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知っておきたい『自治体DXの基礎』〜第2回:国も自治体もなぜ今自治体DXなのか?(前編)〜

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自治体ビジネスの中でも非常に注目度の高い『自治体DX』について、自治体ビジネスのプロが3回に分けて解説します。

本記事を参考にして、ビジネスチャンスを掴みましょう。

知っておきたい『自治体DXの基礎』

第1回:3分でわかる「デジタル田園都市国家構想」
第2回:国も自治体もなぜ今自治体DXなのか?(前編)【本編】
第3回:国も自治体もなぜ今自治体DXなのか?(後編)

国も自治体もDXに力を入れる背景

今、自治体はDX分野に大きな予算を投じて本格的に取り組もうとしています。

民間企業、とりわけD X関連企業にとってはビジネスチャンス到来

新年度からの自治体への営業活動に向けて営業資料作成などに取り組まれているのではないでしょうか。

 

ただ、少し立ち止まって考えてみましょう。

そもそもなぜ今自治体D Xなのでしょうか。

国も自治体もどのような経緯でD Xに力を入れるようになったか、その背景について皆さんは把握していますか。

 

地方自治体に何か新しいことを提案して案件化を目指すために重要なのは「何をやるのか」よりも「なぜやるのか・何のためにやるのか」についてのロジックとストーリーを描くのが欠かせません。

 

今回は、なぜ国も自治体もDXに力を入れているのか、その背景と目的や、何に予算を投じて重点的に取り組もうとしているのか時系列で見て行きましょう。

 

「自治体DX」検討のきっかけとなった課題

そもそもなぜ今自治体DXなのか。

背景には、2018年7月31日付で開催された第32次地方制度調査会第1回専門小委員会の資料で「2040年ごろまでの自治体行政にみられる3つの課題への対応を急がなければならない」とされたことにあります。

 

3つの課題とはどのようなものなのでしょうか。簡単にご紹介します。

 

① 地方行政改革による職員数の減少

自治体職員の人数を減らす施策で2005年には304万人だった自治体職員数が2016年段階で273万人に大幅に減少しました。これは国が地方行政改革の一環で2005年に行った「集中改革プラン」によるものです。

 

② 人口減少による職員数の減少

我が国の人口減少は誰もがご存知の通り。

それに伴い職員数も減少していくことが想定されています。

 

③ 経費増大と税収の減少

自治体財政の内訳の推移を見ると、社会保障に関わる経費や老朽化した公共施設・インフラの更新に要する費用は増大傾向。一方、所得や地価が減少・下落すれば地方税収がますます減少する傾向にあります。

 

いかがでしたでしょうか。

少ない財源と人的リソースで、年々多様化・高度化していく社会課題に今のままの行政の仕事の進め方ではもう無理!という現状が、こうしたデータで明らかになったわけです。

 

さらにその後、2020年6月26日、第32次地方制度調査会から出された「2040年頃から逆算し顕在化する諸問題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」。この答申で、「地方行政のあり方を変化・リスクに適応したものへと転換する必要」が基本的な認識として示され、それを受けて「目指すべき地方行政の姿」として「地方行政のデジタル化」が明示されました。

 

これが自治体DX推進の論拠となった、そもそもの出発点です。

 

 

自治体DXで何に取り組むのか

 

さて、地方自治体がなぜD Xに取り組む必要があるのか背景や目的を紐解きました。

読んでいただいてお気づきの方もいらっしゃると思います。

DX化の対象となっているのは「地方自治体の組織そのもの」。

自治体の組織内部の制度や業務のDX化を目指しています。

 

では、具体的にどのようなことに取り組むのでしょうか。

そして業務の効率化などのDXソリューションを持つ民間企業にはどんなビジネスチャンスが期待できるのでしょうか。

2022年9月に改訂された「自治体DX推進計画」に示された6つの重点取り組み事項を見ていきましょう。

 

① 自治体の情報システムの標準化・共通化

2025年度を目標に国の策定する標準仕様に準拠したシステムに自治体の情報システムを移行する取り組みです。

 

地方自治体の情報システムは、自治体ごとに異なるさまざまな民間ベンダーが入ってシステムを運用しています。ベンダーごとに仕様が異なるため、一度契約したベンダーのシステムにかかるコストが大きくても他のベンダーに契約変更しにくいのが課題となってきました。

 

どの自治体の情報システムにも共通する標準仕様のシステムであれば、業務全体のコスト削減につながります。また、より良い技術を持つベンダーにも分け隔てなく契約の機会が開かれ、健全な競争環境を確保できるようになることもメリットです。

 

既存の民間ベンダーにとって標準化は気になるところですが、自治体との取引がない新進気鋭の民間ベンダーにとっては機会が広がることが期待できるでしょう。

 

② マイナンバーカードの普及促進

これは目標が明確になっていて、「2022年度末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していること」が掲げられています。筆者がこれを書いている日は2023年3月31日、まさに2022年度末。皆さんマイナンバーカードお持ちですか?

