官公庁入札について「手続きが複雑そう」「経験がないと難しいのでは」といったイメージから、参入を迷っている企業の方も多いのではないでしょうか。しかし、入札の流れは各発注機関によって多少の差はあるものの、基本的な仕組みは共通しています。一度流れを理解すれば、どの発注機関の案件にもスムーズに対応できるでしょう。
本記事では、入札の基本的な仕組みや参加までの流れを、わかりやすく解説していきます。
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入札とは?
「入札」とは、売買や請負契約において、複数の事業者が価格や条件を提示し、もっとも有利な提案を行った者と契約を結ぶ仕組みのことです。
国・地方公共団体などの官公庁が、物品を購入したり工事を行う際に、民間企業に協力を求めて事業を委託する際に実施するものが、「官公庁入札」です。
公共事業や物品調達など幅広い分野で用いられており、公平性と透明性を確保するために原則として入札が義務づけられています。
「入札」の方式には、誰でも参加できる「一般競争入札」や、官公庁があらかじめ参加者を選ぶ「指名競争入札」など、いくつかの種類があります。
以下の記事では、公共工事における入札について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:公共工事の入札とは?種類や専門用語、参加するための資格を徹底解説
入札の目的
入札の目的は、公的契約を公正かつ透明に行い、税金を適正に使うことです。国・地方公共団体などの官公庁の事業は国民の税金を財源としているため、特定の企業を優遇するような契約は認められません。
入札という仕組みを設けることで、すべての事業者に平等な参加機会を与えて、競争によって合理的な条件を提示した企業を選定する仕組みが整えられています。
また、複数の企業が競うことで、適正な価格の形成とコスト削減が可能になります。この競争原理によって税金の無駄遣いを防ぎ、限られた予算でより質の高い成果を得られるでしょう。
入札は、公的資金の適正な運用と行政への信頼性の維持を目的とした制度です。民間との癒着や不正を防止し、国民に対して説明責任を果たすための重要な手段といえます。
入札方式の種類
国の省庁や地方公共団体といった官公庁は、入札を公示する前に「どの入札方式を採用するのか」を事前に検討・決定します。案件の性質や目的などに応じて、最適な方式を選ぶことで、公正かつ効率的な契約を実現しています。
入札方式にはいくつかの種類があり、代表的な方式は次の3つです。
- 一般競争入札
- 企画競争入札
- 指名競争入札
それぞれの特徴を見ていきましょう。
一般競争入札
官公庁入札のうち、もっとも基本的な入札方式が「一般競争入札」です。
あらかじめ入札参加資格を取得していれば、基本的にどの事業者でも参加できる点が特徴です。不特定多数の入札者が参加可能で、そのうちもっとも有利な条件を出した入札者と発注機関が契約を締結します。
この方式は公平性を担保しやすいことから、官公庁入札案件のうちもっとも多い割合を占めています。「中小企業者に関する国などの契約の方針」といった省庁ガイドラインとも親和性が高く、中小企業の参入機会を広げる仕組みとしても重要です。
以下の記事では、一般競争入札について詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事:一般競争入札とは?指名競争入札との違い・落札率を高めるコツを解説
企画競争入札(プロポーザル)
「企画競争入札」は、あらかじめ発注機関側が提示した予算額の範囲内で、複数の事業者から企画提案や技術提案を募った上で内容を審査し、落札者を決定する方式です。価格だけでなく、企画内容や業務遂行能力などを総合的に評価します。
この方式は、とくに次のような専門性の高い業務で採用されるケースが多いです。
- 建築・土木コンサルタント業務(設計・調査など)
- システム開発・ITコンサルティング
- 語学研修や人材育成関連業務
- PFI・PPP事業などのアドバイザリー業務
高い企画力や技術力が要求される分ハードルが高いですが、受注すれば大きな利益が見込めるため、企業にとって大きなビジネスチャンスです。
また、GoSTEPのようなツールを活用し、企画競争入札の準備段階で情報を入手できれば、提案の準備期間を十分に確保できます。事前調査を徹底することで、入札を優位に進められるでしょう。
指名競争入札
