ご好評をいただいております自治体ビジネスのプロが教えるシリーズ、
今回は「プロポーザル成功の秘訣10選」と題して、全10回に分けて解説します。
プロポーザル成功の秘訣10選【全10回】
第1回:良い提案ではなく点数が高い提案を目指す |
本記事を参考にしながら、官公庁から高く評価されるプロポーザルのポイントを押さえ、しっかりと自治体ビジネスに参入していきましょう。
ESG投資の潮流を受けて
近年、自治体プロポーザルには数多くのスタートアップベンチャーがチャレンジするようになりました。彼らスタートアップが自治体ビジネスに挑戦する追い風ともなっているのが、ESG投資の世界的な潮流。
「ESG」とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。
従来は、投資家がスタートアップベンチャーなどに投資する際、投資の判断材料として主にキャッシュフローや利益率などの財務情報が使われてきました。こうした中、2006年に国連が機関投資家に対し、ESGへの配慮を投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI)を提唱したことをきっかけとして、以降世界中の投資家の間でこの考え方が広まってきました。
地球環境問題を含めたSDGsなどの社会課題を優れた技術やソリューションを持って解決に貢献しようという志を持ったスタートアップ。彼らが地方自治体のパートナーになるのは、地域社会の持続可能な発展にとって非常に頼もしい動きです。
ところが、彼らスタートアップは自治体ビジネスの経験が浅いケースがほとんど。
プロポーザルの企画提案書の書き方にはとりわけ苦戦している模様です。
スタートアップに限らず、民間ビジネスで一定の成功を収めている製品やサービスを提げてプロポーザルに挑戦する会社の企画提案書の書きぶりには、次のような共通点が見られます。
「自社の製品やサービスを開発した背景にはこんなに熱い思いがあります」
「自社の製品やサービスが他社と比較してどれだけ優れているのか見てください」 「自社の製品やサービスは民間ビジネス市場でこんなに数多くの有名企業からの導入実績があります」 |
さて、上記の書きぶりに共通する点、お分かりでしょうか。
そう、一様に「自社の製品やサービス」が主役となっていますね。
実は、この書きぶりこそがプロポーザルでなかなか結果が出ない原因そのものなのです。
根本的に異なる書き方の違い
民間ビジネスにおいては、いかに他社と比較して価値があるかを企画提案書で訴求するのがセオリー。上記で例示したスタートアップの世界などは、VCなど投資家に、投資してもらう価値がある、つまり成長性が高く投資を回収できるという判断をしてもらう必要があるため「これでもか」とばかりにデザインセンスの高いフルカラーの企画提案書を使い、投資家へのピッチの魅力を高めています。
こうした投資家向けの企画提案書の書きぶりを、そのまま自治体プロポーザルに持ってきてしまうとどうでしょう。
そもそも自治体プロポーザルでの企画提案書では、投資家が重視する「その会社の将来性・ビジネスモデルの成長性」は評価の対象とはなっていません。
「その製品やサービスがその自治体の提示した課題解決に貢献してくれるものか」
「それをデリバリーする会社がパートナーとしてふさわしいか」
これを評価するのが自治体プロポーザルです。
この通り企画提案書で提案を受ける相手が何を重視するかという前提が民間と全く異なるわけですから、同じ書きぶりだと選ばれないのは当然のことと言えるでしょう。
自治体向けプロポーザル企画提案書の書き方のコツ
では、こうした「民間ビジネスでの企画提案書との違い」を念頭に置いた上で、どこに注意してプロポーザルの企画提案書を書けば良いのでしょうか。
もちろんプロポーザルの案件ごとに求められる記載事項は異なりますが、どのプロポーザルにも共通して当てはまる「書きぶりの法則」で代表的なものをご紹介しましょう。
① 業務実施方針をしっかり書く
業務実施方針は、自治体の評価委員が最も重視するところ。
そもそもプロポーザルとは、提案そのものを評価するのではなく「提案者」を評価します。
つまり、組むべき相手方として、きちんと業務実施方針を理解し、自治体が目指すのと同じ方向性で仕事をしてもらえるのかどうかが最も問われる部分です。
そして、よくある失敗例が「自社のビジョン・ミッション・事業方針」を書いてしまうパターン。
評価する側の自治体にとっての関心事はその会社の事業実施方針ではなく、自治体が掲げた業務実施方針に沿ってどのような方針で取り組んでくれるのか?といった部分。
