デジタルマーケットプレイス(以下、DMP)という言葉を聞いたことはありますか?
DMPは、自治体などの行政機関がクラウドソフトウェア(SaaS)を効率的に調達できるカタログサイトです。この記事では、2023年11月に公開されたDMP α版の概要と機能についてご紹介します。なお、正式版は2024年10月末にリリースされる予定であり、α版での機能に加え、さらに多くの利便性が期待されています。
これまでシステム調達をするためには、行政機関が作成した調達の仕様に基づいて、提案内容と価格の両方に基づく入札を行う必要がありました。これはいわゆる「総合評価方式」の調達ですが、行政機関にとっても事業者にとっても、大きな事務負担が問題となっていました。
DMPは、このような課題を解決するために設計された新しい調達手法です。
今回は、DMPが誕生した背景やその概要、そして現状の機能について解説します。
DMPのはじまりと概要
DMPはもともと、2014年にイギリスで始まった取り組みです。
当時のイギリスでもIT予算の肥大化が問題視されており、複雑な入札手続きによる参入障壁の高さから、18社が8割の調達を占めている状況でした(2009年時点)。
DMP導入後は、登録されているベンダーの9割が中小・スタートアップとなり、2021年時点では、金額ベースでも約4割をこうした企業が占めています。
こうしたイギリスの事例を参考に構築されている日本のDMP。
そもそもDMPについて、デジタル庁の資料では「デジタル庁とあらかじめ基本契約を締結した事業者が、 デジタルサービスを登録するカタログサイトを設け、そのカタログサイトより各行政機関が最適なサービスを選択し、個別契約を行う調達手法」と定義しています。
(参考:デジタル庁資料「デジタルマーケットプレイスについて」 P2より)
実際DMPを使えば、自治体などの行政機関の担当者が様々なサービスについて情報収集することや、概ねの費用を把握すること、そして最終的なサービスの選定や契約までをスムーズに行うことができます。
入札業務に携わったことのある人であれば、これらにより削減できるペーパーワークや下調べの事務負担の大きさが想像つくのではないかと思います。
行政機関はDMPカタログサイトをどのように使うのか
DMPは、2023年11月にα版が公開されました。
現在(2024年8月時点)ではα版のため、機能は限定されていますが、
- 企画段階で、ソフトウェア・サービスの調査のために利用すること
- 予算要求段階で、ソフトウェア・サービスの要求内容を検討すること
- 調達段階で、ソフトウェア・サービスの検索をすること
などができます。
2024年10月末以降に正式版リリースが予定されており、実際の調達で利用できる環境が整います。
(参考:デジタル庁資料「DMP(α版) 行政向けご利用ガイド」P2より)
また、日本のDMPは全てのシステム調達に対応するわけではありません。
まずは難易度が比較的低い、クラウドソフトウェア(いわゆるSaaS)やその導入支援を対象にしています。
(参考:デジタル庁資料「デジタルマーケットプレイスについて」 P5より)
事業者がDMPへ登録する際の手順や操作方法につきましては、以下のサイトにまとまっているのでぜひ参照ください。
DMP デジタルマーケットプレイス α版:事業者向けご利用ガイド
まとめ
今回は、デジタルマーケットプレイス(DMP)の概要について見てきました。
DMPは、もちろん自治体などの行政機関や事業者の担当者の業務効率化にも繋がりますが、それだけではありません。これまで入札案件に絡む機会のなかった、中小企業やスタートアップにとってはなおさら、大きなビジネスチャンスにもなります。
いずれにしても、ソフトウェアベンダー企業にとっては、DMPに登録しないメリットはありません。今回の記事や今後のデジタル庁の発信なども確認しながら、ぜひ正式版DMPカタログサイトへの登録をご検討下さい。