「指名競争入札」は、発注機関があらかじめ特定の企業を指名し、その中でもっとも有利な条件を出した入札者と契約する方式です。
従来、公共工事を中心に案件が豊富でしたが、公平性が担保しにくいといった点から、近年ではその数が減少傾向にあります。
発注機関は「工事」や「物品」といった入札案件の種類によって、「指名基準」という企業評価に基づき、事業者を指名するのが一般的な流れです。発注機関によっては、指名競争入札への参加申請書などの関係書類一式を事業者に求める場合もあります。
一度指名を受けると、次回以降の案件でも指名されやすくなるなど、発注機関との長期的な付き合いが期待できます。
以下の記事では、指名競争入札について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:指名競争入札とは?一般競争入札との違いやメリットをわかりやすく解説
入札と随意契約の違い
随意契約は、入札者同士で競争をすることなく、発注機関が任意に特定の事業者を選んで契約する例外的な方式のひとつです。災害対応といった緊急案件や少額契約など、競争が難しい場合に限って認められています。
入札との主な違いを、下表に整理しました。
| 項目 | 入札 | 随意契約 |
| 契約方法 | 複数企業が競争し、最有利な提案者を選定 | 発注機関が特定企業を任意に選定 |
| 目的 | 公平性・透明性の確保 | 緊急性・専門性・少額案件への対応 |
| 手続き | 公示・審査・開札を経て契約 | 競争を行わず直接契約を締結 |
ただし、随意契約でも公平性を担保するため、発注機関はなるべく2社以上の事業者から見積もりを取ることとされています。
随意契約について、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事:随意契約とは?一般競争入札との違いや契約までのポイントを解説!
入札に参加するメリット
官公庁が実施する入札は、民間企業にとって新たなビジネス機会を広げられる重要な制度です。ここでは、企業が入札に参加する主なメリットを解説します。
- 公共機関との取引であり、与信リスクが低い
- 新規販路・顧客を開拓できる
- 公平な競争環境でチャンスを得られる
- 企業の信頼性・ブランド力が向上する
- 営業コストを抑えられる
詳しく見ていきましょう。
公共機関との取引であり、与信リスクが低い
官公庁や自治体との契約は、資金の裏付けが明確であるため、支払い遅延や債務不履行のリスクがほとんどありません。民間取引のように与信審査を行う必要がなく、納品や業務完了後も安定した入金が期待できます。
とくに長期契約の場合は、定期的な収益を見込めるため、経営基盤の安定化にもつながるでしょう。公共事業は景気変動の影響を受けにくく、リスク分散の観点からも魅力的な取引先です。
新規販路・顧客を開拓できる
入札は、従来の民間営業では接点を持ちにくい官公庁や自治体との新たな取引のきっかけになります。受注実績を積むことで、他自治体や関連機関からの受注にもつながりやすく、長期的な販路拡大が見込めるでしょう。
また、入札情報は全国で公開されており、自社の商材やサービスに合った案件を自由に選べる点もメリットです。営業範囲の制限を超えてチャンスを広げられるため、事業拡大の足がかりとしても有効です。
公平な競争環境でチャンスを得られる
官公庁入札は、すべての参加企業が同じ条件で競う公平な制度です。企業の規模や知名度に左右されず、条件面で優れていれば中小企業でも大手企業と同じ土俵で勝負できます。
さらに、入札情報はすべて公開されているため、透明性が高く取引過程の信頼性も確保されている点も魅力です。実力が正当に評価される環境のもとで、自社の強みを最大限に活かした受注活動を行えます。
企業の信頼性・ブランド力が向上する
官公庁との取引実績は、企業の社会的信用を高める強力な証明となります。
公共機関との契約を果たした企業は、信頼できる事業者として認知されるでしょう。そのため、民間企業との取引や採用活動など、さまざまな場面でプラスに働きます。
また、実績を外部に発信することでブランドイメージが強化されて、将来的な提携や新規顧客の獲得にも効果的です。入札参加は、企業価値を高める投資のひとつといえます。
営業コストを抑えられる
一般的な営業活動では、商談や顧客開拓に多くの時間とコストがかかります。一方で、入札は情報が公開されている取引形式のため、効率的に案件へアプローチできるのが特徴です。
