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このところ、企業における新規顧客開拓の手段の1つとして、官公庁入札に注目が集まっています。
一方で、実際に官公庁入札を始めようとした場合には、その入札方式の種類の多さから、「どの案件に入札すべきか判断できない」といった課題が生じるケースが少なくありません。
そこで本記事では、官公庁入札における主な入札方式と、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
官公庁入札における入札方式とは
官公庁入札における”契約形式”は、大きく「一般競争契約」「指名競争契約」「随意契約」の3つに分類することができます。
「一般競争契約」とは、不特定多数の入札者のうち、発注機関に一番有利な条件を出した入札者と契約する方式を指します。
これに対して「指名競争契約」は、発注機関がその案件に「適当である」と認めた特定多数の入札者の中から、発注機関に一番有利な条件を出した入札者と契約する方式です。
「随意契約」では、前述した2つの方式のように入札者同士で競争をすることはなく、発注機関が任意に特定の事業者を選んで契約します。
3つに分類された契約形式には、それぞれ複数の入札方式・選定方式があります。
ここからは、それぞれの入札方式について解説していきます。
入札方式の種類
一般競争入札
一般競争入札とは
官公庁入札のうち、もっとも基本的な入札方式が「一般競争入札」です。前述した通り、不特定多数の入札者が参加可能で、そのうち最も有利な条件を出した入札者と発注機関が契約することになります。
この方式は公平性を担保しやすいことから、「中小企業者に関する国などの契約の方針」といった省庁のガイドラインとも親和性が高いとして、2022年現在、官公庁入札案件のうち最も多い割合を占めています。
「一般競争入札」には「最低価格落札方式」と「総合評価落札方式」の2種類があり、前者は価格によって契約の相手方を決定する方式、後者は価格以外に競争参加者の能力を審査・評価し、その結果をあわせて契約の相手方を決定する方式となっています。
一般競争入札のメリット
・条件面の競争力があれば、企業の規模や入札経験にかかわらず落札のチャンスがある
一般競争入札のデメリット
・落札のために価格を必要以上に下げることで、利益率が悪化してしまうケースもある
一般競争入札は、こんな企業におすすめ
・入札に参入したばかりで、これから実績を積み重ねたいと考えている企業
・入札する案件について、価格競争力のある(安価で対応できる)企業
指名競争入札
指名競争入札とは
発注機関が特定の企業を「指名」し、その中から発注機関に一番有利な条件を出した入札者と契約する方式です。従来、公共工事等において案件が豊富でしたが、公平性が担保しにくいといった点から、近年ではその数が減少しています。
発注機関は「工事」や「物品」といった入札案件の種類によって、「指名基準」という企業評価に基づき、事業者を指名します。その際、発注機関によっては、指名競争入札への参加申請書などの関係書類一式を事業者に求める場合もあります。
なお、「指名競争入札」の案件の中には定期的に公示されるものも多く、一度「指名」を得ることができれば、次回以降の「指名」の可能性も高まるなど、発注機関との長期的な付き合いが期待できます。
「指名競争入札」も「一般競争入札」と同様、「最低価格落札方式」と「総合評価落札方式」の2種類があります。
指名競争入札のメリット
・入札に参加できる事業者が「指名」によって限定されるため、「一般競争入札」などと比較して落札につながる確率が高い
指名競争入札のデメリット
・発注機関からの「指名」がなければ参加できない
希望制指名競争入札
希望制指名競争入札とは
「希望制」という名称がついているとおり、受注を「希望」する事業者の中から、発注機関が入札の参加者を選定して競争入札を実施する方式です。そのため「指名競争入札」と比べると、参入の門戸は開かれていると言えます。
発注機関によっては「公募型指名競争入札」という名称を採用している場合もあるため、注意が必要です。
この方式では、事業者は入札前に技術資料などの提出を求められ、発注機関はその資料を基に事業者の技術力審査を行います。
希望制指名競争入札のメリット
・希望すれば入札指名を受けられる可能性があるという点で、「指名競争入札」と比較して、門戸が開かれている
希望制指名競争入札のデメリット
・技術力審査の結果、発注機関からの「指名」がなければ参加できない
指名競争入札は、こんな企業におすすめ
・技術力の高さや実績の豊富さに自信のある企業
随意契約
随意契約とは
入札者同士で競争をすることなく、発注機関が任意に特定の事業者を選んで契約する、官公庁入札の中でも例外的な方式の1つです。
過去に官公庁入札において落札した実績のある企業が選定対象となる傾向がある一方で、公平性を担保するため、随意契約を行う場合であっても、発注機関はなるべく2社以上の事業者から見積もりを取ることとされています。