プロポーザル案件の事業の背景にどのような自治体独自の個別事情や課題があって、何をしようとしているのか、その自治体がウェブサイトで公開している計画や戦略の内容をよく精読して、背景と目的を見出して企画提案書に反映させましょう。
② 大見出し・小見出しの文言は自治体が提示した文書の文言をそのまま使って書く
自治体の評価委員の関心事は「こちらが求めた評価項目に提案の中でどう答えてくれるのか」。企画提案書のどの部分が、評価項目のどのような要求を満たしているのか、確認しながら企画提案書に目を通します。
ということは、評価委員がどこに何が書いてあるか探す際に迷子にならないようにしてあげる必要があります。
その際に効果的な書き方は、「自治体が文書の中で使った文言と整合させる」こと。
具体的には仕様書の見出しや評価項目に使われている文言を「表記されている通りにそのまま使う」のが効果的です。
自治体の文書に使われている文言や表現はとかく固くてとっつきにくいもの。これじゃ訴求力不足かな?とかっこよく表現し直す必要はありません。むしろ変えてしまうと、評価委員が評価すべ企画提案書の記載部分を探し当てられず迷子になってしまい、点数がつけられなくなってしまいます。
③ 図などのグラフィックには必ず説明文を書く
民間ビジネスでの企画提案書は、「なるべく文字を少なく、見ただけで分かるように」がセオリー。
スキーム図や表などビジュアル的にわかりやすいグラフィックを多用し、説明はキーワードのみで長々文章を書かないようにするのが定石とされています。
ところが、自治体プロポーザルの企画提案書でこれをやってしまうのは全く逆効果。
プロポーザルの評価委員は、提案内容の知識についてはほぼ素人と考えましょう。
なぜならば評価委員メンバーは管理職員が中心。彼らは普段、現場実務には携わっていません。さらに所管課職員の上司である課長はメンバーに入っているものの、他の課の課長の人数の方が多いのが実態。そうした「ほぼ素人」が評価するわけですから、グラフィックだけでは何を意味するのか理解してもらえず、高い点数をつけてもらうことができません。
よって、グラフィックなどの図を入れるのであれば、読むだけで目的や内容、効果などが読み上げるだけで全てわかる文章を添えるのがプロポーザルの定石です。
図には冗長にならない程度のボリュームで、わからない人でも読めば理解できる文章を必ず記載しましょう。
④ 会社概要・経営者紹介・自社P Rを企画提案書の最初に書かない
これもよくあることなのですが、最初の部分に長々と自社の会社概要や経営者の創業の思いを書き、自社のPR目的で今まで取引した大企業のロゴマークをずらりと並べるなどの企画提案書をよく見かけます。
これもプロポーザルで高得点を獲得するためにやってはいけない悪い例。
評価項目の一番最初に「自社の業務内容」などが規定されている場合は別ですが、「自治体が知りたいこと」を無視し、その前に「自社が伝えたいこと」ばかり訴求する書き方はそもそもマナー違反。自社の売り込みしか考えていない失礼な会社と受け止められても仕方がありません。
プロポーザルの企画提案書では、まず自治体から求められていることに対して的確に提案すること。
それを励行した上で、経営者紹介や自社PRを入れることが他社に対して優位に働くと判断するのであれば、企画提案書の一番最後、あるいは参考資料として添えましょう。
同じ提案内容であっても、書きぶりの技一つで結果が違ってくるのが自治体プロポーザル。
民間企業や投資家への企画提案書と自治体プロポーザルの企画提案書の違いを具体的に理解し、「書きぶりの法則」を参考にして自治体プロポーザルに積極的にチャレンジしていきましょう。
プロポーザル成功の秘訣10選【全10回】
第1回:良い提案ではなく点数が高い提案を目指す |
この記事の執筆者
株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子 氏 慶應義塾大学文学部卒業後、総合コンサルティング会社入社。中央省庁、地方自治体の幅広い領域の官公庁業務の営業活動から受注後のプロジェクトマネジメントに携わる。 2013年2月、 (株)LGブレイクスルー創業。人脈や力学に頼らず、国や自治体からの案件の受注率を高める我が国唯一のメソッドを持ち、民間企業へのコンサルティング・研修事業を展開。著書に『地方自治体に営業に行こう!!』『民間企業が自治体から仕事を受注する方法』がある。 |
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