さらに、一度の入札で大規模な契約を得られる可能性もあり、少ないリソースで安定した売上を維持できるというメリットがあります。営業工数を減らしつつ成果を上げたい企業にとって、入札は費用対効果の高い手段です。
入札に参加するデメリット・注意点
入札は、官公庁との安定的な取引や企業の信頼向上につながる一方で、参加には手間やコスト、法的リスクといった課題もあります。
主な注意点としては、次の3つが挙げられます。
- 書類準備や手続きに手間がかかる
- 利益率が下がりやすい
- 法令遵守やコンプライアンスへの対応が必要になる
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
書類準備や手続きに手間がかかる
入札への参加には、資格申請や各種書類の提出などの事務作業が数多く発生します。とくに初参加の際は、申請書や見積書に加えて、実績証明や財務資料なども必要になるため、準備に時間を要します。
案件によっては、提案書の作成やプレゼン対応まで求められることもあり、社内リソースが不足している企業には大きな負担になるでしょう。
また、電子入札システムの操作や入札保証金の手続きなど、細かなルールにも対応しなければなりません。これらを怠ると失格になるおそれもあるため、正確かつ丁寧な事務処理体制を整えることが重要です。
利益率が下がりやすい
官公庁の入札は、価格競争が激しくなりやすい構造にあります。一般競争入札では、複数の企業が同条件で競うため、落札価格が予定価格を下回り、利益が圧迫されるケースも少なくありません。
また、過度な値下げで落札した場合、赤字や納期遅延のリスクを抱えることになります。安さばかりを追求すると「安かろう悪かろう」と評価され、次回以降の受注機会を失う可能性もあるでしょう。
品質と利益のバランスを保ち、長期的な視点で入札金額を設定する判断力が求められます。
法令遵守やコンプライアンスへの対応が必要になる
官公庁との契約では、民間取引以上に法令遵守と倫理的な行動が重視されます。入札談合や価格調整などの不正行為は、独占禁止法や官製談合防止法によって厳しく罰せられ、刑事責任や入札資格の停止処分を受けることもあります。
さらに、契約後も労務管理・情報保護・安全対策など、行政基準を満たす体制整備が必要です。これらの対応を怠ると、将来的な入札への参加制限や信頼低下につながるおそれがあります。
誠実で透明性の高い対応こそが、長期的な官公庁取引を続ける前提条件といえるでしょう。
以下の記事では、入札談合について詳しく解説していますので、参考にしてください。
関連記事:入札談合とは?禁止理由やカルテルとの違いをわかりやすく解説!
入札参加から落札までの流れ
入札の流れは、大きく5つのステップに分類できます。
- STEP1. 入札参加資格を取得する
- STEP2. 入札案件を探す
- STEP3. 仕様書を取得・説明会に参加する
- STEP4. 入札書を提出する
- STEP5. 落札・契約手続きを行う
ここからは、各ステップの詳細を解説していきます。
STEP1.必要な入札参加資格を取得する
入札に参加するためには、原則として各発注機関の求める「入札参加資格」を取得する必要があります。
発注機関の区分は、下記のとおりです。
- 国の機関:省庁と下部組織・出先機関など
- 地方公共団体:都道府県・市区町村など
- 外郭団体:独立行政法人・地方独立行政法人など
それぞれの発注機関や業務カテゴリによって、入札参加資格は異なります。
申請には書類作成等の時間が必要ですが、原則として申請料は不要です。
ただし、資格の種類によっては、審査完了まで時間を要する場合があります。
入札ビジネスに興味を持ったら、早めに資格取得の手続きを進めましょう。
入札参加資格の種類や申請方法について、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:入札参加資格とは?資格の種類から等級制度の仕組み・申請方法まで解説
STEP2.入札案件を探す
入札したい案件を見つけるためには、発注機関が公示している入札情報を探して収集する必要があります。
近年、官公庁の公示はWebサイト上に掲載されているため、実務は次のような流れで行うことになります。
- 発注機関のサイトへアクセスする
- 案件が掲載されたページを探す
- 自社が参加条件を満たしているかを確認する
ただし、官公庁の入札案件は随時更新されるため、手作業でのチェックには限界があるでしょう。最近では、入札案件を収集している「入札情報サービス」を導入し、情報収集を効率化している企業が増えています。
