先の協議 ・復旧作業のための活動・拠点の提供 県民への停電情報・復旧見通しの発信 ・重要施設情報の共有・自家発電設備等の設置促進 ・事前対策(事前伐採)の実施 ・訓練への積極的な協力 |
引用:連携事例集
災害等対応連携協定は、災害発生時の迅速な対応と復旧を目的として、地方自治体と企業・団体が協力する重要な枠組みです。
今後も、災害時のリスクを最小限に抑えるために、さらなる協定の拡充と実効性の向上が求められるでしょう。
連携協定におけるメリット
連携協定を結ぶことで、地域の課題解決や行政サービスの向上を実現できます。具体的なメリットは下記のとおりです。
メリット | 詳細 |
地域住民に最適な行政サービスを展開できる | 地方自治体単独では実施が難しい施策でも、企業のノウハウや技術を活用すれば、住民に利便性の高いサービスを提供できる 例:健康増進・子育て支援・環境保全など |
業務の効率化を図れる | 企業の専門知識やリソースの活用によって、地方自治体の業務負担を軽減し、迅速かつ的確な対応が可能になる 例:IT企業と連携することで行政のデジタル化が進み、窓口業務の効率化につながる |
災害時の復旧や復興が早まる | ・災害時の物資供給や人材派遣の協定を事前に結んでおくことで、緊急時の対応が迅速に行える ・地方自治体が単独で対応するより、企業やほかの地方自治体と連携すれば復旧作業がスムーズに進む |
連携協定は、地域の発展や住民サービスの向上に大きく貢献する制度です。
また、自治体ニーズについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
関連記事
自治体ニーズを先取り!効果的なアンケートで入札前に差をつける営業手法とは?
連携協定におけるデメリット
連携協定には多くのメリットがあります。
しかし、適切に運用しないと問題が発生する可能性もゼロではありません。
おもなデメリットは、下記のとおりです。
デメリット | 詳細 |
地方自治体と企業の意識にズレが生じるリスクがある | ・地方自治体は地域住民の利益を最優先する一方で、企業は事業の収益性を考慮する必要がある ・双方の目的が一致しない場合、効果的な協力体制を築くのが難しくなる |
協定の締結自体が目的化しやすくなる | 協定を締結しただけで満足し、具体的な事業が進まない可能性がある |
企業側の負担が大きくなることがある | ・連携協定には収益につながりにくいものも多くある ・企業にとって、人員やコストの負担が増えるリスクがある |
デメリットを防ぐためには、協定の目的や役割を明確にし、双方にとって継続可能な仕組みを構築することが大切です。
連携協定を結ぶ際の5つのポイント
連携協定を形だけのものにせず、実際に効果を発揮させるには、締結の段階で下記のポイントを押さえておきましょう。
- 目的を設定する
- 役割と責任を明確に決める
- 必要に応じて更新や見直しを行う
- 民間企業にも収益性があるプランを検討する
- 定期的に情報共有する
それぞれ詳しく解説しますので、スムーズかつ効果的な協定を実現したい方は、ぜひ参考にしてください。
1.目的を設定する
連携協定を結ぶ際には、明確な目的を設定しましょう。
目的が曖昧なままでは、方向性が定まらず、実施後の成果も不明確になります。
下記のように具体的なゴールを定め、関係者全員が共通認識を持てるようにしましょう。
- 地域の高齢者支援を強化する
- 環境保護の取り組みを推進する
また、目的は文書化し、協定の関係者全員が把握できるようにします。地方自治体総合計画や施策方針と照らしあわせながら、適切な目的を設定すれば、実効性の高い連携が実現できます。
2.役割と責任を明確に決める
協定を結ぶ際は、関係者ごとの役割と責任を明確にしましょう。役割分担が曖昧ですと、実施段階で混乱が生じ、進行が滞る可能性があります。
とくに地方自治体と企業の協力関係では、双方の強みを生かしながら適切な役割分担が求められます。責任者・担当部署・連絡窓口などを明記し、具体性のある協定書を作成しましょう。