 

国としてはマイナンバーカードを全国民に行き渡らせ、DXを取り入れた社会基盤として活用していく考えです。総務省が行なっていたマイナポイント制度はこの普及促進の手段として記憶に新しいところですね。

 

③ 自治体行政手続きのオンライン化

こちらも2022年度末を目指して自治体の行政手続きのオンライン化が進められてきました。

まず対象となっているのが子育て、介護、被災者支援、自動車保有の4分野。こちらも紙媒体からオンライン化への変更は、多くの民間企業が提供する優れたソリューションが適用できる分野と言えるでしょう。

 

④ 自治体のA I・R P Aの利用促進

法律や条例などの決まったルールに沿って進められる自治体の定型業務は、RPAによる自動化と相性抜群

こちらも民間企業が得意な領域です。多くの民間企業が既にこの分野に参入を図っています。発注形式で圧倒的に多いのがプロポーザル。

 

「この分野は首都圏大手ベンダーの独壇場。中小企業や地元ベンダーにはチャンスはないのでは?」といったイメージを持たれる方も多いと思いますが、必ずしもそうではありません。

 

例えば2022年6月8日に秋田市から出された公募型プロポーザル案件「秋田市庁内定型業務RPA導入業務委託」は、従業員数88名の秋田市地元企業が獲得。その自治体が求める具体的な課題にしっかり寄り添って解決策を提案できれば、大企業でなくても受注の機会があることを示す好例です。

 

⑤ テレワークの推進

新型コロナウイルス感染拡大を受け、地方自治体職員の業務でもテレワークの導入が進みました。

地方自治体でテレワークを推進するためには、二つの取り組みが欠かせません。いずれも民間企業の技術やノウハウが貢献しうる領域と言えるでしょう。

 

一つはテレワークを進めるための制度設計や環境整備。地方自治体にとって在宅勤務の導入で住民サービス対応やさまざまな事業の品質低下を招くことがあってはなりません。職員の自宅などから自治体の情報系システムにアクセスでき問題なく公務に携われる環境整備が必要となります。

 

2020年11月に木更津市から公告されたプロポーザル案件「木更津市テレワーク環境導入事業」などはこうした自治体テレワーク環境整備の取り組みの一例です。

 

もう一つはテレワーク推進のための人材育成。自治体にとってテレワークは今までになかった未知の世界。テレワークの進め方を理解し、技術的な知識やテレワークに携わる職員へのサポートができる人材の育成は欠かせません。

 

この分野の民間向け発注は、職員の人材育成だけではなく地域住民や企業へのテレワーク人材育成で各自治体がプロポーザルで発注しています。

例えば岩国市では、雇用の創出という観点からも地域のテレワーク人材育成に取り組んでおり、2022年4月に「岩国市テレワーク人材育成業務」をプロポーザルで公告を出しています。

 

⑥ セキュリティ対策の徹底

国や自治体の基幹システムでの情報セキュリティの徹底は、安全保障上の問題もあり非常に重要な取り組み。セキュリティを確保しつつDX化を進められる優れた技術を持つ民間企業とのタッグが求められています。

 

 

自治体DXは「何をやるか」より「何のためにやるか・なぜやるか」

自治体DX関連のプロポーザル案件で企画提案書を作成し、受け取った側の自治体評価委員は企画提案書のどこに注目するでしょうか。それは「DXで何をやるか」は当たり前のこととして「DXを何のためにやるか・なぜやるか」という視点が盛り込まれているかという点。これはプロポーザルに限らず、通常の自治体営業でも相手から常に問われる点です。

 

私たち企業は、ただ単に「DXが自治体で流行っているから提案して売り込もう」という発想だけでは自治体からパートナーとして信頼されません。

 

そもそも、なぜこうした政策が作られて予算が取られるようになったのか、背景にさらに潜んでいる課題をしっかりと捉え、合目的的な営業提案活動やプロポーザルの企画提案書に生かしていきたいものです。

 

知っておきたい『自治体DXの基礎』

第1回:3分でわかる「デジタル田園都市国家構想」
第2回:国も自治体もなぜ今自治体DXなのか?(前編)【本編】
第3回:国も自治体もなぜ今自治体DXなのか?(後編)

 

この記事の執筆者 


 

株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子 氏

慶應義塾大学文学部卒業後、総合コンサルティング会社入社。中央省庁、地方自治体の幅広い領域の官公庁業務の営業活動から受注後のプロジェクトマネジメントに携わる。 2013年2月、 (株)LGブレイクスルー創業。人脈や力学に頼らず、国や自治体からの案件の受注率を高める我が国唯一のメソッドを持ち、民間企業へのコンサルティング・研修事業を展開。著書に『地方自治体に営業に行こう!!』『民間企業が自治体から仕事を受注する方法』がある。

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