随意契約のメリット
・随意契約として発注機関と契約が結ばれた場合、確実に落札となる
随意契約のデメリット
・入札への参入経験に乏しい事業者の場合、随意契約の企業として選定されることは難しい
随意契約は、こんな企業におすすめ
・他社にはない技術や製品をもっている企業
なお、随意契約の契約形式の中には、競争性のある入札形式もあります。
企画競争入札(プロポーザル方式・コンペ方式)
企画競争入札(プロポーザル方式・コンペ方式)
不特定多数の企業の中から、定められたテーマの企画書などの提出を求め、最も適した提案をした企業を契約の相手とする方式です。発注機関によっては「プロポーザル方式」「コンペ方式」という名称で公示されるケースもあります(プロポーザルとは「提案」の意、コンペは「コンペティション」の略称)。
「企画競争入札」は主に、建築コンサルタント業務(公共工事、建築物設計、調査など)、システムに係るコンサルティング業務、語学研修業務、PFI事業に関するアドバイザリー業務などの案件で見られます。
企画競争入札(プロポーザル方式・コンペ方式)のメリット
・企画内容が評価の対象となるため、価格による競争が行われる方式と比較して、利益率が高まる傾向にある
企画競争入札(プロポーザル方式・コンペ方式)のデメリット
・提案書などを用意するために時間を要する
企画競争入札(プロポーザル方式・コンペ方式)は、こんな企業におすすめ
・公示されている案件に対して、企画力に自信のある企業
見積合わせ(オープンカウンター)
「見積合わせ(オープンカウンター)」は、事前に案件の見積もり条件を一定期間公示し、提出された見積もりの中から最も有利(安価)な条件を出した入札者と発注機関が契約する入札方式です。
前述した「一般競争入札」においては、入札前に案件についての説明会が開催されることが通常ですが、「見積合わせ(オープンカウンター)」においては、そうした説明会は開催されません。
そのため、案件公示日から応札日までの期間が比較的短く、官公庁入札の中でも予定予算額が低い傾向にある「物品購入」や「印刷物の発注」といった案件で主に採用されています。
見積合わせ(オープンカウンター)のメリット
・案件公示日から応札日まで期間が比較的短いことから、多くの案件をこなすことができる
見積合わせ(オープンカウンター)のデメリット
・発注する自治体によっては、その自治体内に「本店または営業所があること」が条件となるなど、入札に制約があるケースもある
見積合わせ(オープンカウンター)は、こんな企業におすすめ
・入札に参入したばかりで、かつ、多くの案件をこなしたいと考えている企業
・条件による制約を受けにくい、全国に営業所を構えている企業
公募(公募型競争入札)
「公募(公募型競争入札)」は、希望者のうち一定の条件を満たす入札者を選定し、その中から最も有利(安価)な条件を出した入札者と発注機関が契約する入札方式です。入札を希望する全ての事業者が参加できるわけではないという点で、「一般競争入札」や「見積合わせ(オープンカウンター)」とは異なります。
条件として求められるのは技術力や実績などで、特に建設業の案件が多いことが特徴と言えます。
なお、「公募(公募型競争入札)」に参加するためには「参加表明書」の提出が必要で、入札を許可された事業者には「指名通知書」が届く仕組みとなっています。
公募(公募型競争入札)のメリット
・指名通知書が得られた場合には、すでに入札者が絞り込まれた状態での入札となるため、落札につながる確率が高い
公募(公募型競争入札)のデメリット
・発注機関の選定基準に達していない場合、参加自体できなくなる
公募(公募型競争入札)は、こんな企業におすすめ
・技術力に自信のある建設業界の企業
・官公庁入札における実績をさらに積み上げたいと考えている企業
自社の強みに合わせた効率的な案件探しを
このように、官公庁入札における契約方式は主に「一般競争契約」「指名競争契約」「随意契約」の3種類に分類され、それぞれの入札方式にメリット・デメリットがあります。
こうしたメリット・デメリットを踏まえると、入札市場に参入したばかりの企業の場合、自社の強みによって次のように案件を選定してみると良いでしょう。
・価格競争力に自信のある企業 → 「一般競争入札」「見積合わせ(オープンカウンター)」
・企画力に自信のある企業 → 「企画競争入札(プロポーザル方式・コンペ方式) 」
その上で、長期的に入札市場に参加することを検討している場合には、指名競争入札や随意契約などの選定基準に達する実績や資格などを増やしていきましょう。
入札案件は数多く公示されますので、その中で1つ1つ対応できるかを確認するのは時間がかかります。対応できる入札方式に絞って確認するだけでも業務効率がアップするため、自社の強みを踏まえた案件探しを心がけましょう。
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