中でも「NJSS(入札情報速報サービス)」は、全国8,500件を超える発注機関の案件情報を収集し、提供しています。
専門スタッフが目視で情報を確認・整理しているため、探しにくい入札情報も一括で検索でき、自社に合った案件を効率的に見つけられるのが特徴です。過去の落札金額や応札企業などのデータも閲覧でき、入札未経験の企業でも戦略的な価格設定が可能になります。
さらに、入札が公告される前段階では、官公庁内で予算計画や仕様書作成が進んでいます。この準備段階の動きを早期に把握するには、「GoSTEP」のようなツールの活用が有効です。
GoSTEPは、全国の中央省庁・地方自治体の予算情報や中長期計画を網羅的に収集し、「どの自治体が、どの分野に予算を投じるのか」を可視化できる官公庁ビジネス支援ツールです。当初・補正予算や行政事業レビューなどの資料を人力で収集・整理しており、入札公示前の段階から営業先のニーズや予算傾向を把握できます。
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STEP3.仕様書を取得する・説明会に参加する
参加したい案件が見つかったら、次は仕様書の取得と説明会への参加を行いましょう。仕様書には、入札方式や要件など、見積もりを出すために必要な詳細情報が掲載されています。
発注機関によっては、仕様書の受け取りに直接出向く必要があります。近年では、Webサイトに公開されているケースも増えているため、事前に確認しておきましょう。
また、仕様書を受け取る際に、説明会への参加が必須のケースもあります。
仕様書を受け取った後、不明点があれば、書面に記載された発注機関の担当窓口に必ず問い合わせをしておくことも重要です。質問の提出期限が決められていることもありますので、入札説明書のスケジュール管理を徹底しましょう。
STEP4.案件に入札をする
仕様書を元に算出した見積書や、入札に関連する書類を作成したら、入札への準備は完了です。
実際の入札する際には、「会場での入札(持参)」「電子入札」「郵便入札」の3種類の方法があります。
近年では、新型コロナウイルス感染症拡大防止に係る郵便入札が一時的に拡大しています。
それぞれの違いは、下記のとおりです。
| 入札方法 | 概要 |
| 会場での入札(持参) | ・発注機関が指定する会場で実施される方式 ・入札書に金額・社名などを記入し、専用の入札箱に提出 ※一部の機関では事前受付を郵送で行う場合もある |
| 電子入札 | ・インターネット経由で入札を行うシステム ・電子証明書(ICカード)とICカードリーダーを用いて認証・提出 ・事前に利用登録・動作確認が必要 |
| 郵便入札 | ・入札書を作成し、書留など指定の方法で郵送する方式 ・入札書を入れる封筒の記載方法にも決まりがある場合がある |
STEP5.落札後、契約をする
官公庁入札においてもっとも一般的な「一般競争入札」の場合、最低金額で入札した事業者が落札者となります。自社が落札できた場合には、発注機関との契約を進めましょう。
なお、落札結果は原則として公開され、同時に他の参加企業(応札者)の入札金額も発表されます。
これらの情報は発注機関のWebサイト上でも閲覧可能です。
また、官公庁では、過去に公示された案件と同様の案件が定期的に公示されるケースも多く、過去の入札結果を分析することで次回の戦略に活かせる点もポイントです。入札結果の情報を蓄積しておくことで、次の入札の際に、落札の確度をあげられるでしょう。
まとめ:入札の仕組みを理解し、ビジネスチャンスを広げよう
入札制度の仕組みや代表的な入札方式を理解すれば、官公庁取引のチャンスは誰にでも開かれています。
事前の準備をしっかり整えて情報収集することで、自社にあった入札案件にチャレンジできます。
とくに、一般競争入札は経験が少ない企業でも参加しやすく、はじめての企業におすすめの方式です。実際に入札へ挑戦したい方は、「入札アカデミー(運営:株式会社うるる)」の無料相談を活用してみてください。
これまでに3,000社以上の企業を支援してきたプロの入札アドバイザーが、業種・状況にあわせてサポートいたします。入札に関する疑問や不安を解消し、確実に行動へ移すきっかけとして、無料相談を利用してみましょう。
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