取り決めを事前に行うことで、実施段階でのトラブルを最小限に抑え、スムーズな運用が可能になります。
3.必要に応じて更新や見直しを行う
連携協定は、一度締結すれば終わりではありません。状況の変化に応じて、更新や見直しを行うことが大切です。
協定の効果が十分に発揮されていない場合や、地域課題が変化した場合には、内容を調整する必要があります。
更新のタイミングの目安は、1~3年程度です。あらかじめ期限を決め、見直しの機会を設けて、関係者間で協定の成果を検証するのが理想的です。
ただし、期限を設定せずに継続してしまうと、効果の薄い協定がそのまま維持されるリスクがあります。定期的な評価を行い、必要に応じて内容を改善すれば、実効性の高い協定運用が可能になるでしょう。
4.民間企業にも収益性があるプランを検討する
地方自治体と企業が連携する際には、企業側の収益性も考慮しましょう。
行政サービスの向上や地域支援のために協力するケースは多いものの、収益が見込めないと企業への負担が大きくなり、協定の継続が難しくなる可能性があります。
とくに包括連携協定では、収益性が低くなる傾向があります。そのため、双方の負担やコストを明確にすることが大切です。
行政側の利益のみを重視しすぎてしまうと、企業のモチベーションが低下し、長期的な協力が得られなくなります。予算・人員・時間など、どの程度負担するのかを明確にしましょう。
まちづくり・防災など、収益性のあるプランを検討すれば、地方自治体と企業それぞれが利益を分かち合えます。双方にメリットのあるプランを設計し、持続可能な協力関係を築くことが大切です。
5.定期的に情報共有する
連携協定を円滑に進めるためには、関係者間で定期的に情報共有を行うことが大切です。情報共有が不足すると、目標のズレが生じたり、問題が発生した際に迅速な対応ができなかったりする可能性があります。
効果的な情報共有の方法は、下記のとおりです。
- 定期的に会議を開催する
- 進捗状況を報告する仕組みを整える
たとえば、月1回のミーティングや、四半期ごとの報告書提出をルール化すれば、協定の実施状況を把握しやすくなります。また、関係者がオンラインで進捗を共有可能なシステムを導入するのも効果的です。
このような仕組みを整えることで、協定の効果を最大限に発揮できます。
連携協定と入札の関係
連携協定が締結されると、地方自治体と企業・団体が協力し、地域イベントの運営や施設の建設など、具体的な事業が計画・実施されます。
しかし、協定自体には「誰が実際に事業を担うのか」は決まっていないケースが多く、別途、事業者を選定する必要があります。
その際、公平性・透明性を保つために用いられるのが「入札」です。
入札とは、公募によって事業を担う企業を募り、価格や提案内容を比較したうえで最適な事業者を選ぶ方法です。具体的には、地域イベントの運営会社や、公共施設の建設会社を決める際に活用されます。
連携協定で事業方針が決まったあとに、実施者を選ぶ手段に「入札」が必要になる場合があるため、両者には密接な関係性が生まれます。
効果的な連携協定を結び、地域や事業を活性化しよう
本記事では、連携協定の特徴やメリット・デメリットについて解説しました。連携協定は、下記のように、目的に応じた種類があります。
協定の種類 | 特徴 |
個別連携協定 | 特定の分野に特化している |
包括連携協定 | 幅広い分野で長期的な協力を行う |
災害等対応連携協定 | 災害発生時の迅速な対応を目的としている |
適切な協定を結ぶことで、地方自治体のリソースを有効活用し、効果的な事業運営が可能です。
また、連携協定の締結後には、事業の実施者を決定するために入札が必要となるケースもあります。
入札アカデミー(運営:株式会社うるる)では、入札案件への参加数を増やしていきたい企業様向けの無料相談を承っております。
のべ3,000社以上のお客様に相談いただき、好評をいただいております。入札情報サービスNJSSを16年以上運営してきた経験から、入札案件への参加にあたってのアドバイスが可能です。
ご相談は無料となりますので、ぜひお問い合わせください。