ご好評をいただいております自治体ビジネスのプロが教えるシリーズ、
今回は「プロポーザル成功の秘訣10選」と題して、全10回に分けて解説します。
プロポーザル成功の秘訣10選【全10回】
第1回:良い提案ではなく点数が高い提案を目指す |
本記事を参考にしながら、官公庁から高く評価されるプロポーザルのポイントを押さえ、しっかりと自治体ビジネスに参入していきましょう。
なぜ自治体は業務実績を問うのか
経験が少ない企業が、プロポーザルの企画提案書を書くときに手が止まるのが「業務実績」の部分。実績が1〜2件しかない企業にとってはそのページだけなんとも寂しい内容になってしまいがちです。
だから、実績がないけれど内容勝負!とばかりに、自社の技術やサービスを懸命にあれこれかき集めて図も作成し、懸命にページを割いて優位点を盛り込みます。1%でも可能性を上げるためにアピールできそうな点はとにかく書き込みます。
その結果、不採用通知。心が折れてしまいます。
こんなに苦労して面倒な文書を読み込み時間を割いて、民間営業も忙しい中帰社してから深夜まで企画提案書を作成して、それで負けてしまう。
自治体分野は自社には無理、と諦めてしまうことも。
ここで少し立ち止まって考えてみましょう。
そもそもなぜ自治体は、プロポーザルの評価項目に「業務実績」を入れているのでしょうか。
もし、実績があるところだけにしか発注しないことを意図して項目に入れているのであれば、実績がない新しい企業は永遠に地方自治体の仕事に入れないことになってしまいます。
これはフェアなプロセスで競争原理を働かせて適切な企業を選ぶことを目的とした入札という手続きの趣旨に反していますよね。
理由は、「自治体はリスクを嫌う組織」だから。
地域住民の住民税、地元企業の法人税などで賄われている自治体ビジネスの財源。
こうしたステークホルダーから預かっている貴重な財源が、選んだ企業の仕事ぶりが杜撰だったり品質が低かったりするとまさしく税の無駄遣い。
「業務発注に伴うリスク」これこそが自治体が最も懸念することの一つです。
こうした自治体にとって実績のある企業がどう受け止められるのでしょう。
別の自治体で「一つの仕事を受注して失敗や問題なくやり遂げた、発注リスクの低い企業」であることを意味しています。
業務実績が1件でもあるということは、自治体にとっては「安全・安心のフルパッケージ」そのものなのです。
業務実績が少ない会社の対策は「業務実施体制」で
こうした自治体の「リスクを嫌う」という特性を踏まえ、自治体の受注実績が少ない企業はどのように点数を伸ばせば良いのでしょうか。
試す価値がある対策が一つあります。
それは「業務実施体制」の書き方を工夫すること。
どのプロポーザルでも、必ず業務実施体制は企画提案書あるいは事前に提出する様式などで問われる項目ですね。
業務実施体制がプロポーザルの評価項目で問われる背景も、「業務実績」を問うているのと意味は同じ。発注リスクがあるかどうかを見極めるための項目です。
業務実施体制が曖昧だったり、体制の組み方が手薄で脆弱だったりすると、どうでしょうか。
それこそ発注者側として、発注した業務をきちんと工程通りに進められるか不安でしかありません。「貴重な財源を確保して依頼した仕事を適切に実行してくれないかもしれない」と受け止められ、高い点数をつけてもらえないでしょう。
ちなみに、業務実施体制で点数が伸びない書き方の具体例をいくつか以下に示します。
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これらに一つでも該当すると、業務実績で得点できない状況の足をさらに引っ張ってしまいます。
逆にいうと、「当社は発注リスクが少ないしっかりした体制で本業務に臨みますよ」という点を訴求できれば業務実施体制で点数を伸ばすことができ、業務実績の点数の少なさを補うことが可能となります。
「業務実施体制」の点数を伸ばすためには
ここで、業務実施体制の点数を伸ばすための基本ポイントを3点ご紹介しましょう。
1. 業務実施体制図を明記
責任者や担当者を人事組織でよく見られるツリー図で構成した業務実施体制図を明記しましょう。
体制図の登場人物は、企画提案書で記載した業務内容の担当者を記載して不整合がないようにしましょう。
プロポーザルによっては業務実施体制の様式が指定されることもありますが、その際にはあらかじめ自治体に質問の上、問題なければ別紙という形で体制図を添付することがおすすめです。
2. 体制図の登場人物の役割・責任・権限を明記する
業務実施体制図に明記した登場人物が企画提案の中でどのような役割を持ち、どこまでの責任と権限を持っているのかを記載しましょう。
一覧表で整理して書くと評価委員にとってわかりやすくて親切です。
3. 業務実施上のリスクマネジメントを明記する
どんな事業でも大なり小なり事業推進上のリスクは存在するもの。そうした潜在するリスクを明確にした上で「本事業に潜在するリスクは〇〇があります。それに対して当社はリスクの顕在化を未然防止するための対応として〇〇を実施します。」と、リスクマネジメントに関する考え方を記載します。
リスクを嫌う自治体に対し、あえて「リスクがあります」と伝えて大丈夫?と感じるかもしれませんが、全く逆。自治体もゼロリスクはあり得ないことくらい承知しています。だからこそリスクに対して真摯に向き合う姿勢と具体的かつ実現可能な対応を示すことで、評価委員に「安心して発注できる会社だな」と認識してもらうことができます。
自治体の組織体質を理解しよう
毎年度、自治体ビジネスで案件を数十億円規模で受注している常連企業であっても、必ず初めての1件受注があり、そこから一歩一歩前進して現在があります。
経験が浅かったり、実績が少なかったりすることで諦めず、地方自治体という組織が何を求めているか、何を嫌うのかをよく知り、企画提案書にしっかり言語化して訴求するようにしましょう。
プロポーザル成功の秘訣10選【全10回】
第1回:良い提案ではなく点数が高い提案を目指す |
この記事の執筆者
株式会社LGブレイクスルー 代表取締役 古田 智子 氏 慶應義塾大学文学部卒業後、総合コンサルティング会社入社。中央省庁、地方自治体の幅広い領域の官公庁業務の営業活動から受注後のプロジェクトマネジメントに携わる。 2013年2月、 (株)LGブレイクスルー創業。人脈や力学に頼らず、国や自治体からの案件の受注率を高める我が国唯一のメソッドを持ち、民間企業へのコンサルティング・研修事業を展開。著書に『地方自治体に営業に行こう!!』『民間企業が自治体から仕事を受注する方法』がある。 |
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